カテゴリー「農場通信」の記事

2020年2月18日 (火)

令和・夏の陣    令和1年8月1日

 

野菜セットには、野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、数か月前の過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。

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令和・夏の陣    令和1年8月1日

梅雨明けの暑さはまたひとしおに感じられます。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  関東地方も8月に入る直前になってようやく気象庁より、令和初となる「梅雨明け宣言」が発表されました。これより令和初の真夏を迎えることになります。

これまでの1カ月間は関東地方では本当にずっと曇天が続き記録的な日照不足となり、「梅雨寒」でした。ナスなどの夏野菜は生育不調となり、出荷量が少なかったです。この長かった梅雨が間もなく終わることを予感したかのように、先週からナス、ピーマン、トマトがたくさん実をつけるようになり、野菜セットの内容が夏らしくなってまいりました。

  梅雨が明けた途端、梅雨寒から猛暑へと極端に変わり、「熱中症に気をつけましょう」という決まり文句をよく耳にするようになりました。私も今まで畑仕事には頭にタオルを巻いていましたが、梅雨明け後は日除けのために麦わら帽子をかぶるようにしています。飲み水もクーラーボックスに入れて畑に持って行きます。畑仕事を始める時間も早めて、まだ涼しい早朝にできるだけ仕事をして、気温の高いお昼は長めに休みをとるようにしました。

  炎天下の畑で仕事をしているとサウナに入っているようで、気持ちが良いくらいに汗が噴き出してきます。汗で濡れた下着や作業服を一日に何回も着替えて、何枚もの衣服を洗濯機に放り込んでいますが、これだけ日差しが強いと洗濯物も干せばすぐに乾きます。全くお日様が顔を出さずに洗濯物が乾かず、仕方がないので生乾きの状態の作業服を身にまとっていた梅雨の頃とは様子が違います。洗濯物の乾き具合から、季節の移ろいを感じます。

  梅雨の最中に、秋冬に収穫する人参やゴボウなどの種を畑に播きました。小林農場の畑は粘土質で、一度湿るとなかなか乾かず、この状態で土を耕すと表面がグチャグチャになります。全く畑が乾かなかった今年の梅雨は、グチャグチャの表土に無理矢理に種を播くこととなりました。ちゃんと発芽するのか心配しましたが、すごくあっさりと発芽が揃いました。晴れずに土が湿ったままでしたが、それは種が発芽するには最高の環境だったようです。

  梅雨が明けて日差しが強くなると、畑は乾きやすくなります。今後も作物の種を畑に播いてゆきますが、発芽させるのには雨が必要です。真夏は雨の日が少なく、ときどき夕立が降ります。夕立が降る時を狙って種を播く準備をしますが、夕立は突然にやってくるのでいつ降るのか予想しづらいです。梅雨の頃と違って種を播く頃合いを計るのが難しいです。

  他にも梅雨明け後の真夏に直面するだろうと予想される課題を、今のうちにおさらいしておきたいと思います。まず、8月、9月は害虫が1年で最も活発に活動する時期にあたります。また、白菜などの苗を炎天下の中で育てるのですが、苗を暑さから守るのに、毎年、苦戦しています。これらの課題を解決してゆくために、この夏は新たな方法を試してゆきたいと思います。その方法がうまくいったら、皆さんにもご報告してまいりたいと思います。

  ここ数年の真夏は自然災害級の猛暑となり、日本全国は猛暑の被災地となっております。覚悟してまいりたいと思います。私は寒さには弱いですが暑さには強く、我が家に冷房がなくても問題なく暮らしてきましたし、強烈な日差しにもだんだんと慣れてきています。

2020年2月12日 (水)

広く開かれている農場    令和1年7月25日

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広く開かれている農場    令和1年7月25日

朝夕にはヒグラシの鳴き声が聞こえてきます。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  先週、茨城県の農家の方の農場で見学会が行われて、私も参加して田畑を見学させていただきました。こちらの農場は40年間ほど日本の有機栽培を先導されてきました。有機栽培とは農薬を使用しない栽培方法のことで、小林農場での栽培方法も有機栽培と言えます。

