夏野菜を学び直す 令和3年6月17日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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夏野菜を学び直す 令和3年6月17日
短夜の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
関東地方も梅雨に入り、これから空気が蒸してゆきます。これまで出荷してきたレタスやブロッコリーやカブなどの春の野菜は高温で多湿の気候では傷みやすくなり、間もなく出荷が終了するでしょう。高温多湿に強いキュウリやナスなどの夏の野菜が代わりに収穫され始めないと、この時期に出荷できる野菜の種類が極端に減ってしまいます。
この時期に夏野菜を収穫するには、5月上旬には夏野菜の苗を畑に植える必要があります。しかし5月上旬はまだ早朝が冷え込む日もあり、寒さに弱い夏野菜の苗を無事に畑に植えるには十分な気温ではありません。そこで多くの農家は夏野菜の苗を植える前に畝を立ててビニール資材で畝を覆って、畝の地温を予め温めておいてから苗を植えます。
気温が高い時に苗を植えれば苗はビニール資材に頼らなくても自分の力だけで根を張りやすくなるのではないかと考えて、私は気温が安定して暖かくなる5月下旬になってから苗を畑にそのまま植え、畝をたてたりビニール資材を張ったりする手間を省きました。
苗を植える時期を遅らせば収穫時期も遅れます。早い農家は6月からナスやピーマンなどの収穫を始めますが、小林農場の畑ではまだ苗は小さなままです。去年も小林農場はナスやピーマンの収穫が遅れ、まともに収穫できるようになったのは梅雨が明けた後でした。
育苗ハウスでポットの中で育てられた苗が畑へ巣立ってゆくことは苗にとっては一大事であり、その時に円滑に苗が畑に根付けるかどうかで、その後の生育に勢いがつけられるかどうかが決まるようです。畝もたてず、ビニール資材も張らずに、そのまま畑に苗を植えてゆくだけの私の植え方だと苗には過酷なようで、植えられた後の苗の生育に勢いがありません。今年もナスやピーマンが収穫されるまで、時間がかかりそうな様子です。
畝をたてれば苗の根の周りの排水は良くなり、日光を受け止める地表の面積も増えて地温が保たれやすくなります。ビニール資材で地表を覆えば苗の根を風雨に直撃されて傷んでしまうことを防げます。やはり苗を植える時には手間を省かないほうがよさそうです。
夏野菜で最も早く収穫時期を迎えるのがズッキーニです。上手に育てれば梅雨が明けた後も収穫し続けられるのですが、小林農場の畑では毎年、ズッキーニは短命で終わります。調子良く収穫できるのは最初の2週間くらいだけで、後は収量がどんどん落ちていって回復することはなく、やがて病気に罹って枯れてゆくズッキーニの株が続出してゆきます。
苦手としてきたズッキーニ栽培を克服するために栽培の手引書を改めて読み返してみました。「いらなくなった葉はかきとって、できるだけ風通しを良くする」など、自分にも簡単に行える改善策がまだまだあることを学びました。ナスなどがしばらく収穫できないのであれば、ズッキーニをできるだけ長く収穫できるように手間をかけたいと思います。
レタスなどの春の作物は「草」みたいなもので、「草」は放任していても勝手に生育しやすいです。いっぽうでナスやズッキーニなどの夏の作物は「樹」みたいなもので、「樹」は人間が整枝したりするなど細やかな管理が必要になることを再確認しているところです。
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