端境期に改めて想う「自給」 令和2年5月7日
野菜セットには野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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端境期に改めて想う「自給」 令和2年5月7日
日中は汗ばむほどの陽気です。皆さま、いかがおすごしでしょうか。
3月下旬から5月上旬にかけては、1年で最も収穫できる野菜が少なくなる「端境期(はざかいき)」です。今年の5月は特に、出荷できる野菜の種類が少ない厳しい状況です。
春のレタス栽培は今まで小林農場で失敗したことがなく、「どんな畑で作っても、春のレタスはよく育つ」という「神話」がありましたが、この春は初めて春レタスが不作となり、「神話」が途切れました。土に肥料が不足していたのでしょう。サニーレタスは大きくならず、結球するはずの玉レタスがいつまで経ってもなかなか結球してくれません。
全体的に畑の作物の生育に勢いがなく、その周りに生えている雑草すら元気がないように見えます。今までできるだけ肥料を畑に入れることを控えてきたので、土が肥料不足に陥っているのかもしれません。そろそろ積極的に堆肥を畑に散布して肥料を補ったほうが良いのかもしれません。人間の体も、食べすぎれば成人病にかかりやすくなりますが、「やせればやせるほど良い」と妄信して過剰に食事を控えれば、元気が出なくなります。
小林農場は、身近な地元で入手できる原料で作られた堆肥を利用してゆきたいと考えています。地元の堆肥センターでは、地元の家庭や施設から排出されている生ごみや地元の畜舎から排出されている家畜フンなどを回収して堆肥を作成しています。地元から排出されるゴミを堆肥の材料として有効に利用してゆく循環型の取り組みを町も支援して堆肥の費用を助成してくれるので、小林農場もこちらの堆肥を利用させてもらおうと思います。
私も、畑に隣接している雑木林からかき集めた落ち葉などを利用して、自分で堆肥を作っています。堆肥を自分で作るには手間がかかり、大量に堆肥を自給することはできませんが、堆肥を購入するだけではなく、自分で堆肥を自給してゆく技術も遺しておきたいです。
去年の夏に収穫されたジャガイモを、5月まで出荷し続けてきました。長い間、貯蔵してきたため、イモの水分が抜けて皮がシワシワとしぼんでしまい、イモの見た目がみすぼらしくなっています。中身の味はおいしく、見た目が良くないという理由で捨ててしまうにはもったいないので、見た目は大目に見ていただくよう、皆さんにお願いしてまいりました。
スーパーでは全国各地から見た目の良い野菜を取り寄せて棚に並べていますが、小林農場は自分の畑の中で自給できる野菜のみを出荷して、食材を身近に自給自足してゆく大切さを皆さんにお伝えしてゆきたいと考えています。今の時期は野菜の端境期で、シワシワのジャガイモすら大事に食べてゆきたい時期でした。しかし、イモの中身にも傷みが生じ始めてきて、さすがに商品として出荷してゆくには限界を迎えていますので、出荷を終了したいと思います。余っているジャガイモを蒸し芋にして、自分のおやつにしようと思います。
新型コロナウイルス禍によって海外との輸出入が危うくなり、食糧を国内で自給してゆくことの大切さに多くの人が気づきました。緊急事態宣言によって多くの人達が自宅で料理する機会が増えて、直売所では野菜がよく売れています。国産野菜がこれだけ必要とされている時期に自分が出荷できる野菜の量が少ないのは、専業農家として歯がゆいです。
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