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2021年6月19日 (土)

誰のものでもない種   令和2年12月10日

野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。

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誰のものでもない種   令和2年12月10日

師走の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  現在、野菜セットに入れている形が細長いカボチャは「鶴首カボチャ」という品種です。去年、知り合いの農家より鶴首カボチャを入手して食べてみるとおいしかったので、そのカボチャから種を採りだして、今年の春にその種を播いて栽培して、秋に実って収穫しました。

  今年初めて栽培してみた品種でしたが、他のカボチャの品種よりも元気にツルを伸ばしてたくさんの実を実らせて、そのたくましい生育ぶりに私は惚れ込みました。収穫された鶴首カボチャから種を採り出して、来年もこれらの種を播いて栽培したいと思います。

  先日、国会の衆議院・参議院で「種苗法の改定案」が可決され、農業関係者の間で大きな話題となりました。「種苗法」とは、種苗会社などの新品種の開発者の「育成者権」を守るために作られた法律です。「育成者権」とは、書籍や楽曲などの「著作権」のようなもので、品種開発者の許可を得ずに農家が無断でその品種から種を採ることを制限しています。

  種苗会社が現れる以前の昔は、農家は他所から入手した品種の種を自分の畑に播いて生育させた後、その作物から自分で種を採りながら何年もその品種を栽培し続けていました。農家が自分で種を採ることは、当たり前の権利として認められてきました。近年の日本では「種苗会社などの品種開発者の育成者権」と「品種開発者が開発した品種から農家が種を採る権利」とどちらもバランスをとりながら両立させています。今回の種苗法改定によって「品種開発者の育成者権」が強化され、それに伴って農家が種を採る権利は縮小されます。

  平成28年には「種子法」を廃止するなど、この数年間で日本の農政にとって重大な改定が相次いでいますが、この一連の流れから見えてきたのは、どうやら日本政府は民間の種苗会社の利益を最優先に保護しようとしているということです。農家が無断で種を採ってはいけない品種は「禁止品種」と呼ばれていますが、農林水産省が「禁止品種」に指定した品種の数がこの数年間で急増しています。「禁止品種」から無断で種を採ると罰せられるので農家は種苗会社から種を購入しなくてはいけなくなり、種苗会社の利益が増えます。

  品種開発者が生活してゆくためには、ある程度は育成者権を保護することは大切ですが、全ての品種を「禁止品種」にしてしまうと農家は自分で種を採ることができなくなります。農家が他所から取り入れた品種の種を自分で採る技術を継承してゆくことも大切です。

一つの鶴首カボチャからは自分だけでは使い切れないくらいのたくさんの種が採れますので、他の農家にも分けてみようと思っています。鶴首カボチャの種は、現在では一般的に販売されていない希少な種なので、きっとこの種を欲しがる農家もいると思います。

皆さんも鶴首カボチャを料理する前には種を採り除いていると思いますが、その種を捨てずに水洗いして乾かして保管しておけば、来年の春に種としてカボチャ栽培に利用できます。もしも家庭菜園でカボチャを栽培したい方がいましたら、種採りに挑戦してみるのもおもしろいと思います。小林農場の鶴首カボチャは「禁止品種」ではなく、「種苗法」とか「育成者権」などの難しい話を気にせずに、誰もが自由に種を採ってもよい品種です。

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