発酵と腐敗 令和3年2月11日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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発酵と腐敗 令和3年2月11日
三寒四温の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
作物を元気に育てるためには、良い土で育てないといけません。「良い土」とは、発酵菌がたくさん増殖している土だと考えられています。発酵菌は土の中の栄養を分解して作物の根に渡すなどして、作物の健全な生育に欠かせない存在です。いっぽう「悪い土」には腐敗菌がたくさん増殖して腐敗して、これらが作物に病気を引き起こしたりします。
「発酵」も「腐敗」も、どちらも菌が増殖することによって生じる現象です。発酵菌が増殖すれば甘酸っぱい匂いが漂い、腐敗菌が増殖すれば鼻を刺激するような嫌な臭いが漂います。発酵している土には白いカビが生え、カビの色が青、または黒の場合は腐敗している可能性があります。発酵中の土は発酵熱を出してフカフカと暖かくなり、土がペチャペチャと湿ったままだと腐敗するかもしれません。菌は小さくて人の目には見えませんが、様々な合図から土に発酵菌が増殖しているのか腐敗菌が増殖しているのかを見極められます。
畑の土作りでは、発酵が生じやすい環境を維持して、腐敗が生じにくいようにすることを目指します。発酵菌は温度と湿度に応じながら、増殖したりしなかったりします。落ち葉を発酵させて床土を作る作業では、落ち葉が乾きすぎていると発酵しないので水を落ち葉にたっぷりと与える必要がありますが、湿りすぎると腐敗しやすくなります。どのくらいの温度や湿度を発酵菌が好むのかを経験を積みながら覚えて、水加減や温度調整を行います。
人間の体の中にもたくさんの発酵菌が生息していて、私達の健康を維持してくれています。体を温めたり味噌や醤油などの発酵食品を体に取り入れたりすると発酵菌は活発に活動してくれます。体が冷えたり、体の中で腐敗しやすい食材を取り入れたりすると、発酵菌は弱まって、代わりに腐敗菌(病原菌)が増殖して、その体は病気に罹りやすくなります。
年をとって寿命を迎えると生物の体は腐敗へと傾き、遺体は腐敗菌やウジなどの虫に分解されてゆきます。そうして分解された粒子は次の生命を生み出してゆくための素材となります。発酵を好み腐敗を嫌う私達の生命は腐敗菌やウジなどの腐敗を好む生き物を本能的に嫌悪しますが、これらの分解者がいなければ地球上は遺体だらけになって次の生命を生み出せなくなります。自然界の中では発酵と同じくらいに腐敗も必要不可欠です。
畑に生息している害虫や病原菌は、発酵菌の助けを得ながら生き生きと生育している作物にはあまり寄り付かず、生育が弱々しくて生き残れる見込みの薄い作物に集中して寄り付く傾向があります。寿命を迎えようとしている作物を分解して土に還してゆくという役割を害虫や病原菌が担っています。「病原菌がやって来たから作物が病気になる」と言うよりも、「寿命を迎えた作物が病原菌を引き寄せて病気になって土に還る」と言えます。
虫害や病害が多発する原因は農家の栽培方法に問題がある場合が多く、畑を腐敗させてしまって作物が病気に罹りやすくなり、作物の寿命を縮めてしまったりしています。よって病害対策では、病原菌を駆除することよりも、発酵菌を畑に繁殖させて作物を健全に育てて病気になりにくくすることが大事です。目に見えぬ菌の存在を感じるようにしたいです。
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