現在はビニール資材を有効に利用した防虫・防草技術が流行しています。そんな最先端の技術を見られるのではないかと期待して見学会まで足を運んだのですが、見学会の冒頭で茨城県の農家の方は「ビニール資材は使用し終わった後は大量のゴミになって地球環境に良くないので、それらをできるだけ使用しないようにしている。」と説明されていました。

ビニール資材が張られた畑の風景には「何が何でも作物を害虫や雑草から守る」という、研ぎ澄まされた気迫が漂っています。それと比べて、今回見学させていただいた茨城県の農家の方の畑にはビニール資材の姿は少なく、その風景には「人間だけが作物を独り占めにしないで、少しくらいは虫にも食わせてやれ」みたいな大らかな雰囲気も漂っていました。

畑にビニールを張って太陽の熱にさらしておけば、高温によって土の中の害虫や雑草を殺すことができて、その後に作物を作付けすれば管理が楽になります。ただこの方法では、害虫や雑草だけでなく他の生き物にも害を及ぼして畑の生態系が崩れる危険もあります。

有機栽培では畑に多様な生き物を生息させて、豊かな生態系の中で作物を生育させてゆくように心掛けてゆき、そこには「あらゆる生き物の命を大切にする」という「思想」があります。「ビニール資材を多用している畑には思想が感じられず、農薬を使うのをやめただけで有機栽培だと言ってよいのだろうか」と、茨城の農家の方が疑問を投げかけています。

そこでビニール資材に頼らなくてもよいように、スイスイと簡単に雑草を取り除ける鎌などをご自身で発明されています。身近に安値で入手できる材料を組み合わせたもので、「これなら楽しく除草できるでしょ」と、見学会で見学者の前で実演してみせていました。

  茨城県の農家の方も野菜セットを作って消費者の家庭に配送しています。さらに消費者も畑まで足を運んで除草などを手伝い、農家と消費者がいっしょになって汗を流しながら食糧を自給してゆくようなささやかな共同体を築いています。消費者に楽しく畑仕事をしてもらいたいという想いが、便利な道具を発明してゆく動機づけとなっているようです。

  夏には秋野菜の苗作りが始まりますが、私を含め多くの農家が苗を暑さから守るのに苦戦しています。今回の見学会では、畑に直に種を播いて苗を育てるという、今まで私の頭の中では思いつかなかった育苗方法を教わったので、ぜひ試してみようと思います。

ある意味では私達、農家はみんな、お互いに消費者を奪い合う「商売敵」になる場合もありますが、茨城県の農家の方は、自然環境に優しい技術を他の農家にも積極的に公開して広めようと努めてきました。自分が労力を費やして体得してきた技術を「企業秘密」にして独り占めにしようという考え方はそこにはありません。それが粋な農家の心意気です。競争よりも共存を大切にしながら、共に自然環境に優しい農業を目指そうとしています。

2020年2月 6日 (木)

病原菌との対峙    令和1年7月18日

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病原菌との対峙    令和1年7月18日

長雨が続き、梅雨明けが待ち遠しい今日この頃です。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  今年の梅雨、関東地方では記録的な日照不足となり、ナスなどの夏野菜が7月に入ってもわずかしか収穫できていません。梅雨が明ければ夏野菜の生育も回復すると思います。

  作物に取り付く病原菌はたいていの場合、多湿の気候を好みます。特に湿った環境を苦手とするミニトマトには今年の梅雨は厳しかったらしく、多くのミニトマトが株元から順番に葉が縮れながら茶色に枯れてゆき、疫病にかかってしまった症状が見られました。

  病気を引き起こす病原菌が繁殖すれば、そのまわりで健全に育っている作物にも病気が感染してしまう危険性があります。疫病にかかってしまった作物は回復する見込みはありませんので、病気が感染しないように畑から引き抜いて外へ持ち出されたりします。

しかし、今まで手間をかけて育てた作物を引き抜いてしまうのも忍び難いこと。今回は病気で枯れたミニトマトの葉をかきとるだけにとどめ、本体は畑に残すことにしてみました。これで病気の感染が止まって回復してくれるのかどうか、見守りたいと思います。

よく見ると、疫病にかかっているのは特定の品種のミニトマトのみで、他の品種のミニトマトには症状が見られず無事に育っています。小林農場ではどの作物にも複数の品種を導入して栽培していますが、品種によって病気のかかりやすさがはっきりと違います。いろんな品種の種を播いてみて、病気にかかりにくい品種を見つけるようにしています。

