どこに向かうのか、農業 令和5年6月12日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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どこに向かうのか、農業 令和5年6月12日
長雨の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
この春に小林農場の近所に引っ越してきて新たに農家として独立したご近所さん夫妻の畑では、作物の株元に大量の草を敷いています。そのように株元を被覆すると雑草が生えてくるのを防ぐことができて、強い雨や日差しから作物の根を保護することもできて、作物の生育が良くなります。先日、ご近所さんより、小林農場の敷地で生い茂っている雑草をいただきたいという相談を受けました。私が承諾するとご近所さんはすぐに雑草を刈り取ってさっさと軽トラックの荷台に積んで持ち去ってくれました。ご近所さんは私に感謝をしてくれましたが、私が自分で雑草を刈る手間を省けたので、感謝をしたいのは私のほうです。
昔の時代の農家は、このように草で畝を被覆して作物を育てていたようですが、今の時代はビニールシートを畝全体に張って被覆するのが一般的です。草は身近な自然環境で手に入る天然の資材で、いずれは土に還ってゆきますが、ビニールシートは他所より購入する人工の資材で、いずれはゴミになります。自然環境に調和した栽培を目指すのであればビニールシートよりも草のほうを利用したほうがよいのですが、草を刈って持ち運ぶには手間がかかるので、現代の多くの農家は手間のかからない便利なビニールシートを利用します。
この時代でもビニールシートより草のほうを利用しているご近所さん夫妻の心意気は見事です。農家として独立して新たな生活を始めることができた喜びが、手間を厭わない活力を生み出しているのかもしれません。私も農家として独立した当初は身近な草のみを利用してゆきたいと思いましたが、だんだんと私の実力では大量の草を刈って持ち運ぶための時間を作るのが難しいことが分かり、今はビニールシートも利用しています。便利なビニールシートの使用に慣れると、手間をかけて草をかき集める気力も沸きにくくなります。
近年はビニール資材の他にも農薬や化学肥料や農業機械などの便利なものが次々に開発されて、昔と比べて現代の農家はずいぶんと楽に作物を栽培できるようになりました。しかし近年の日本では農業をやめる農家が激増して、農家の人口は激減しています。農林水産省は農業の人手を確保してゆくために、さらに便利な栽培技術「スマート農業」を推進していて、田畑にロボット、AI(人工知能)、IoT(ネット連動技術)などを導入して「栽培技術のデジタル化」を目指しています。しかし、すでに現代の栽培はずいぶんと便利になっていったのに、なぜ農業をやめる農家が激増したのか、スマート農業を始める前に考えたいです。
周辺の水田地帯では田植え作業が終えられていますが、今の時代は田植え機を田んぼで操作して稲の苗を植えてゆくのが一般的です。近所の田んぼでは数世帯の家族がいっしょに稲作を行っているクラブがあり、私も参加させていただいています。人海戦術で行われた昔の時代の田植えのように、このクラブではみんなでいっしょに苗を1本1本、手で植えてゆきます。このクラブの活動が始まってから数年が経ち、参加者の皆さんもすっかり苗の植え方を体得していて、今年は半日で田植えを終わらせることができました。みんなで農体験を分かち合うことによって、昔ながらの手間のかかる手作業も楽しんでいるクラブです。
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