カテゴリー「農場通信」の記事

2019年10月 5日 (土)

施肥方法、試行錯誤    令和元年5月23日

 

野菜セットには、野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、数か月前の過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。

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施肥方法、試行錯誤    令和元年5月23日

日中は汗ばむほどの陽気です。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  春から育ててきた夏野菜の苗を、次々に畑に植えています。同時に苗が根を張って健全に畑で生育してゆけるように、肥料を施しています。肥料を施せば施すほど作物が元気に育つのであれば迷わずに肥料をどんどん施してゆけばよいのですが、作物が肥料を吸いすぎて肥満体になると味質が落ちたり病虫害を受けやすくなったりするので、加減する必要があります。栄養を摂りすぎると成人病などの病気にかかりやすくなる人間の体と同じです。

  作物が肥料を欲しがっているのか、いないのか。欲しがっているならどれくらいの量を必要としているのか。普段から作物を観察しながら決めますが、農家の観察力が試されます。

  カボチャは肥料が少ないやせた土でも生育してゆけて、むしろ、肥えた土でカボチャを育てるとツルばかりが元気に伸びてゆき、肝心の実がなりにくくなると言われています。だから以前に、やせている畑に肥料をいっさい与えずにカボチャの苗を植えて育ててみましたが、ツルが全く伸びてゆかず生育が停滞して、わずかな数しか実が実りませんでした。

  全く肥料がない環境ではカボチャは健全に育たないと思い、次の年からは穴を掘ってカボチャの苗を植えてゆくときに、穴の中に少しだけ肥料を施して埋め戻してみました。すると苗は早い時期から順調にツルが伸びて、実も順調に実りました。以後、「やせた土地を選んで苗を植え、少しだけ肥料を施す」が小林農場のカボチャ栽培の定石となりました。

  カボチャの事例より、肥料を地面にばら撒くよりも作物のすぐ近くに穴を掘って埋め戻したほうが肥料は効きやすくなるように感じました。地上よりも地下に肥料があったほうが、苗の根が吸収しやすいのかもしれません。ここ数年はズッキーニの成績が良くないので、今年は試しにズッキーニの苗の近くにも穴を掘って肥料を埋め戻してみました。

  例年ならばこの時期にたくさんキャベツやブロッコリーが収穫されているのですが、今年はこれらの作物の生育が遅れています。これらの作物は生育してゆくのにたくさんの肥料を必要として、散布された肥料の量や質に敏感に反応しやすいようです。今年散布した肥料の種類がもしかしたらこれらの作物に合っていなかったかもしれません。

  前年までの作物栽培の結果を参考にしながら施肥方法を試行錯誤していますが、作物栽培の結果はいろんな要因が複雑に絡み合って生じ、肥料の有無はその要因の一つにすぎません。私が肥料を与えても与えなくても、結果がそんなに変わらないこともあるでしょう。

農家が施した肥料はそのまま作物に吸収されるのではなく、最初に土中の微生物などの生き物が肥料を細かく分解して作物が肥料を吸収できるような形にします。肥料の量や与え方を考えるよりもまず先に、どのようにすれば生き物がたくさん暮らせるような生態系豊かな環境を畑に作ってゆけるかを考えることが大事で、その上で適切に施肥をします。

生態系が豊かであれば肥料を与えなくても問題なく生育してゆける作物は多いです。肥料を作って散布するのは大変なので、小林農場でも肥料を施さずに作物を育てることが多いです。肥料に頼らずに土の力のみで作物を育てられる環境を作ることを目指します。

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後記(10月5日記入)

今年は全くカボチャが収穫できませんでした。

施肥のやり方に問題があったかもしれませんので、やり方を見直してみたいと思います。

施肥方法は、前年までの成績を省みながら、毎年、試行錯誤しながら更新してゆくものだと思います。

2019年9月22日 (日)

毎日、散歩したくなる畑      令和元年5月10日

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毎日、散歩したくなる畑      令和元年5月10日

若葉が目にまぶしい今日この頃です。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  今年に入ってから、毎日、畑を散歩して作物の生育の様子をじっくりと眺めて回ることが日課となりました。それまでは、「畑仕事を怠けてのんびりと散歩なんかしていられるか」と思っていましたが、今は、「散歩を怠けると調子が悪くなる」と思うようになりました。