毎年5月に収穫できるはずのサヤエンドウは、今年の5月は病気にかかって全滅してしまいました。前年のサヤエンドウから自分で採った種を畑に播いて栽培したのですが、その種に病原菌が付着していたのかもしれません。私は自分で種を採ったらそのまま畑に播いていましたが、もっと神経をつかわないといけないようです。採種した後は一つ一つの種を見直して、変な色や形をしていて病原菌に侵されていそうな種があれば取り除いたほうがよさそうです。種を日干し、陰干ししてしっかりと乾燥させておくことも重要です。

作物の種に病原菌が付着していると、そこから発芽して育った作物も病気にかかってしまう場合があります。市販されている種の多くは、農薬で消毒されて病原菌が退治されています。農薬に依存したくない小林農場は、できるだけ消毒されていない種を入手したいところですが、作物によっては無消毒で販売されている種を見つけるのが難しいです。

市販されている人参の種では、ほぼ全ての品種は農薬で消毒されています。人参の種も特に病原菌の被害を受けやすいということなのでしょうか?小林農場では、市販されている種だけでなく、自分で採った人参の種も畑に播いていますが、自分では特に消毒しません。今までのところ、自分で採った種から育てた人参も病害で困ったことはありません。自分で種を採って無事に管理できれば、農薬を使用して消毒された種を購入しなくてすみます。

会社や学校などのたくさんの人が集まる所で風邪が感染してゆくように、作物が密集していると病気が拡大してゆきやすくなります。狭い面積に欲張って作物を作りすぎずに、作物の間隔にゆとりを持たせて、日当たり、風通しを良くすることが病害対策の基本です。

2020年2月 2日 (日)

害虫対策の基本を再確認    令和1年7月4日

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害虫対策の基本を再確認    令和1年7月4日

長雨が続き、梅雨明けが待ち遠しい今日この頃です。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

カボチャは生育旺盛な作物で、害虫が葉を食べにやって来てもおかまいなしにどんどんツルを伸ばしてゆくので、通常は害虫対策をしなくてもよい作物とされています。ところが今年は畑に植えたカボチャの苗の半分がウリハムシに食べつくされて消えてなくなりました。こんなことは初めてです。残念ですが、今年のカボチャの収量は少なくなるでしょう。

それでもう一度、農業の教科書を開いて、害虫対策の基本について確認し直してみました。害虫対策に重要な姿勢をざっくりと2つにまとめると、「作物を健全な姿に育てること」と「畑の生態系を豊かに保ち、多様な生き物を生息させること」です。

生育に勢いのある健全な作物の体はよく引き締まっているので、害虫に食べられにくいです。軟弱な姿に育っている不健全な作物に害虫は集中的に寄り付きます。まずは作物を健全な姿に育てることが大事で、畑の日当たりや風通しを良くしておくことが大切です。

人間も栄養を摂りすぎると健康を損ねるように、作物も肥料を与えられすぎると軟弱になってしまいます。できるだけ与える肥料を少なくしたほうが害虫は発生しにくくなると言われています。そこで去年、それまで肥料を散布したことのないやせた畑で小松菜やカブなどを栽培してみたのですが、予想に反して害虫が大発生して食べ尽くされました。  

今年もやせた畑に葉物野菜やカブの種を播きましたが、事前に肥料を施して栽培してみました。そうしたら虫害が少なく、無事に収穫できました。肥料によって作物の生育に勢いがつき、害虫の勢いに勝ったのかもしれません。

私の今までの経験から得た直感では、もともと肥えている畑には肥料を与えないほうが良いと思いますが、やせている畑には肥料を与えて育てたほうが、作物は害虫の被害にあいにくくなるような気がいたします。作物の生育に勢いをつけてあげることが害虫対策にとても有効だと、最近は感じています。肥料を与えるのか与えないのか、畑の栄養状態や栽培する作物の性格などを考慮しながらその時その時に判断するようにしています。

いろんな虫や草などの生き物が生息している畑では生態系のバランスが保たれて、特定の害虫ばかりが繁殖することが減ります。害虫が増えればその天敵も増えます。多くの農家は農薬を散布して害虫を退治しますが、害虫だけではなくその天敵も死んでしまいます。

