病原菌と暮らす 令和2年7月16日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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病原菌と暮らす 令和2年7月16日
梅雨寒の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
4月にキュウリの種を播いて苗を育てている間に、病原菌が苗に感染してしまったようで、苗の葉にたくさん病斑が現れていました。湿度の高い環境で病原菌は増殖しやすく、特にキュウリの苗は少しでも水を与えすぎたりすると症状が現れやすいように思います。心配でしたが、病斑のある状態のまま、苗を畑に植えてゆきました。その後、キュウリは無事に育ち、今はたくさん実をならして収穫されて、皆さんにお届けできております。
特にトマトはジメジメとした梅雨に病害が発生しやすく、今年の梅雨にもトマトに病原菌が感染して疫病が発生して、下葉がヤケドをしたように真っ黒に枯れてしまいました。回復するかどうか、しばらく様子を見たいと思います。去年も同じような症状が発生していましたが、梅雨が明けて真夏の日差しが降り注いで乾燥すると症状は止まり、病害を受けたことによって収量は減りましたが全滅はしないで、実が赤く熟してくれていました。
病害対策では、作物のまわりの風通し、日当たりを良くして、病原菌が繁殖しすぎないように気遣います。病原菌はどこの畑にも存在しているので、完全に感染を防止することは難しいですが、作物が健全に育っていれば、感染しても症状が重たくなりにくくなります。
病原ウイルスはアブラムシなどの害虫に寄生して、アブラムシが好んで群生するソラマメなどの作物にも感染します。小林農場のソラマメも度々、感染症にかかって全滅していました。この春はアブラムシが群生している茎葉を早めに丸ごと取り除いて畑の外に持ち出して感染を未然に防いだので、ソラマメが無事に育ってたくさん収穫できました。
ウイルスとはとても不思議でおもしろい存在です。細菌などの生き物と違って、ウイルスには細胞がありません。とても小さな粒子であり、実は生き物とは違います。しかし遺伝子だけは持っているので、生き物ではないのに増殖することができます。細胞はないので自分の力だけでは増殖できず、生き物の体内に侵入して生き物の細胞を借りながら増殖してゆきますが、その過程で生き物の体を傷つけて感染症を発症させることもあります。
生き物も感染症にかからないように免疫を発動して体内に侵入してきたウイルスに対抗します。ウイルスも、感染症であっさりと生き物が全滅すれば宿主を失って自分達まで全滅してしまうので、生き物と共存しながら暮らそうとします。家畜や野生動物の体内で大人しく暮らしていたウイルスが何かのきっかけで人間に感染するとさらに多くの人々に感染が広まって一時期は混乱しますが、いずれは人間とも共存するようになって落ち着きます。
無数のウイルスがどこにでも存在し、普段から生き物はウイルスと接触しながら暮らしています。ほとんどのウイルスは生き物に無害で、中には生き物が生存してゆくために必要な遺伝子を他所から持ち運んでくれるような有益なウイルスも存在するようです。病気を引き起こす菌やウイルスばかりに目を奪われていると全ての菌やウイルスが悪者に見えて、過剰に消毒をして有益な菌やウイルスまで殺してしまいます。人間の体は様々な菌やウイルスを体内に取り入れながら築かれてきたことを忘れないようにしたいです。
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