  畑仕事の最中は、目の前の作業で頭がいっぱいになり、じっくりと作物を眺める余裕はありません。まわりの野草のかわいらしい花も目に入らず、鳥の美しい鳴き声も耳に入りません。散歩では、作物や周りの生き物とじっくりと向き合える時間をとることができます。

  散歩には私の飼い犬も連れてゆきます。鎖に繋がれながら暮らしている犬にとって散歩は生き甲斐のようで、私が手綱を取り出して散歩の準備を始めると、大はしゃぎして私に飛びついてきて、散歩に行ける喜びを全身で表現します。畑仕事が忙しいことを理由にして、度々、犬を散歩に連れてゆくことを怠けることもあった今までの私は、薄情な飼い主でした。私の飼い猫も勝手に私達の後をついてきて、1人と2匹で畑の中を歩き回っています。

  この春の作物の生育の調子の悪さが目につき、あまり散歩を楽しめていません。特にこの時期に収穫されるはずだったサヤエンドウがほとんど枯れてしまい、収穫を見込めない状況です。玉ねぎも多くの苗が無事に冬を越せずに消えてなくなりました。

  まだ気温が低かった頃は無事に生育していたサヤエンドウは、気候が高くなるにつれて葉色が悪くなって枯れてゆく株が所々に現れ始め、日が経つにつれて右から左へと伝染してゆきました。おそらく、伝染病が発生したのでしょう。今回は市販されている種と自分で採った種を播いて育てていましたが、病気の発生源になった株は、私が自分で採った種から育てたものでした。私の種の採り方に問題があったのかもしれないと推測しています。

  作物の生育が悪かったとき、その原因を推理していくためには日々の観察が生きます。気が向いた時だけに観察するのではなく、毎日、観察することに意味があると思います

  小林農場を訪問される方々を畑にご案内する機会をいただくことがあります。「こんなに広い畑を一人で管理するなんて、大変ですね」というねぎらいのお言葉をいただきます。

確かに小林農場の畑は広いのですが、全て、私の住まいから歩いて通える距離にあります。他の大多数の農家の皆さんは、住まいと自分が管理している畑の距離が離れていて、車で通わなくてはいけません。それと比べると、自分が育てている全ての作物を毎日、散歩しながら眺めることができる私の仕事環境はとても恵まれていると思っています。

こんなに恵まれている環境で散歩を怠けてしまうと、バチが当たるかもしれません。よく「作物は人の足音を聞きながら育つ」と言われますが、私の今までの経験上でも、私があまり通わない畑では不思議と作物の生育が悪くなってゆく傾向があるような気がします。

  5月には雑草が勢いをつけて、畑は草で染められてゆきます。草だらけになると歩きづらくなりますし、特に犬が歩くのを嫌がります。草に覆われて息苦しそうにしている作物を見るのも辛いです。「毎日散歩したくなる畑」を目指して、草刈りに励みたいと思います。

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後記 けっきょく今年の夏も畑が雑草に覆われてしまい畑仕事が忙しくなり、「散歩なんてしている暇はない」と思って、散歩の習慣も途切れ途切れとなってしまいました。

今は秋になり、ようやく雑草の勢いも衰えて、また散歩の時間を作れるゆとりができそうです。とりあえず来週は草刈りに励んで、畑を美化したいと思います。

2019年9月11日 (水)

農家にも大型連休  令和1年5月3日

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農家にも「大型連休」   令和元年5月3日

緑風の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  4月末から5月最初にかけての10連休の大型連休に日本中が賑わっています。大型連休とは関係なくいつも通りに働いている職場も多くあり、農業もその一つです。

大型連休中に「八十八夜」を迎えますが、関東地方などでは八十八夜をすぎると霜が降りなくなると言われていて、寒さに弱い夏野菜の苗を安心して畑に植えてゆくことができるようになり、この頃を狙って農家はたくさんの苗を一気に畑に植えてゆきます。野菜農家にとっては大型連休の頃が最も忙しく、最も休んではいけない大事な時期でもあります。