畑では自分の収穫したい作物のみを繁殖させて、そのまわりに生えている草を「雑草」と呼んで取り除きます。だから、多様な草が自生している野山と比べて畑の生態系のバランスは崩れているので、今回のカボチャの虫害のように、どうしても害虫が大発生することもときどきあります。それで農薬を使ったりすると、もっと生態系のバランスが崩れます。まずは農薬を使うことをやめることが害虫対策の始めの1歩だと考えています。

毎年、同じ畑で同じ作物のみを栽培し続けていると、その作物を好物とする害虫ばかりがその畑で繁殖しやすくなります。だから同じ作物ばかりを作るのではなく、いろんな作物を栽培しています。多品目の野菜をセットにして販売するのは、害虫対策にも有効です。

2019年12月22日 (日)

グローバル化する種子をめぐる攻防  平成30年11月22日

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グローバル化する種子をめぐる攻防  平成30年11月22日

吹く風に冬の到来を感じるこの頃です。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  誰もが皆、生きてゆくには絶対に食料が必要で、その食料は種子から生産されます。「世界中の種子を支配できれば世界を支配できる」とも言われ、今、種子をめぐって世界の情勢が静かに揺れています。そのような内容の講演会が行われたので、私も勉強してみました。

  海外では国境を越えて種子を生産している巨大な多国籍種苗会社が勢力を強めているようです。それらについての悪い噂が日本にもたくさん飛び込んできています。

  ある多国籍種苗会社は世界中を探索して、有益な遺伝子を含んでいる種子を見つける度にその種子の特許を取得し、自分たちの所有物にしてしまっているようです。もともとはその土地の農家によって代々、大事に採り続けられてきた品種の種なのに、後からやって来た多国籍種苗会社はその土地の農家にその品種の種を自由に使用することを禁じ、それに従わない農家に対しては訴訟を起こして法的にねじふせてきました。世界中の農家に自分達が開発した種子を無理矢理に購入させて支配してゆこうとしているようです。

  現在、日本政府は世界の国々と「自由貿易」ができるように準備し、国境を越えて物や人が出入りしやすい環境を整えています。そうなると、おそらく多国籍種苗会社も日本国内に進出しやすくなるでしょう。日本の農業関係者はそれに対して警戒を強めています。

「自由貿易を推進させれば世界の人々が交流できる機会が増えて、世界中が仲良くなれる」と考えている人が多いようですが、私は逆だと思います。多国籍企業を中心とした弱肉強食型の競争が世界中に広まり、世界の人々は対立を深めてゆくのではないでしょうか。

  日本国内では「種苗法」が強化されました。今までは農家は自分が気に入った品種から自分で種を採ることをわりと自由にできましたが、今後は種苗会社の開発した品種から農家が種を採ることが規制されることになります。農家が自分で種採りすると種苗会社から種を購入しなくなりますので、そんな種苗会社側の懸念に寄り添う形で法が修正されました。この修正によって、さらに多国籍種苗会社が日本で活動しやすくなるかもしれません。

  小林農場のように自分で種を採ることに力を入れてゆきたい農家にとっては困った話です。ただ、種苗法の対象は主に一般に流通されている品種の種です。私は仲間の農家からおもしろそうな品種の種を分けてもらうこともありますが、このように一般流通から外れた場で入手した品種からならば、問題なく自由に種を採ることができます。一般流通から外れた所に多国籍種苗会社の影響が及びにくい場がまだ残されています。

  農家を支配するために農家が自分で種を採ることを規制しようとする多国籍種苗会社。多国籍種苗会社に支配されぬように自分で種を採ることを維持しようとする農家。食の根源である種子をめぐる攻防が今、目の離せぬ状況になりつつあります。

  農家が自分で種を採ってゆくことを応援しながら、自家採種がしやすい品種の種を生産している良心的な種苗会社も稀にあります。種苗会社は命の根源である種子を扱う誇りの高い仕事を担っています。その種子をつまらない金儲けの道具にしないでほしいいです。

2019年12月11日 (水)

