生き物の最期を見届けること 令和3年9月30日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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生き物の最期を見届けること 令和3年9月30日
秋の夜長、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
小林農場で飼っていた飼い犬のパンチが、秋分を迎えた日に天寿を全うしました。飼い犬の平均寿命は14歳くらいらしいので、18年間も生きたパンチは大往生を遂げました。
もともとパンチは私の農業の師匠が飼っていた飼い犬で、まだら模様のある体がパンダの体に似ていたので「パンチ」と名付けられたらしいです。私が農家として独立することになったとき、師匠は私にご自身の畑の一部を貸し与えて、住まいや物置小屋も貸し与えて、高価なトラクターも授けて、そしてパンチも授けてくださいました。私が小林農場を設立して最初に行った仕事が、パンチの犬小屋を師匠の敷地から私の敷地に移動することでした。
散歩を生き甲斐としてきた犬でしたが、昨年頃から足腰は明白に衰えてゆき、散歩に連れてゆくとすぐに疲れて立ち止まるようになり、真っ直ぐに歩くこともできなくなりました。今年には立ち上がることもできなくなって、散歩は不可能となりました。目も耳も遠くなり、自力で水を飲んだりエサを食べたりするのも困難になり、自分が排泄した排泄物をきれいに処理することもできなくなりました。私の介護なしでは暮らしてゆけなくなってゆくパンチの姿を見ながら「生き物が年をとるとはこういうことなのか」と実感いたしました。
数週間前頃からパンチはすっかり寝たきりの状態になりましたが、亡くなる直前まで食欲だけはあまり衰えませんでした。「これだけ食欲があれば、20年も30年も生き続けるかもしれない」と勝手に思っていましたが、やはりお別れの日は不意にやって来ました。
今年はナスやピーマンなどの夏野菜の樹の生育が悪く、もう樹を回復させることは難しいと思って管理することをやめて放任しました。私は元気をなくしてしまった作物には薄情で、他にも栽培しなくてはいけない作物がたくさんありますので、そちらに専念します。
でもパンチは老いて体が不自由になってもかわいらしく、毎日の介護に手間をかけました。
飼い犬は飼い主の人間にどんな時にも寄り添ってくれて、飼い主の心を癒してくれます。いつも自分のことばかりで頭がいっぱいになっている私には他人に寄り添ってあげることができませんが、犬にはそれができます。犬とは仏様のように慈悲深い動物だと、パンチと接しながら思いました。パンチを介護することによって忙しい日常の中で忘れそうになってしまう優しさを思い出せて、老いてもなお、パンチは私の心に癒しをもたらしました。
すでに私に見放されたナスやピーマンの樹は、それでもしぶとく生き残り、ほんのわずかですが実を実らせ続けてきました。私もナスやピーマンの畑に通って、ほんのわずかな収穫をかき集めながら大事に野菜セットに入れて出荷してゆきました。10月にはナスもピーマンもミニトマトもオクラも、樹は静かに寿命を迎えて実を実らせなくなるでしょう。
6月から5カ月間にわたって安定して実を実らせ続けてくれてきたキュウリの樹も、青々としていた葉が枯れ落ちてゆき、実の数が日に日に少なくなっています。これから収穫できるキュウリの実は1本1本が貴重です。キュウリの樹が寿命を迎えてもパンチが寿命を迎えた時みたいに涙を流したりはしませんが、最期を見届けて感謝したいと思います。
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