  喜寿(77歳)を迎えたばかりの私の父と母が、私の実家の東京都からこの連休中に知人を連れて3人で、小林農場に2泊3日で訪れてきました。父も母も、私が1年中、畑仕事で忙しく暮らしているのを知っているので、「私達は空気のきれいな農場でのんびりと休みに来ただけだから、お前は私達にかまわずに畑仕事をしていなさい」と言ってくれて、私に代わって料理を作ってくれたり、皿洗いをしてくれたりしていました。知人さんもわざわざお気に入りの調味料を持ち込んで、得意の肉料理を作ってくれました。

  定期的に東京都の実家に宅急便で野菜セットを送って、父と母に野菜セットの感想を聞かせてもらっています。特に父は、「あんな酷い野菜を送っていたら誰もお前の野菜を買わなくなるぞ」と容赦のない指摘をすることもあります。そんな父が、農場の大根から私が熟成させて作った自家製のたくあんをポリポリと気に入って食べてくれたので、私もすっかり気が良くなりました。毎食、自家製たくあんが食卓に並べてみました。

  他にもポリポリと気に入って食べてくれた野菜が、エシャレットです。おそらくエシャレットという野菜を知っている人は多くないだろうと思ってあまり積極的に出荷していないのですが、エシャレットをほしがる消費者は多いとの、父の意見。今回の野菜セットには、全てのご家庭にエシャレットを入れました。私のおすすめの食べ方もお伝えしております。

  朝食には長いもをすりおろして「とろろ」にして、それぞれの小鉢に分けて配膳して、それぞれが醤油、のり、かつお節などをかけてかき混ぜて、ご飯などにかけて食べました。ネバネバとした食感が好評で、野菜セットにも積極的に入れてお届けしたいと思います。

  母からは天ぷらの料理方法を教わりました。夏に収穫時期を迎える人参の葉を畑から間引いていますが、その葉を台所まで持ってきて揚げました。みんな、今までに人参の葉を食べる機会があまりなかったので、揚げた人参の葉の香ばしい味に感激してくれました。

  普段は私が一人だけで食事をしているので、家族やその知り合いといっしょに食事をしたこの数日間は、いつもとは違う雰囲気でした。農場の畑から採った採りたての食材を料理して、食事によってみんなを楽しませることができて、農家冥利に尽きます。

  大型連休の頃に野菜農家が旅行を楽しむことは難しいですが、遠く離れて暮らしている家族が連休を利用して農家の実家に戻って畑仕事や田植えを手伝っている光景を見かけます。家族と顔を合わせながら、農家も大型連休のいつもと違った雰囲気を楽しんでいます。

2019年9月 2日 (月)

平成最後の野菜セット  平成31年4月25日

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平成最後の野菜セット    平成31年4月25日

間もなく平成の世が幕を閉じようとしております。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  皆さんにとって平成の30年間はどんな時代だったでしょうか。平成の大きな出来事といえばインターネットの登場です。私達の社会は夢のような便利な生活を実現しました。

  新たに開発された機械やコンピューターは、人に代わっていろんな仕事をこなしてくれるので、人はわざわざ自分の手足を動かさなくてもよくなりました。でも、手足を動かして手間をかけてゆくことによって人は生きている実感を得るものなのだから、手足を動かさなくてもよくなれば確かに楽ですが、生きている実感を得にくくなるかもしれません。

  昔は料理するにも洗濯するにも手間と時間がかかって大変でしたので、家族を築いたり、ご近所さんとの付き合いを大切にしたり、人々がお互いに助け合わなくては生活していけませんでした。今はガスや洗濯機のような便利な道具が開発されて一人でも生活できるようになり、わざわざ他の人と助け合う必要もなくなりました。

同時に自分も他の人から必要とされなくなり、人々は孤立しやすくなりました。不便なことがあれば人々はそれを克服するためにお互いに絆を深めてゆきますが、便利な機械やコンピューターが発達すれば助け合う機会が減り、絆を深めてゆく機会も減ります。

  「生活が便利になれば、人々は幸せになれる」と信じられて、さまざまな便利なものが開発されてきました。しかし、昔よりも今のほうが生活は便利になったのにも関わらず、「自分は不幸だ」と感じて自殺してしまう人の数は増えてゆきました。どうやら「便利」と「幸せ」は必ずしも一致はしないらしいということが分かってきました。