逝去された恩師の思い出    令和1年6月27日

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逝去された恩師の思い出    令和1年6月27日

アジサイの花が美しく咲いております。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  先日、私の農業の恩師、戸松正さんがご逝去されました。戸松さんは40年以上前に「帰農志塾」という農場を設立して、現在は栃木県那須烏山市で新規就農を目指す若者達を農場に受け入れて指導されてきました。新規就農者という種を新たに播き続けた方で、塾を卒業して一人前の農家として独立していったたくさんの卒塾生が日本全国に散らばっています。

  私も2年間ほど帰農志塾に住み込んで、塾生として下積みさせていただきました。農薬を使わずに多種類の野菜を栽培してゆく栽培方法や、消費者と顔の見える関係を築きながら「野菜セット」という形で消費者に配送してゆく販売方法などを帰農志塾で学びました。

私を含めて塾生のほとんどが、それまで農業の経験のない素人なのですが、作物の栽培はもちろん、農場の経営や営業などの仕事も次々に任されました。素人ですので失敗をやらかすのですが、なぜ失敗したのか、戸松さんから容赦のない指摘が飛んできました。戸松さんは塾生達に、自分の能力不足を自覚し、自分の欠点を直視することを厳しく求めました。   

戸松さんのご指導は常に真剣で、塾生は戸松さんに一人前と認められるようになるまでは独立することを許されませんでした。戸松さんと塾生達の間にいつも緊迫した空気が流れていて、気の弱い私には刺激の強すぎる毎日でした。私は失敗を繰り返しては塾にご迷惑をおかけし続け、けっきょく戸松さんから「お前はここにいても成長できないようだから、他に移ったほうがいい」と宣告されて、私は半人前のまま、塾を離れることになりました。

それから数日後、戸松さんより、「ウインドファミリー農場がお前を農場スタッフとして受け入れてもかまわないと言ってくれている」と伝えられました。市貝町にあるウインドファミリー農場は帰農志塾との親交が長く、ちょうどその頃、農場スタッフを新たに探していたようです。普段から戸松さんはウインドファミリー農場のことを塾生達によくお話されていました。

「小林、ウインドファミリー農場の農場スタッフになることを前向きに考えてみろ」と戸松さんが、それまでにお見せになったことのないような優しい表情をなさりながら、いつもと全く違う穏やかな口調で私にすすめてくださいました。私もポンと肩を押してもらった気分になり、何も迷うことなくその場でウインドファミリー農場にお世話になることを即決しました。

それから7年間、ウインドファミリー農場で下積みさせていただいた後、ウインドファミリー農場の敷地の一部をお借りして小林農場を設立し、私は農家として独立を果たしました。その頃、戸松さんは習字や彫刻に情熱を注ぎ始めていて、小林農場の看板を制作して私に贈ってくださいました。「小林農場風家」と漢字6文字が力強い書体で彫られた木製の看板です。他の卒塾生達にもそれぞれの農場名を彫った看板が戸松さんより贈られたようです。

つい最近まで戸松さんは度々、ウインドファミリー農場を訪れていて、そのついでに私の管理している畑も眺めてくださっていました。私が畑で仕事をしている姿を見つけると、「おう、よくがんばっているじゃねえかよ」と声をかけてくださいましたが、私は戸松さんの前ではいつも、ただ恐縮するばかりでした。厳しさと優しさが表裏一体になっているような存在でした。

2019年11月26日 (火)

機械が畑にやって来て   令和1年6月20日

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機械が畑にやって来て   令和1年6月20日

梅雨晴れの候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  小林農場では麦を栽培して、乾麺や小麦粉に加工しています。麦が収穫時期を迎えたら農家は鎌で麦わらを刈り取って麻ひもで束ねて風通しの良い場所に干して、乾燥したらわらを棒で叩いて麦の粒を取り出しますが、それは昔の話。現代はコンバインという機械を麦畑に入れれば刈り取りも脱穀も同時に終わらせ、あっという間に麦の粒が袋詰めされます。

コンバインはとても高価なので、農場の貯金では購入できません。数年前、近所の農家が麦の栽培をおやめになる時にコンバインを私に譲ってくださり、とても重宝しています。

コンバインは鋭い刃で麦わらを刈り取って、機械の内部で高速回転しているドラムでわらについている粒をかきとって、袋まで粒を飛ばしてゆきます。粒を取り出されたワラはすみやかに機械の外へ排出されてゆきますが、雨の後でわらが湿っていると円滑に排出されにくくなり、機械内部で詰まってしまって、そのまま無理に作業を続けると故障します。

