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2016年7月28日 (木)

未知を含んだ奥深き食事 平成28年5月27日

未知を含んだ奥深き食事 平成28年5月27日

向暑の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか。

  作物を育てるために必要な肥料は主に、化学肥料と有機質肥料の2つに分類されます。近年の科学は、作物が生育してゆくのに必要な栄養素を発見してきましたが、作物に必須と思われる栄養素を鉱物などから抽出されて作られたのが化学肥料です。化学肥料に含まれているのは特定の栄養素のみで、例えば作物の生育を調べて窒素が不足していると診断されれば、窒素を抽出して作った化学肥料を与えると、作物の生育が良くなります。

有機質肥料は、米ぬか、家畜フン、わら、落ち葉などの動物・植物由来の有機物を発酵させて作られた肥料です。昔から日本の農家は、身近に手に入る有機物で肥料を作って使用してきました。畑に散布された有機質肥料を作物の根が吸収するには、まず最初にその有機物を土の中の微生物や小動物が分解して、根が吸える状態にする必要があります。

効率が重視されている現在の農業では、散布すればすぐに作物が吸収するので計算しやすい化学肥料の使用量が増加しています。有機質肥料はいつ分解されて作物に吸収されるのか計算しづらく、作るのにも手間がかかるので、その使用量は減少しています。

人の食べ物に例えるのであれば、有機質肥料はお米や野菜や肉などの食材で、化学肥料はサプリメントです。サプリメントは、人の体に不足している栄養素を効率的に補ってくれますが、だからといってお米や野菜を食べずにサプリメントだけで食事をすまそうとすれば、特定の栄養素ばかりを過剰に摂取することになり、人の体はおかしくなります。

サプリメントには科学によって解明されている栄養素しか含まれていません。お米や野菜などの中には、今でも科学者によって発見されていない未知の栄養素もいろいろと含まれていることでしょう。まだ人類が栄養学の知識を持っていなかった大昔の頃から人々に食べられてきた食材の中には、人が人工的に栄養素を抽出したりつけ加えたりしなくても、人の健康を維持する栄養が自然とバランス良く含まれていると考えられています。

  作物に栄養を供給して生育を助けてくれるのは、土の中に暮らす微生物や小動物です。有機質肥料は土の中の生き物たちのエサになります。土の中に多様な生き物を増やしてゆくことを、農家は「土作り」と呼んでいますが、作物にすぐに吸収されて土中の生き物たちのエサにはならない化学肥料には、「土作り」の効果はあまりありません。人の体も普段からちゃんとした食事をとらないとサプリメントに依存し続けなくてはいけなくなりますが、畑も有機質肥料を散布して土の中に豊かな生態系を築かないと、ずっと化学肥料に依存しなくてはいけなくなります。

有機質肥料の中でも微生物などの小さな生き物による複雑な食物連鎖が繰り広げられ、肥料は「生命の塊」となって畑に与えられます。科学では解明しきれない未知の力を有し、昔から土を作るために使われてきた有機質肥料が、小林農場の作物の主な食事となります。

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