  スーパーの野菜売り場では、日本全国や海外から取り寄せられた野菜が並び、消費者はほしい野菜をたいてい購入できて便利です。いっぽう小林農場の野菜セットでは、小林農場の畑の中のみでその季節に収穫できる野菜しかお届けできず、皆さんにとって便利な商品とはいえません。「味の良さ」とか「安全性」とか「季節感」とか、私が「便利」よりも大切だと思っているものを、野菜セットに詰めてお届けしてまいりたいと思っています。

平成時代の農業では、新たに農業を始める新規就農者の数が増えました。この時代の流れに乗って、東京の都会に生まれ育った私も栃木県の田舎に移り住んで農家になりました。

  都会と比べて田舎の暮らしはずっと不便です。また、農業は手間がかかるわりには収入が少なく、経済効率の悪い産業です。でも、豊かな自然環境の中で生命の源である食べ物を生産してゆく生活は、生きている実感に溢れています。きっと多くの人たちが「便利」や「効率」とは違う価値観を求め始めているから、新規就農者が増えているのだと思います。

  私も自動車やパソコンなどの便利な道具のおかげで人生を楽しんでいます。社会を便利にするために働いている皆さんには感謝しています。便利な社会を実現してきたからこそ、私達は「便利なだけでは幸せになれない」という貴重な教訓を得ることができました。

  今後も人工知能が発達してますます生活は便利になってゆきますが、平成の教訓を生かして「便利」以外の価値も大切にされてゆくでしょう。さあ、新時代・令和の幕開けです。

2019年8月26日 (月)

「学び方」術    平成31年4月18日

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学び方」術   平成31年4月18日

うららかな春日和となりました。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  農場を運営してゆく上で学ばなくてはいけないことが山ほどあります。本やインターネットで多くの情報を簡単に入手できる時代になったのに、私は文章を読むのが遅く、速く文章を読めるようになりたいと思っていました。そこで去年の秋、「速読術」の講習会に参加してみました。「速読術」とは、読んで字のごとく、文章を速く読むための技術です。

  読んでいる文章の内容を簡単に理解できるくらいの速度で本を読んでいても、いつまでたってもそれ以上の速度では読めるようになりません。スポーツ選手が自分の体に負荷を与えて筋肉を鍛えてゆくように、速読術の訓練でも文章の内容が3割くらいしか理解できない速度でできるだけ速く速く読み進めて、自分の頭に負荷を与えて目と脳を鍛えます。

  まずは文章の内容がほとんど理解できなくてもよいから、速く速く読み進めて文章全体に目を通しておきます。そうすると、その文章のどの部分が必要でどの部分を読み飛ばしてよいのか目星を付けることができ、後で自分に必要な情報のみを効率的に拾えます。

  時間をかけて読んで丁寧に理解した文章も、時間が経てばすぐに忘れてしまいます。文章の内容そのものを暗記しようとするよりも、その文章から刺激を受けて自分の頭の中に浮かんできた新たな発想を覚えてゆくことのほうが大事です。一つの文章に時間をかけて熟読するよりも、短時間で飛ばし読みしながらできるだけたくさんの文章に目を通していったほうが、次々と新たな発想が自分の頭の中で生み出されやすくなります。

  以上のようなことを講習会で教わりました。講師の方が参加者に本当に伝えたかったことは「読み方」ではなくて「学び方」でした。学ぶとは新たな発想を自分の頭に生み出してゆくことであり、文章の内容をただ暗記してゆくだけでは学びとしては不十分です。

農業の専門書に書かれていることは一般論だけで、実際の畑では一般論が通じない例外が多く発生します。自分が畑で実際に直面している問題を解決するための答えは本の中には書かれていません。本に書かれている情報を参考にしつつ、作物をよく観察しながら自分の頭の中で新たな発想を生み出して自分なりの答えを見つけていくしかありません。

ネット上に情報が溢れていますが、情報を得ることに時間を費やして畑仕事の時間を削ってしまうのは愚かなこと。速読術で必要な情報のみを見つけて飛ばし読みしたいです。

講習会の最後には、それぞれの参加者が講習中に速読して読んだ本の内容を口頭で発表してゆく時間が設けられました。本の内容を自分の頭の中で整理して、それを自分の言葉にして人に伝えてゆこうとすることにより、本から得た情報は単なる知識として記憶に遺るだけではなく、自分の血や肉となり、その後の自分の人生の芯となってゆきます。