よって晴天が続いて麦わらが乾燥している時にコンバインで収穫したいのですが、麦の収穫時期はちょうど梅雨の最中に重なることが多く、慎重に収穫日を選ばないといけません。小林農場もこの時期にコンバインで麦を収穫していますが、毎年、機械の中に麦わらをつまらせて故障させてしまい、何度も機械整備士さんに修理してもらってきました。

今年はコンバインが機嫌を損ねてしまわぬように気遣い、機械が少しずつ麦わらを排出してゆけるように一番遅い速度にして走らせました。エンジン音やドラム音に耳をすませて、変な音が聞こえたらすぐに機械を止めて、どこかに麦わらがつまっていないか確認しました。おかげで今年は機械整備士さんのお世話にならずに、無事に収穫を終えられました。

機械も持ち主と心を通わせることができるようで、持ち主が気遣えば機械もそれに応えてくれます。どうすればコンバインが気持ち良く働いてくれるのか、そのコツさえ掴めれば、あとは少し調整するだけで、私は操縦席に座っているだけで何もする必要がありませんでした。コンバインが順調に働いている間、私は運転しながら居眠りしそうになりました。

現代の田んぼでの田植えも田植え機で行うのが一般的です。機械がなかった昔は、地域の人々が集まって人海戦術で田植えが行われ、お互いに人手を貸したり借りたりしていました。今の時代は便利な農業機械が次々に開発されて人手を借りる必要がなくなり、私も機械のおかげで、小林農場の広い畑を他の人の手を借りずにたった一人で管理してきました。黙々とよく働いてくれる機械を自分の家族や仲間のように大切に思う農家もいます。

先日、近所の農家の水田で田植えの催しが開催されて、私も参加させていただきました。田植え機を使わず、参加者が手で苗を一本一本、田んぼに植えてゆきました。人海戦術とはすごいもので、人数が2倍、3倍になると作業が2乗、3乗になって相乗的にはかどります。

なぜ現代の農家は人海戦術よりも機械作業を選んだのか?いっぽうで、あらゆる作業が機械化されてゆく現代で、なぜ機械を使わずに自分の手で苗を植えてゆく田植えの催しに多くの人々が参加するのか?それらの理由を深く考えると、おもしろいかもしれません。

2019年11月10日 (日)

小林農場・働き方改革    令和1年6月13日

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小林農場・働き方改革    令和1年6月13日

梅雨寒の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  雑草も害虫も含め、畑はいろんな生き物で賑わってきました。この時期はやらなくてはいけない畑仕事が山積みされてゆき、どうしても農家は長時間労働を避けられません。

  私は毎朝、早朝の3時に起床しています。睡眠をとって疲れが取り除かれている状態なので、早朝の3時、4時頃が一日の中で最も頭が冴えています。日が昇るまでの時間帯に畑仕事の予習・復習や事務仕事などに専念し、本を読んだり通信を書いたりもしています。

  今は夕方7時をすぎても外は明るく、暗くなるまで畑仕事をしていると夕食の時間は夜の8時以降となります。夕食をとってお腹がいっぱいになると眠たくなり、何もできなくなります。なんとか気力を振り絞って洗面所まで歩いて歯を磨き、布団に辿り着いた後は、バタン、キュウ。次の日の早朝には疲れが取れてぱっちりと目が覚め、また一日を始めます。

  従業員に過剰に長い労働時間を課す企業を世間では「ブラック企業」と呼ばれていますが、私の労働時間はブラック企業で働かされている社員の労働時間よりも多いかもしれず、小林農場もブラック企業といえるかもしれません。でも私は健康に働き続けています。

  労働者が心身の健康を保ちながら働き続けられるかどうかは、労働時間の長さよりも、その労働にやり甲斐を感じられるかどうかにかかってくると思います。労働にやり甲斐を感じていれば、労働時間が長くても元気に働けます。逆にやり甲斐を感じられない職場では、少し労働時間が長くなっただけでも負担に感じて、心身が疲れやすくなります。

  農家などの自営業者は比較的に時間を自由に使え、時間に縛られるストレスが少ないです。いっぽう、時間に縛られないということは仕事をいくらでも怠けることができるということでもあります。自分を堕落させてしまいそうな要因から遠ざかるようにしています。

