「乾季」の畑にて 令和1年8月22日
野菜セットには、野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、数か月前の過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。
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「乾季」の畑にて 令和1年8月22日
晩夏の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
6月から7月の終盤まで、関東地方はお日様が顔を見せない曇天が続き、記録的な日照不足によって農作物の生育が停滞しました。梅雨が明けると一転して、地表のあらゆる水分を蒸発させてしまうような強烈な日差しが連日降り注ぎ、災害級の猛暑に見舞われました。
栃木県は雷雲が発生しやすい地形に位置していて、昼に青空が広がっても夕方になると急に冷たい風が吹き始めて雲が厚くなって辺りが暗くなり、激しい雨が降ってきます。強烈な日差しにさらされ続けてきた大地は雨で冷やされ、暑さが和らぎます。そんな栃木の真夏の風物詩である夕立が、最近の数年間は減ってきているように感じています。
作物の種はたっぷりと水分が与えられないと発芽しませんので、雨が降る時を狙って畑に種を播きます。ところが今年の夏は小林農場の畑には梅雨が明けてからずっと、待てども待てどもまとまった雨がやって来ませんでした。畑は乾き、これでは種は発芽できません。
冬に収穫・出荷する人参は、8月上旬のうちに種を発芽させておかないといけません。お盆を迎える頃に台風10号が日本列島に上陸するという予報が出され、どうやら確実に雨が降るみたいでしたので、お盆の数日前に人参の種を畑に播きました。人参の種を播くには遅い時期で、これで発芽に失敗すれば冬に人参が出荷できなくなります。
失敗の許されない人参の種播きでしたので、最も保水力があって種を発芽させやすい畑を選んで種を播きました。この畑には白菜を栽培する予定でしたが、土壇場で変更しました。小林農場の畑は粘土質で固く、確実に種を発芽させやすい畑はけっこう少ないです。
いっぽう、育苗ハウスの中で育てていたキャベツや秋キュウリなどの苗もすっかり大きくなり、早く畑に植えないといけませんでしたが、雨が降らずに乾燥しきった畑に植えてもすぐに枯れてしまいますので、雨がやって来るまで植えるのを我慢していました。お盆に台風10号がやって来るという予報を確認してから、苗をいっせい畑に植えてゆきました。
ところが台風10号は強い風を吹かせるのみで、期待していた恵みの雨はほとんど降りませんでした。台風の後には暖かな空気が流れ込んできて猛暑となり、すでに畑に植えられた苗の葉はしおれてしまいました。しかたなくタンクに水を入れて畑まで持って行って自分で一つ一つの苗に水を与えましたが、それでも秋キュウリの苗の半分は枯れました。あと一日早くかん水してあげられれば、苗を守ってあげられたかもしれません。
今週の火曜日から待望のまとまった雨が長い時間降り続き、パサパサに乾燥していた畑が約1か月ぶりに潤いました。これで生き残った秋キュウリの苗も無事に根を張るでしょう。遅ればせながら人参の種も少しずつ発芽して、地表に新芽が現れ始めています。
お盆がすぎれば秋雨前線が日本列島を覆うようになり、雨が多くなります。この数年間は9月になると曇天が続いて日照不足に陥りやすいです。最近の日本の季節は、まるで東南アジアの気候のように、曇天ばかりの「雨季」と全く雨が降らない「乾季」の二つの極端な気候が交互にやってくる傾向があるように感じます。
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