私は畑で体験したり本を読んだりして学んだことを毎週、この農場通信にまとめて皆さんにお伝えしてきましたが、そうすることにより学びがさらに深くなっていっていると感じています。農場通信という発信の場があり、それを読んでくださる方々がいるということはとても恵まれていることなのだと、改めて思います。

2019年8月19日 (月)

山の幸の季節   平成31年4月11日

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山の幸の季節    平成31411

栃木県では桜が満開の頃に雪が降りました。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  4月頃は冬野菜から春野菜へと移ってゆく「谷間」の期間であり、1年で最も出荷できる野菜が減る端境期(はざかいき)となります。現在、2月に入ってから種を播いて育てた葉物野菜や二十日大根がようやく収穫時期を迎えて、野菜セットに入れ始めています。

  2月は寒さが厳しく、そのまま畑に種を播いても発芽しないので、種を播いた畝をビニール資材で囲って地温を暖める必要があります。ビニール資材が登場したのはつい最近で、ビニール資材のなかった昔は4月頃に新鮮な野菜を収穫することはできなかったでしょう。

  では、昔のご先祖様たちは野菜の端境期にいったい何を食べて暮らしていたのでしょうか?私が読んだ本には、昔の人々はこの時期になるとよく山の中に入って、夢中で山菜を採っていたと書かれていました。畑で野菜が収穫できない今の時期に、山の中では山菜がひょっこりと地表に顔を出します。漬物などの保存食を主に食べながら寒い冬を乗り越えてきた昔の人々にとっては、新鮮な山菜は待ちに待った青物であり、貴重だったようです。

畑でもタラの芽やワラビなどの山菜を栽培することができます。現在、スーパーで販売されている山菜のほとんどは、山で自生しているものではなく、畑で栽培されたものでしょう。そこで私も、山菜の栽培方法を勉強してみました。タラの芽などは、「種根」と呼ばれる根の部分を畑に植えると、そこから芽が派生してやがて樹になり、そこから芽生えてきた新芽を収穫します。遅くとも連休の前までに種根の植え付けをすます必要があります。

野生の山菜を食べた人からは、「山に自生している野生の山菜と比べたら、栽培されている山菜の味では物足りない」という感想も聞かれます。山菜を栽培しようか、検討中ですが、もし山菜を栽培するのであれば、今すぐに種根を取り寄せて畑に植えないといけません。

この時期にはシイタケも収穫できます。シイタケはコナラなどの原木に種菌を打ち込んでシイタケ菌を繁殖させて作ります。私も原木シイタケを栽培しようと思っていましたが、8年前の福島第一原発事故によって栃木県内の山から採れる原木が放射能で汚染され、県内の原木シイタケの出荷が規制されましたので、シイタケを栽培することをやめました。

去年の秋、畑に隣接している雑木林からコナラだと思われる巨木が1本、台風によって畑の中に倒れていましたので、持ち運びやすい大きさに切断して片づけました。そのまま捨てるのももったいないので、樹の表面に穴を開けて、購入したシイタケの種菌を打ち込んで、庭の片隅に積んでみました。来年の春には原木からシイタケの傘が開くかもしれません。

栃木県内でも安全性が確認されたシイタケ栽培地では、県の承認を得ながら原木シイタケの出荷が再開され始めています。私もシイタケを出荷できればよいと思っていますが、そのためには厳しい検査や雑多な手続きが必要で、出荷のハードルはまだまだ高いです。出荷せずに自分で食べて楽しむのならば、誰にもとがめられることはありません。

畑で野菜が収穫しにくい時期だからこそ、畑のまわりの山林に目が向きます。野菜の端境期は、山菜やシイタケなどの「山の幸」の存在が輝く時期でもあります。

2019年8月12日 (月)

奥深き品種育成の世界   平成31年4月5日

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奥深き品種育成の世界   平成3145

春風駘蕩の頃、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  小林農場は今後、できるだけ店から作物の種を購入するのではなく、農場で育った作物から自分で種を採るようにしたいと考えています。何年も小林農場で自家採種しながら品種を育成して、小林農場でしか育たない品種の野菜を皆さんにお届けできればよいです。