私はテレビを観始めると何時間も観続けてしまう悪癖がありますので、現在の私の住まいにはテレビを購入しないようにしています。スマートフォンも携帯していると仕事を怠けて遊んでしまうと思いますので、スマートフォンも購入しないようにしています。昔の私は「テレビっ子」でしたが、今の私は「ラジオっ子」です。ラジオは出荷作業中にも料理中にも手を動かして仕事をしながら聴けるので、気に入って聴いています。

  自分の好きな趣味に時間を費やすことによって労働で溜め込んだ疲れを発散させたりしてきましたが、今の私はそのように「労働の時間」と「趣味の時間」をはっきりと分けるのではなく、目の前の労働を趣味に変えてゆけるように心掛けています。私は文章を書くのが好きなので、私にとってこの農場通信を書くのは労働というよりも趣味です。通信をがんばって書いても農場の収入が増えるわけではありませんが、好きな趣味に時間をかけるのは心の健康には良いことです。昔は観たいテレビ番組がたくさんあってそれらを観るのに時間を費やしてきましたが、その時間を今は農場通信の作成のために費やしています。

畑での毎日の労働を農場通信のネタにしてゆければ、その労働は趣味に変わります。そうなれば労働にやり甲斐を感じられて、健康的に長時間労働をしてゆくことができます。

2019年11月 1日 (金)

祭りと瞑想    令和1年6月6日

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祭りと瞑想    令和1年6月6日

入梅の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  先日、地元の生産者による手作り青空市「SATOYAMAヘルシーマーケット」が市貝町で開催されて、小林農場も野菜や加工品を持参して出店いたしました。私は人と話をするのが苦手ですので、来場者の皆さんにおもしろい話をして楽しませることができません。そこで、商品だけではなく、試食や飾りや遊戯など、会話のきっかけを作ってくれそうな「話のネタ」を事前に用意して、お祭りに持参して店頭に並べておくようにしています。

  飲食店の皆さんはこの会場でしか食べられないような個性的な料理を販売していましたので、私もときどき自分の店を抜け出して、飲食のお店を回ってみました。自分の財布の紐をゆるめておくのが、お祭りでの作法。人と話をするのが下手な私が飲食店の方々と交流するため、まずは料理を購入してじっくりと味わってみて、その感想を話のネタとしました。

  口下手な私は、どうしても人と話をするときに身構えてしまい、話のネタがすぐに思いつきません。自然に来場者との会話を楽しんでいる他の生産者の姿が、羨ましく思えました。

  私は昔から人付き合いが苦手で、そのことに劣等感を感じていました。小林農場を設立するまでは10年間ほど、お師匠さんの農場に住み込んで農業研修生として作物栽培を学ばせていただき、お師匠さんのご家族や他の研修生の仲間達と朝から晩まで寝食を共にする毎日を送っていました。他の人たちと農場で共同生活を送っているうちに私の性格も社交的に変わるかもしれないと思いましたが、けっきょく、あまり変わりませんでした。

  農家として独立した後は、気楽な一人暮らしを楽しんでいます。やはり、みんなでいっしょに賑やかに暮らすよりも一人きりで静かに暮らすほうが、私の性格に合っています。

  人間はさまざまな感情を抱え込んでいる複雑な生き物なので、付き合ってゆくのにいろいろと気遣いをしなくてはいけません。ずっと人間を相手にしている医者や教師は大変な仕事だと思いますが、それゆえに人々から「先生」と呼ばれて尊敬されています。

  自分の農場で農業体験を開催するなど、多くの人達を農場に迎え入れて農業を広めようと活動している農家の皆さんにも敬意が支払われるべきでしょう。私のお師匠さんのように新規就農を目指す若者を熱心に指導してくれる農家にも敬意が支払われるべきです。

  いっぽう私は一人になれる時間が好きなので、ひたすら黙々と自分の畑で作物を栽培することに専念してゆきたいと思います。人間と比べて草や虫などは余計な感情を持たずに素直に生き、こちらも余計な気遣いをせずに付き合えます。農業では人間以外の生き物と接するのですが、その間は難しい人付き合いから離れて心を癒せる効用もあると思います。

