種の気分 平成29年7月13日
種の気分 平成29年7月13日
盛暑の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか。
人参の種まきの時期を迎えています。夏の7月、8月に種播きされる人参は、10月から収穫が始まり、年を越して次の年の3月まで収穫されてゆきます。
人参の種は神経質で、良い条件が揃わないと発芽しません。種は乾燥を嫌うので、たっぷりと水分を与えなくてはいけません。かん水施設のない小林農場の畑では、雨が降って畑が湿らないといけません。天気予報を確認して、雨が降る直前を狙って種を畑に播きます。
人参の種まきの時期はちょうど最も暑い時期と重なり、梅雨が明けて強い日が連日降り注いで、畑が乾燥しやすい頃です。雨が降るのは1週間に1度ほど。このわずかな好機を逃さぬように、前もって畑をきれいに耕しておき、いつでも種を播ける準備をしておきます。
この時期は、ずっと強烈な日差しが降り注いでいると思ったら、突然、冷たい風が吹き始め、重たい曇り雲が空を覆ったりします。夕立の前兆です。そんな時は仕事を中断して人参の種を持って畑へ直行し、遠くで鳴り響く雷鳴を耳にしながら、大急ぎで種まきをすませます。ときどき間に合わず、雨に打たれながら種まきを強行することもありました。
種を播いた後、播き溝に沿って一輪車を乗せて、タイヤで踏みつけてゆきます。そうすると土と種がよく密着して、種は土中の水分を吸水しやすくなります。
それでも降雨後に強烈な日差しが降り注げば、畑はすぐに乾いてしまいます。そこで、種を播いた畑に、薄っすらとモミガラを散布してあげます。モミガラは直射日光をさえぎって土中の水分が蒸発するのを防ぎ、土を湿った状態に保ってくれます。
人参の種は、光を全く感じない場所では発芽しません。種を播いた後に覆土しますが、覆土が厚くなりすぎぬように、そっとそっと良い塩梅に土をかぶせてゆくよう注意します。
ここまで神経を使って種を播いても、発芽に失敗することがあります。人参の種は神経質なのです。失敗の危険を分散するため、1回だけではなく、何回にも分けて種まきします。
発芽してしばらく経って葉が大きくなれば、込み合っている部分から葉を間引いて葉と葉の間隔を広げ、食用部の根をのびのびと肥大できるようにします。後で間引く手間を省こうとして最初から種と種との間隔を広く空けながら種播きしたことがありますが、多くの種は発芽してくれませんでした。人参の種はすぐ隣の種といっしょに力を合わせて土を押し上げることによって発芽がしやすくなるらしいので、間隔は狭いほうがよさそうです。
幼少期の人参の葉は、ぽつんと孤立しているよりも隣の人参の葉と触れ合っていたほうが、安心して生育してゆくようです。人参の葉は細くて軟弱なので、風などで倒されてしまわぬように、すぐ近くに生えている葉とお互いに体を支え合って生育してゆきます。密植していたほうが足元の土も日陰となり、乾きにくくなり水分が保たれやすくなるようです。
皆さんにお届けする人参は、それよりももっとたくさんの畑より間引かれた人参に支えられながら生育しました。人参の種まきの注意点をもう一つ挙げるとすれば、たっぷりとたくさんの量の種を播いて、仲間の数をしっかりと確保してあげることだと思います。
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