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2020年9月 5日 (土)

旅をして姿を変える種    令和2年2月6日

野菜セットには、野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。

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旅をして姿を変える種    令和2年2月6日

余寒の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  立春を迎え、種まきの時期がやってきました。今年はおいしくて健康に良いと評判のケールの種も、初めて播いてみました。茎が高く伸び、先に大きく開いた葉を食用とします。ケールはとても古い時代に地中海沿岸で栽培が始まったらしく、それから長い年月をかけて、つぼみが大きく発達したものがブロッコリーやカリフラワーへと進化してゆき、葉が丸く巻いて結球していったものがキャベツへと進化していったようです。

  同じキャベツの中でも、環境の違う土地で栽培を続けていったことにより、さまざまな品種が生まれました。暑い土地で栽培して種を採り続けてゆけば暑さに強い品種へと進化してゆき、寒い土地で栽培して種を採り続けてゆけば寒さに強い品種へと進化してゆきます。葉が柔らかいもの、葉が厚いもの、葉の色が赤いものなど、多様な品種が生まれました。

  人類が農業を始めて1万年間、作物の種は人の手によって採られ続けて、その種が人から人へと渡されて他の土地へも持ち込まれて、その作物はその土地に適した姿へと進化してゆきました。こうして多様な野菜、多様な品種、そして多様な遺伝子が生み出されて、現代を生きる私達は多様な野菜の多様な味を楽しむことができます。

  「作物の多様性」こそ、人類が食糧を確実に確保してゆくために重要と考えられています。特徴の違うさまざまな遺伝子が存在していれば、異常気象で全作物が全滅するような危険を回避できます。特に異常気象が目立つ現在では、さらに作物の多様性が重視されます。

  しかし近代農業では、農家は自分で種を採る手間を省いて大手の種苗会社から種を購入することが多いです。大手の種苗会社だけで新たに生み出せる品種の数はそんなに多くはありません。農家が自家採種をやめることで、世界の作物の多様性が減少してゆきます。

  小林農場では、自分でできるだけ作物の種を採るように試行錯誤してきました。先日、「種の交換会」が行われて、私も小林農場で採った種を持参いたしました。この交換会では、農家が自家採種した種を持ち寄り、自分のほしい品種の種を交換し合います。そこで新たに入手した種で作物を育てて、自分の畑でもその種を採り続けるようにします。やがてその品種は自分の畑の自然環境に適した遺伝子を獲得して、新たな品種へと進化してゆきます。

農家が自分たちで種を採るようになれば種苗会社が販売している種が売れなくなってしまいます。種苗会社などの新品種の開発者の利益を保護するために、日本政府は農家などに対して「自家採種の規制」を強めています。種苗会社などが開発して登録を申請した「登録品種」から無断で種を採ると、「開発者が開発した商品を盗用した罪」として罰則を受けることになります。種苗会社が開発した品種から種を採るのが難しくなってきています。

政府の方針は「資本主義の世界」では大切ですが、多様性を重視した「生命の世界」では必ずしも正しくありません。「種の交換会」などでは、全ての農家が「新品種の開発者」となり、そして開発された品種の種は開発者によって独占されるのではなく、他の開発者とお互いに分け合いながら作物の多様性を維持してゆこうという考え方に基づいています。

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