「持たない」という選択 令和4年9月15日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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「持たない」という選択 令和4年9月15日
野分の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
11年前の福島第一原発事故が発生する前は、日本の主要な電力供給源は原発による原子力発電でした。原発事故後に原発は危険な施設であることが周知されて、日本政府は原子力発電の代わりに海外から輸入される天然ガスを主な電力供給源として、徐々に原発を廃止してゆく方針でした。しかし先月、日本政府はウクライナ情勢により天然ガスが輸入されにくくなり電力が逼迫しやすくなっていることを理由に、再び原発を再稼働させて原子力発電を推進してゆく方針を発表しました。これまで原発の再稼働に反対してきた人達からも「電力が逼迫している今は、原発の再稼働はやむをえない」という声があがっています。
福島第一原発事故で東日本全体が放射性物質に汚染されて、東日本でとられた米、野菜、魚などの食材の安全性も失われて、農家も魚師も消費者もみんな、苦しみました。原発は事故を起こさなくても稼働中に猛毒の放射性廃棄物を常に排出していて、この猛毒はすぐに消滅しませんのでずっと保管しなくてはいけません。原子力発電を続けてゆけば放射性廃棄物も溜まり続け、私達の子孫に莫大な量の猛毒を遺してゆくことになります。事故や事件が起こって保管できなくなれば、大地や海に猛毒が拡散して取り返しがつかなくなります。
原発が初めて日本で稼働したのは60年ほど前で、それまでは原発がなくても人々は生活していました。現在は大勢の人々が冷房、冷蔵庫、照明、パソコンなどで電力を大量に消費するようになって電力も大量に必要となり、猛毒の廃棄物を生み出し続ける原発にも頼らなくてはいけないと言います。太陽光や風力や水力などの自然エネルギーで発電する方法も研究されていますが、他の生き物も太陽光や風や水の力を利用して生きているので、これらの力を人間が発電のために横取りすれば生態系に悪影響を及ばすかもしれません。
「今の時代、冷房がなければ夏をすごせない」と言う人がいますが、我が家には冷房がないけれども私は夏を乗り越えています。「今の時代、スマートフォンがなければ生活できない」と言う人もいますが、私はスマホを購入したことがなく、それで全く問題なく暮らしています。でも、私も冷房やスマホを購入すれば「もう冷房やスマホがなければ生きてゆけない」と言い出すかもしれません。人間は所有した物に依存しやすく、手放せなくなります。現代の農家は農薬を購入して使用するのが一般的ですが、私は最初に師匠から無農薬栽培を教わったので、小林農場を設立した後は農薬を購入せず、何もためらわずに無農薬栽培を始めました。最初から農薬を使用していれば、農薬を手放すことは難しかったと思います。
先日、久しぶりにお会いした私の先輩の農家は、トラクターを使わないと言っていました。小林農場ではまずトラクターで畑を耕さないと作物栽培を始められませんが、トラクターを動かすには電力が必要で、それは原発に依存することになるのかもしれません。ある農家が「問題を解決してゆく生き方よりも、問題をまねかない生き方のほうが大事だ」と言っていました。冷蔵庫、照明、パソコン、トラクターなどは私の日常生活で様々な問題を解決してくれていますが、これ以上に物を購入して電力をさらに消費するのはやめたいです。
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