  里芋の自家採種は簡単で、数年前から行ってきました。皆さんにお届けしている里芋が、そのまま種イモとしても利用できます。春にそれらを畑に植えれば芽が出て生育します。

  一昨年、秋に収穫された里芋を貯蔵穴に埋めて防寒しながら冬の間貯蔵していたのですが、貯蔵穴から里芋を取り出してみたら多くのイモが傷んでしまっていて、ほとんど里芋を出荷できませんでした。種イモの量も十分に確保できず、去年の春は店からも種イモを新たに購入して、自家採種できたわずかな種イモといっしょに畑に植えました。

  去年も秋に里芋を収穫し、冬に貯蔵穴に入れて貯蔵し、そして貯蔵穴から取り出してみたら前年と同様に、多くのイモが傷んでいました。でもよく見ると、傷んでいるのは私が自家採種した種イモから育てたイモのみで、店から購入した種イモから育てたイモは無事に貯蔵できていました。どうやら、私が選抜した種イモに問題があったようです。

それまで私は、傷がついて商品にはならないようなイモを種イモとして利用することが多かったです。今年は無事に貯蔵された里芋の中から最も恰幅が良くて立派な姿をしたイモを種イモとして選抜してみました。本当はこのような立派なイモを皆さんにお届けしたいのですが、出荷を我慢しました。貯蔵性があって立派なイモが親なので、その遺伝子を受け継いだ次世代の里芋も貯蔵性があって姿が立派なイモに生育しやすくなるでしょう。

ただ、人参の自家採種に取り組んできたベテランの農家の方がお話をされていましたが、形の美しいスラリとした人参ばかりを選抜して数年間種を採り続けていたら、やがて全く人参が生育しなくなってしまったらしいです。同じような形をした人参の遺伝子のみを遺そうとすると、次の世代の遺伝子が単純になりすぎて、生命力が弱くなるらしいです。美人な人参だけでなく、ずんぐりとした太々しい感じの人参などもいっしょに選抜したほうが、次の世代の人参の遺伝子は多様性に富み、生命力に溢れて元気に生育するようです。

  「自分が求めている姿をした作物の遺伝子のみをたくさん遺したい」と、「多様な遺伝子を遺して作物の生命力を高めたい」という、相反するような2つの希望を両立させていかないといけませんが、かなり熟練した知見が必要になってゆきます。どのような姿をした作物を選抜すればよいのかを的確に判断するのは、私が思っている以上に奥が深そうです。

やはり種苗会社が総力をあげて育成してきた品種のほうが、私が片手間で育成してきた品種よりも安定していて優れています。農場経営を安定して続けてゆくために、種苗会社から購入した種を主に使用したいと思います。私が自家採種した種で育てた作物と、種苗会社から購入した種で育てた作物の生育の様子を比較しながら、少しずつ自分で優秀な品種を育成してゆけるよう、知見を深めてゆきたいと思います。

2019年8月 5日 (月)

新たな作物が芽吹いている頃   平成31年3月28日

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新たな作物が芽吹いている頃   平成31328

花冷えの候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  去年の秋に収穫時期を迎えて長期間貯蔵しながら出荷してきた根菜類も、春になるにつれて食べ頃をすぎてゆき、次々と出荷が終了してゆきます。間もなく人参、大根、里芋なども出荷が終了するでしょう。いっぽう、今年に入ってから種を播いて育てている作物が収穫時期を迎えるまでまだ時間がかかります。4月は毎年、一年間で最も出荷できる野菜の種類が減る「端境期(はざかいき)」となり、ここをどう乗り切るかが課題となります。

  少しでも早くいろいろな作物を出荷できるようにするため、まだ寒さの厳しい2月の頃から暖かなビニールハウスの中でキャベツやブロッコリーやレタスの苗を育て、露地では簡単なビニール資材を利用してカブなどを防寒しながら育てています。2月に種まきした葉物野菜が新たに収穫されるのは4月の上旬より、レタスやカブが収穫されるのが4月下旬より、キャベツやブロッコリーが収穫されるのは5月下旬からとなる見込みです。

  6月の下旬頃になれば、ナスやキュウリなどの夏野菜が豊富に収穫されて、出荷できる野菜の種類が多すぎて、どれを野菜セットに入れていいのか迷うくらいになります。「今から夏野菜の話をするなんてずいぶん気が早すぎる」とお感じになる方もいるかもしれませんが、もう小林農場ではナスなどの苗を育てていて、私の頭の中では夏が始まっています。

