緑色をした堆肥 令和2年10月29日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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緑色をした堆肥 令和2年10月29日
爽秋の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
人間に世話してもらわなければ順調に生育してゆくことのできない作物と比べて、その土地で自生している雑草の生命力は強いです。作物と雑草が競争すれば作物のほうが負けるので、農家は常に除草作業を行い、雑草から作物を守らないといけません。
夏になるとキク科やヒユ科などの雑草が勢い良く勝手に生えてきて、しばらく畑を耕さないでいると短期間で背を高く伸ばして太くなり、「草」というよりも「樹」のような姿になります。樹のようになった雑草が畑のあちらこちらを占有してゆく様子はいかにも太々しくて行儀が悪く、畑の景観も荒地のように荒々しくなってしまいます。
小林農場の畑の一部ではスギナが群生しています。スギナは背を高く伸ばしませんが、地下で茎を縦横無尽に伸ばして勢力を拡大してゆき、繁殖力が旺盛で駆除するのが難しい雑草です。他の植物が生育しにくいような固くてやせている土地に好んで繁茂する性質があり、スギナが群生している区域で栽培するとたいていの場合、作物の生育が悪いです。
去年の冬、土が固くて作物の生育が悪い区域の全面にライムギの種を播いて生育させて、春に大きく育った後は粉々に粉砕して鋤きこみました。夏にもソルガムという草の種を播いて、現在は背を高く伸ばして生育していて、この冬に粉砕して畑に鋤きこむ予定です。
ライムギやソルガムはイネ科の植物で、その姿は同じイネ科の稲や小麦に似ていますが、ものすごい勢いで生育して、私の背丈よりも高く背を伸ばします。これらの勢いは雑草の勢いをも上回り、ライムギやソルガムが生育している最中は雑草はその周辺で生い茂ることができません。これらの草で一色に染められる畑の景観も、草原のように美しいです。
ライムギやソルガムは光合成によってその大きな体にたくさんの養分を貯め込み、これらが大きく生育した後に粉砕して土に鋤きこむと、やせている土に養分を与えたり、固い土を柔らかくしたりすることができます。土を肥沃にしてゆく「土作り」に役立ちます。
一般的な土作りでは、米ぬかや家畜フンなどを発酵させて作った堆肥を畑に散布して鋤きこみますが、堆肥を大量に他所から持ち運んで散布してゆくにはけっこう手間と体力を必要とします。ライムギやソルガムを生育させて畑に鋤きこむことは、堆肥を他所から運んで畑に散布してゆくことと同じ効果が期待できます。ライムギやソルガムなど、土作りを目的として生育させる植物のことを「緑肥」と呼びます。まさしく、緑色をした堆肥です。
緑肥を育てている畑では、その期間は作物を栽培することはできません。小林農場の畑には土が固くて作物が生育しにくい区域がたくさんありますので、その区域ではしばらく作物を栽培することを休んで、土が柔らかくなるまで緑肥を生やしておこうと思います。
土作りは時間がかかるもので、固い土が柔らかくなるまでに、5年間は緑肥を生やし続ける必要があると思います。緑肥の効果を確認できるのは5年後です。作物が育ちにくい土でも旺盛に育ち、その生育の勢いは雑草さえもかなわず、種を播いてさえおけばその後は農家が何も世話をしなくても繁茂する緑肥の強い生命力が土を変えてくれると信じてみます。
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