暦の呼び名 平成28年6月9日
暦の呼び名 平成28年6月9日
麦秋の候、みなさんいかがおすごしでしょうか。
農場の麦畑では麦が実り、収穫時期を迎えようとしています。昔からこの時期は「麦秋(ばくしゅう)」と呼ばれています。6月なのに「秋」という言葉が使われるのは、収穫時期を迎えた麦が黄金色に染まり、麦畑は一面、「収穫の秋」のような風景に変るからです。
「梅雨」という言葉も、ちょうどその頃に農家が梅の収穫をすることから名付けられたようです。季節を表す言葉には農作業から生じたものが多いです。関東地方などで梅雨入りする6月10日頃は「入梅(にゅうばい)」と呼ばれています。昔から農家にとって大切な季節の筋目であり、大量の水を必要とする稲にとって恵みの雨が降るこの頃を目安にして、田植えが行われてきました。
入梅を迎えると、高温多湿の気候に弱いレタスやキャベツなどの春野菜は傷みやすくなります。この時期から高温多湿に強いキュウリなどの夏野菜を代わりに収穫してゆけるように、農家は5月2日頃の「八十八夜」に、夏野菜の苗を畑に植え始めてゆきます。
「八十八夜」は、旧暦では一年の始まりとされてきた2月4日頃の「立春」から数えて88日目にあたります。「八」と「十」と「八」という文字を重ねると「米」という文字になり、昔から「八十八」は縁起の良い数字とされています。縁起かつぎの意味もあって設けられた「八十八夜」ですが、実際にこの時期より霜が降りなくなり、霜に弱い夏野菜を畑で育てることができるようになるため、農作業の上で、大切な目安ともされてきました。
麦秋の頃に麦の穂を揺らしながら吹き渡る風を「麦嵐(むぎあらし)」と呼び、この頃に降る雨は「麦雨(ばくう)」と呼ぶようです。昔からご先祖様たちは、季節の筋目やその頃の光景やその時の風や雨に、粋な名前をつけて呼んできました。移り変わる季節をただ漠然とすごすのではなく、目の前の季節の出来事にいちいち特別な呼び名を与えると、一見すると単調で変化のないような日常が、変化に富んだ特別な日々に見えてきます。
今後の野菜セットの内容は、レタスなどの春野菜からキュウリなどの夏野菜へと徐々に切り替わってゆきます。6月下旬の野菜セットにあえて特別な呼び名を与えるとすれば、「衣替えセット」でしょうか。季節の移ろいに従って変化してゆく野菜セットも単調になることはなく、毎回、その季節にちなんだ違った呼び名をつけることができるような、その季節、その時にしか作れない特別な内容なのです。
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