  2月には種苗会社のカタログから良さそうな夏野菜の品種の種を選んで注文しました。品種によって味も生育具合も全く違い、品種の選択からすでに作物栽培は始まっています。  

カボチャでは、皮が白い品種「白爵」が冬の間ずっと貯蔵できて、味も好評なので、今年もこの品種をたくさん栽培する予定です。ピーマンでは、甘味があって赤や黄色に染まって色も鮮やかな品種、「パプリカ」も選択しました。去年は全くパプリカを収穫できませんでしたが、今年はもっと栽培しやすそうなパプリカの品種の種を見つけましたので、もう1度挑戦いたします。他のピーマンの品種も、大きくて苦味が和やかなものを選んでみました。

端境期の今は出荷できる野菜が少なくて野菜セットの内容が少し寂しく感じられるかもしれませんが、現在の小林農場では次々に種が播かれて、新たな作物の生命が芽吹いています。今の畑は「収穫の時期」ではなく、「芽吹きの時期」です。数か月後に訪れる「収穫の時期」の野菜セットの内容を皆さんに想像していただき期待していただけるよう、芽吹いた作物がどの段階まで生育しているのか、随時、この農場通信で実況中継してゆきたいと思います。小林農場はインターネットにブログを開設していますが、今後しばらくはマメに更新して、作物が生育してゆく様子を写真にたくさん撮って公開してゆきたいと思います。

端境期はどうしても出荷できる良質な野菜は減ります。野菜セットのすばらしいところは、農場通信を通して皆さんに現在の作物の生育状況をお伝えしてゆけることです。なぜ今の時期は出荷できる野菜が減るのか、丁寧にお伝えできます。これから農家が消費者と顔の見える信頼関係を築いてゆくには、良質な農産物を消費者に届けてゆくだけでなく、その農産物が育って収穫されてゆくまでの過程を物語にして伝えてゆく「伝え方」が大切です。

2019年7月30日 (火)

目には見えぬ相手  平成31年3月21日

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目には見えぬ相手    平成31321

春分の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  数週間前の3月11日頃の農場通信で8年前の福島第一原発事故についてのお話をさせていただきました。その後、皆さんより、原発事故による農産物への影響についてのご質問をいただくこともありましたので、改めてもう少し丁寧に現状をお伝えしたいと思います。

  原発事故によって広い土地に降り下りた有害な放射能物質はしばらく消えてなくなりませんので、今も警戒が必要です。栃木県では事故後は定期的に県産の米や野菜などを検査していますが、現在は農産物から高い放射線量は検出されず、安心して食べられる状態です。日本列島の田畑の土質では、放射能物質が農産物に移行しにくいことが分かってきました。

  いっぽう、人があまり立ち入ることのない、樹が生い茂っている山林の奥のほうには放射性物質が溜まりやすいようで、山林から採れる野生の山菜やキノコ、イノシシなどの獣肉からは今でも高い放射線量が検出されています。栃木県は、一部の例外を除いて、これらの出荷を規制しています。売り場には安全性が確認されているもののみが販売されています。

  私も山に入って野生のものを採集して販売したりはしません。ただ、堆肥の材料となる落ち葉は山林の付近でかき集めています。落ち葉が放射性物質に汚染されていないかどうか、今まで検査機関で検査をしてもらっていますが、いずれも放射線量は低く、安全性を確認しております。毎年、安全性が確認できた場所から落ち葉をかき集めるようにしています。

  放射性物質は花粉のように小さいので人の目には見えません。放射性物質に接触すると病気になりやすくなるのですが、必ずしもすぐに症状が現れるわけではなく、数年経った後に症状が現れることもあります。原発事故から数年経った後にその影響で病気になったとしても、病因は原発事故の影響なのか、それとも他の要因なのか、もはや判別できません。

  原発事故以降は、深刻な汚染を受けた地域の住人の中には、健康障害を心配して素早く福島から遠くへ避難する人もいました。いっぽう、「過剰に心配して無理をして避難したら、精神的にストレスをためてしまったりして逆に健康に良くない」と主張する人もいました。住人の間で意見が対立して共同体が分断されてしまった事例も少なくなかったようです。

