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2019年8月12日 (月)

奥深き品種育成の世界   平成31年4月5日

野菜セットには、野菜といっしょに「農場通信」もお配りして、野菜栽培の様子や農場の考え方などをお伝えしてしております。このブログでは、数か月前の過去の農場通信を公開してまいりたいと思います。

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奥深き品種育成の世界   平成3145

春風駘蕩の頃、皆さま、いかがおすごしでしょうか。

  小林農場は今後、できるだけ店から作物の種を購入するのではなく、農場で育った作物から自分で種を採るようにしたいと考えています。何年も小林農場で自家採種しながら品種を育成して、小林農場でしか育たない品種の野菜を皆さんにお届けできればよいです。

  里芋の自家採種は簡単で、数年前から行ってきました。皆さんにお届けしている里芋が、そのまま種イモとしても利用できます。春にそれらを畑に植えれば芽が出て生育します。

  一昨年、秋に収穫された里芋を貯蔵穴に埋めて防寒しながら冬の間貯蔵していたのですが、貯蔵穴から里芋を取り出してみたら多くのイモが傷んでしまっていて、ほとんど里芋を出荷できませんでした。種イモの量も十分に確保できず、去年の春は店からも種イモを新たに購入して、自家採種できたわずかな種イモといっしょに畑に植えました。

  去年も秋に里芋を収穫し、冬に貯蔵穴に入れて貯蔵し、そして貯蔵穴から取り出してみたら前年と同様に、多くのイモが傷んでいました。でもよく見ると、傷んでいるのは私が自家採種した種イモから育てたイモのみで、店から購入した種イモから育てたイモは無事に貯蔵できていました。どうやら、私が選抜した種イモに問題があったようです。

それまで私は、傷がついて商品にはならないようなイモを種イモとして利用することが多かったです。今年は無事に貯蔵された里芋の中から最も恰幅が良くて立派な姿をしたイモを種イモとして選抜してみました。本当はこのような立派なイモを皆さんにお届けしたいのですが、出荷を我慢しました。貯蔵性があって立派なイモが親なので、その遺伝子を受け継いだ次世代の里芋も貯蔵性があって姿が立派なイモに生育しやすくなるでしょう。

ただ、人参の自家採種に取り組んできたベテランの農家の方がお話をされていましたが、形の美しいスラリとした人参ばかりを選抜して数年間種を採り続けていたら、やがて全く人参が生育しなくなってしまったらしいです。同じような形をした人参の遺伝子のみを遺そうとすると、次の世代の遺伝子が単純になりすぎて、生命力が弱くなるらしいです。美人な人参だけでなく、ずんぐりとした太々しい感じの人参などもいっしょに選抜したほうが、次の世代の人参の遺伝子は多様性に富み、生命力に溢れて元気に生育するようです。

  「自分が求めている姿をした作物の遺伝子のみをたくさん遺したい」と、「多様な遺伝子を遺して作物の生命力を高めたい」という、相反するような2つの希望を両立させていかないといけませんが、かなり熟練した知見が必要になってゆきます。どのような姿をした作物を選抜すればよいのかを的確に判断するのは、私が思っている以上に奥が深そうです。

やはり種苗会社が総力をあげて育成してきた品種のほうが、私が片手間で育成してきた品種よりも安定していて優れています。農場経営を安定して続けてゆくために、種苗会社から購入した種を主に使用したいと思います。私が自家採種した種で育てた作物と、種苗会社から購入した種で育てた作物の生育の様子を比較しながら、少しずつ自分で優秀な品種を育成してゆけるよう、知見を深めてゆきたいと思います。

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