お金になる作物、ならない作物 令和2年9月17日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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お金になる作物、ならない作物 令和2年9月17日
朝夕は日毎に涼しくなってまいりました。皆さま、いかがおすごしでしょうか。
この夏にモロヘイヤを生協にたくさん出荷させていただくことになり、春には500個ほどのモロヘイヤの苗を育てて畑に植えてゆきました。それでも生協からいただいた注文量を出荷しきれず、出荷量を減らさせていただくことになりました。生協からの大量の需要にお応えするには1000個以上の苗を育てて植えないといけないと思いました。
苗の頃は草のような姿だったモロヘイヤですが、今では立派な樹に育ち、私の背丈と同じくらいの高さにまで伸びています。樹から繁茂している茎葉を1本1本、手で摘みながら収穫してゆきます。9月に入って秋が来るのを感じると樹は花を咲かせ始め、茎葉は筋っぽくなっておいしく食べられなくなります。花が咲くのを合図にして、出荷を打ち切ります。
生協へのモロヘイヤの出荷は8月ですでに終了しているのですが、まだ花を咲かせていないモロヘイヤの樹もたくさんあり、今でも柔らかな茎葉がたくさん収穫できています。おそらく10月に入る頃には全ての樹が花を咲かせると思うので、その前にできるだけたくさん出荷しておかないともったいないです。多くのご家庭でモロヘイヤは好評でしたので、現在の野菜セットには多めにモロヘイヤを入れさせていただいております。
モロヘイヤのような売れる見込みのある野菜のみを大量に栽培すれば、効率的に収入を増やせます。小林農場では50種類ほどの野菜を栽培していますが、全ての野菜の栽培に均等に力を入れているわけではありません。人参、キャベツ、白菜などの需要の高い野菜、つまり「お金になる野菜」は、栽培面積を増やしたりして、手間と時間をかけて栽培しています。その分、他の「あまりお金にならない野菜」の栽培には、手を抜きます。
米は日本人の主食であり、稲は日本で最も大切な作物です。しかし稲、麦、大豆などの粒をかき集めるようにして収穫されるような作物は、手間をかけて収穫したわりにはお金にはなりません。「塵も積もれば山となる」と言いますが、山になるくらいにたくさん粒を収穫するには、かなり広い面積でたくさん栽培しないといけません。田植え機やコンバインなどの機械が必要となり、その燃料費などでお金がかかり、儲けが少ないです。
昔と比べて現代は生活してゆくのにお金がかかるので、農家もお金にならない作物を栽培しようとしません。それで稲の国内の生産量が減っています。しかし長い間、日本人の食生活の主役を担った稲を、お金にならないからという理由で日本人が栽培することをやめていいわけがありません。本当は日本人にとって、金よりも米のほうが大切なはずです。
今月、近所の田んぼでは稲刈りの催しが行われ、みんなで稲を鎌で刈って収穫してゆきます。私も参加させていただこうと思います。小林農場は「お金になる野菜」を栽培するのに力を使い果たして、「お金にならない稲」を栽培する余裕はありません。一人で稲を栽培しようとすると気が遠くなりますが、みんなで協力しながら賑やかに稲作を行うのであれば、私も稲作に関われそうな気がします。収入を得ることが目的ではなく、人々が交流を楽しみながら水田環境を維持してゆくことを目的とした稲作が、各地で取り組まれています。
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