誰かが「畑仕事は、みんなでやればお祭りになり、一人でやれば瞑想になる」と言っていましたが、うまい表現だと思いました。除草作業では長い時間、黙々と草をむしってゆくのですが、これは一種の「瞑想」だと思います。人々が集って交流を深めてゆく「お祭り的な農業」を他の農場の活動から学ばせていただきながら、小林農場では「瞑想的な農業」を追求したいと思います。言葉を発しない草や虫と付き合うには、「瞑想」するとよいです。

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後記(11月1日記入)

次回のSATOYAMAヘルシーマーケットは、12月1日に開催されます。よろしかったら市貝町の会場までお越しください。

小林農場にとっては希少な「お祭りの時間」となります。次回も張り切ってまいりたいと思います。

2019年10月19日 (土)

春の苗作りの反省    令和元年5月30日

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春の苗作りの反省    令和元年5月30日

衣替えの季節となりました。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  2月から5月までの3カ月間、たくさんの春野菜や夏野菜の苗をビニールハウスの中で育てて、6月に入るまでに次々と畑に植えてゆきました。反省の多い今回の苗作りでした。

2月に種を播いて育てたキャベツやブロッコリーなどの春野菜の苗は4月までに畑に植えられ、通常なら5月下旬より収穫されてゆきます。ところが今回はこれらの作物の生育が停滞していて、6月に入ろうとしている今になっても少ししか収穫できていません。

  まだ寒さの厳しい2月頃からハウスの中でこれらの春野菜の苗を防寒しながら育ててゆきました。苗が大きくなったら畑に植えられてゆくのですが、その頃はまだ畑は早朝に霜が降りるほど寒いので、畑に植える前に苗を徐々に寒さに馴らしてあげる必要があります。苗が大きくなるにつれて、少しずつ保温資材を取り除き、寒さに当ててゆきます。

  今回はその過程で、私が苗に当てた寒さが強すぎたようで、畑に植える前にずいぶん苗の葉が寒さで傷んでしまいました。案の定、苗が畑に植えられた後、多くが根を張る前に枯れてしまいました。生き残った苗も根を張るまでに時間がかかり、順調に育ちませんでした。

  幼い頃の経験が大人になった後にも影響を及ぼす人間と同じように、作物も幼い苗の頃にたくましく育てば、その後に畑に植えられた後もたくましく生育しやすくなります。人間の子供と同じように、作物の苗もたくましく生育させるには少し厳しい環境で育てたほうが良いです。でも私が「スパルタ教育」で苗を育てると、苗を枯らしてしまいやすいです。

  3月から育て始めた夏野菜の苗には、「ちょっと甘やかししすぎなのでは」と思えるくらいにしっかりと暖めてたっぷりと水を与えて育てました。十分に外が暖かくなる5月中旬頃になるまで待ってから、夏野菜の苗を畑へ植えてゆきました。ところがこの5月は、畑を耕すトラクターが突然に故障してしまって、畑の準備に時間がかかりました。ハウスの中では苗はすっかり大きくなっていて、狭いポットの中で根を窮屈そうに伸ばしていました。

特にトマトの苗はポットの外にまで根がはみ出してビニールハウス内の土に根を張ってしまい、ハウスから苗を持ち出して畑に植えてゆく時にプチプチと根が切れてしまいました。畑に植えられた翌日には葉がしおれてしまい、このまま放っておいたら死んでしまうので、それから毎日、水を畑まで運んで苗の株元に与えました。なんとか葉が立ち上がってくれて、このまま無事に苗が根付いてくれるかどうか、しばらく様子を観たいと思います。

ハウスの中で十分に大きく育った苗をそのまま広い畑に移さないでいると、狭いポットの中で苗の根はぐるぐるとトグロを巻いて伸びてゆきながら茶色に変色し、老化します。葉の色も黄ばみ、茎もヒョロヒョロと間延びして、いかにも弱々しい姿に変わります。

苗が若くて葉色が爽やかなうちに畑に植えれば勢い良く畑に根を張ってゆくので、本当はもっと早い時期に良い状態で苗を畑に植えてあげたかったです。1か月前から畑に自家製の堆肥を鋤きこんで土作りをして、苗を植える準備をしておきました。私は苗の良い育て親にはなれませんでしたが、後は母なる大地の底力に苗を委ねたいと思います。

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