苗作りが始まる 令和5年1月26日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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苗作りが始まる 令和5年1月26日
酷寒の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
人体の血液細胞が正常に働かなくなると白血病などの命にかかわる重い病気にかかりますが、健常者の骨髄から正常な血液細胞を移植することによって治療できる場合もあります。「日本骨髄バンク」では、白血病などの患者の治療のために骨髄を提供してくれる人を募っています。骨髄を提供する人のことを「ドナー」と呼び、骨髄を提供する意思があることを日本骨髄バンクに伝えることを「ドナー登録」と呼びます。私も20年ほど前にドナー登録をしていますが、どんなきっかけで登録をしたのか、今はよく覚えていません。
骨髄移植を行うためには患者とドナーの白血球の型が同じであることが必要ですが、自分と同じ白血球の型の人は数百人から数万人に一人くらいしかいない場合が多いようです。今月、ある患者と私の白血球の型が一致して、私がドナー候補者の一人に選ばれたという通知書が届きました。私が骨髄提供に協力できるのかどうか、1週間かけて熟考しました。
骨髄移植のためにドナーは病院にて移植前の検査や移植後の体調回復のために数日間ほど入院する必要があります。3月から5月に骨髄移植が行われることが予定されていますが、その頃は作物の苗作りを行っている時期と重なります。作物の苗は人間の赤ちゃんと同じように絶え間なく面倒をみないといけなくて、水やりや温度管理などが常に必要です。入院のために数日間も農場を留守にして苗を放置してしまうと枯れてしまいます。どんな天候にどれくらい水を与えればよいのか、どんな温度管理をすればよいのか、細かな管理方法を熟知しているのは私だけで、他の誰かに苗の管理を代わってもらうことはできません。
2月から5月にかけて、春、夏、秋に収穫される多くの作物の苗が育てられて、この苗作りでの良し悪しが農場の1年の収量を大きく左右します。「桜が満開になっても花見には出掛けられない」と言っている農家もいますが、私も野菜セットの配送で農場を数時間ほど留守にする時は、どうしても留守中の苗の状態が気になってしまいます。入院のために農場を数日間も留守にするのは難しいので、今回は骨髄提供に協力することを辞退しました。私の他にもドナー候補者がいるようなので、無事に骨髄移植が行われることを祈っています。
骨髄を提供できるドナーが現れることを切実に願っている患者もいますし、ドナーが見つからないまま亡くなってゆく患者もいます。日本で暮らしている全ての人々がドナー登録をして骨髄提供に協力できれば全ての患者の命は救われるかもしれませんが、実際に協力することを決断できる人はそんなに多くはありません。日本骨髄バンクも「骨髄を提供することによってドナーの生活が犠牲になるようなことはあってはならない」と考えていて、ドナー候補者に対しても骨髄提供を強要して自己犠牲を強いることはしません。私には畑仕事が最も大事ですので、骨髄提供よりも苗作りを優先しました。この判断はどうだったのか、後で振り返って考えたいと思います。今は間もなく始まる苗作りに集中いたします。
実際に骨髄提供に協力したドナーの方々には敬意を支払います。私は日本骨髄バンクに寄付をしました。自分のできる範囲で応援しながら、関心を持ち続けたいと思っています。
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