もし放射性物質が、形や色があって人の目にも見えて、それに触れた人は全てすぐに病気にかかってしまうような、恐ろしいけれども分かりやすい相手ならば、住民たちも一致団結して放射能汚染に対処できたのかもしれません。目には見えぬゆえに放射性物質は人々にモヤモヤとした不安ばかりを与え、どう対処してよいのか判断しにくくしてしまいます。

現在は化学物質が次々に人工的に生み出され、自然環境に放出されています。無害な化学物質も多いですが、有害な化学物質もあると思います。それらは目には見えぬまま自然環境に溶け込んでしまっているので、知らず知らずのうちにこれらを自分の体に取り込まれることもあります。特に健康を大切にされている方々に、モヤモヤとした不安を抱かせます。

農薬も人にモヤモヤとした不安を与える化学物質だと思います。せめて小林農場の畑では農薬を使用することはやめて、少しでもモヤモヤとした不安を解消したいです。

2019年7月22日 (月)

農家が生計を成り立たせてゆくには   平成31年3月14日

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農家が生計を成り立たせてゆくには   平成31年3月14日

春の気配に心躍る季節となりました。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  確定申告の時期を迎え、小林農場の去年1年間の収支を決算いたしましたが、赤字でした。去年の今頃は貯金に余裕ができましたので、野菜を出荷するための配送車を新たに購入したりしていましたが、あの頃が嘘のように現在の農場の貯金は少なくなりました。

  所有する自動車が増えればその維持費も増えるわけで、去年はその維持費を支払うだけで数十万円のお金が消えてなくなりました。また、今まで使用してきた農機が壊れてしまい、新たに購入しなおしたりもしました。このように大きな出費が重なるとたちまち黒字から赤字に転じて貯金が減っていってしまうのが、現在の小林農場の経済力です。

  農場の経営を立て直してゆくためにはもっと収量を増やして収入を増やさなくてはいけないと考えがちですが、そうすると畑に農薬や化学肥料を多用したり、ビニールハウスや機械を導入したりするなど、自然からかけ離れた栽培方法となってゆきます。自然環境を大切にしたい小林農場は、出費を削減してゆくことに力を注いで経営を立て直したいです。

  例えば、小林農場では作物の種の購入費に1年間で数十万円を費やしていますが、手間をかければ購入しなくても栽培している作物から自分で種を採ることができます。昔の農家は自分で種を採っていましたが、現在は種苗会社から種を購入することが当たり前となり、農家が種採りの技術を忘れてゆくことが懸念されています。種を採るのは手間なので、手元にお金がたくさんあればどうしても手間を省いて種を購入したくなるでしょう。お金がないほうが種採りに取り組みやすく、その技術も継承されやすくなるかもしれません。

  近年の農業は、農薬や機械やビニールハウスなどが必要とされて、お金がかかります。でも昔は、それらがなくても農家は農業を営んでいました。知らず知らずのうちに農業はお金がかかるようになり、生計が成り立たなくなって離農する農家が増えてしまいました。昔の農業を見直して、農薬や機械などに頼らなくてもよい栽培方法を確立してゆきたいです。

  今の農家は売れる見込みのある作物のみを栽培することに専念して、それらを売って得たお金でスーパーに行って自分達が食べる食材を購入しています。昔の農家のように自分達が食べる食材を自分達の田畑で自給自足すれば、食費はかからなくなるでしょう。農業は、収入を増やすのは苦手ですが、自給自足して出費を減らすことを得意とする産業です。

  病気や怪我をしたら治療するのにお金がかかります。自然災害にあって生活基盤が破壊されれば、生活を再建するためにお金がかかります。何かが起こればたちまちお金は消えてなくなります。どんなにがんばってお金を貯めてみても「もっと貯金をしなくてはいけないのではないか」という漠然とした不安は消えてなくならないでしょう。

お金を使わずに生活してゆける力を身に付け、「そんなにお金がなくても暮らせてゆける」という自信も身に付けて不安を取り除いてゆくことが、気分を明るく保つために大事です。とりあえず私の場合は1年間の出費を200万円以内に収めれば農業を続けてゆけそうなので、このざっくりとした数字を頭に入れて農場の収支を管理してゆこうと思います。

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