生き物の表情 令和5年6月1日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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生き物の表情 令和5年6月1日
入梅の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
現在はコロナ禍が収束して、世界中の人々はマスクを外して日常生活を取り戻しています。そんな中でも日本では今もまだ、半数以上の人々がマスクを着用し続けながら暮らしています。以前から「日本人は周りの人の目を気にしすぎる」と指摘されていましたが、コロナ禍をきっかけにして、「マスクで顔を隠していると周りの人に自分の表情が読まれにくくなるので気分が楽になる」と思ってマスク生活を続けることを好む人も多いようです。
ずっとマスクで鼻と口を覆っているような不自然な生活習慣を続けていると病気や認知機能障害を引き起こしたりする危険性があることが指摘されています。人間の顔は目、耳、鼻、口、顎などが一組となって他者に認識されますので、マスクで鼻や口が隠れてしまったら、その人の顔は他者に正しく認識されなくなります。コロナ禍以後、子供達はマスクを外した同級生の素顔をほとんど見ることなくすごしていたので同級生の顔を覚えられていないかもしれず、数年後に同窓会で同級生達と再会しても思い出せないかもしれません。
乳幼児や幼児達はまだ言語で他者と会話をするのは難しいので、相手がどんな時にどんな表情をするのかを見ながら、自分もそれを真似して表情を作ってみたりして、表情を通して他者との接し方を学習しているようです。相手がマスクで顔を覆っていると表情を読みとりにくくなり、幼児達は他者と心を通わせるための学習が遅れてしまうようです。
「自分の表情をマスクで隠しながら会話するのは相手に対して失礼ではないか」という感覚が私にはあり、礼儀を大切にするためにもマスクを外したほうがよいと私は思います。
人間に表情があるように、作物にも表情があります。5月には育苗ハウスの中で育ててきた夏野菜の苗をたくさん畑に植え付けてゆきましたが、苗がたくさんありすぎて時間がかかりました。苗が植え付け適期を迎えてもなかなか植えてあげられず、ハウスの中で葉の緑色が薄くなってきて生育を止めていじけた感じになり、「もうハウスの中じゃ狭いよ。早く畑に移して!」と言いたそうな表情をしていました。苗を畑へ巣立たせる直前に桶に溜めておいた水の中に苗の根を丸ごと漬けてたっぷりと水を吸収させますが、その直後に苗は背筋を伸ばすように背丈を伸ばし、葉を広々と広げて、体全体で「気持ちいい!」と言っているような良い表情をします。植物は言葉を発しませんが表情を発しますので、その表情を逃さずに把握しながらどんな環境を作物は好むのか推察して、栽培方法を改善します。
この早春はホウレンソウ畑に防寒布をかぶせてホウレンソウを防寒しましたが、防寒布で覆ったためにその下の畑の状況が把握しにくく、気付かぬうちに畑は雑草で覆われてしまい、ホウレンソウの生育が停滞してしまいました。防寒布を全部取り除かないとその下の畑の状況を正確に把握できず、防寒布の一部をめくって見るだけでは把握できません。防寒布は作物を防寒するのに有効ですが、畑全体の表情が把握しにくくなる欠点もあります。
「表情をマスクで隠すと安心する」と言っている人の気持ちも分からなくはありませんが、それでも人とも作物とも、表情を通してしか伝え合うことのできないことも多いです。
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