「自然栽培」について考える 平成28年2月4日
「自然栽培」について考える 平成28年2月4日
早春の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか。
去年の秋、地元の飲食店の方より依頼をいただき、ジュース加工用の人参を栽培して飲食店の方に出荷しました。先週、ようやく人参がジュースに加工されて、現在販売中です。小林農場を含めた複数の地元の農家がジュース加工用の人参を農薬を使わずに栽培して、安全性の高い人参ジュースをたくさん作りました。
畑に含まれている肥料が少なければ少ないほど、そこで育つ作物の味は濃くなる傾向があります。今回の人参ジュース作りでは、各農家は農薬だけではなく肥料も畑に散布するのをやめて、「無肥料栽培」を実施して人参の味を濃くすることにこだわってみました。
人が足を踏み入れないような山奥では、植物は人から肥料を与えられなくても生育して、森林を形成します。本来、植物は肥料を与えられなくても自生する力を持っています。
現在の農業では、肥料の与えすぎによって作物や土の栄養過多の障害が目立つようになってきました。人が余計な肥料を与ないほうが作物は自分の力で健全に育つという考え方から、「無肥料栽培」がにわかに脚光を浴び始めています。肥料に頼らず自然界の力のみで作物を育てるという意味で、「無肥料栽培」は「自然栽培」とも呼ばれています。
ただし、野菜は人の手助けを受けながら種を残してきた植物で、野原で人の手を借りずに自生できる野草とは違います。野菜は人に肥料を施されないと健全に生育できない場合が多いです。作物が肥料を必要としているのに「無肥料」にこだわって肥料を与えずにいれば作物はうまく育ちませんし、そのようなやり方を「自然な栽培」とは呼べません。
時間をかけて土作りをしっかりとやれば、やがて作物は肥料を施さなくても健全に育つようになります。「自然栽培」とは「肥料を与えなくても作物がよく育つ栽培」のことであり、「なにがなんでも作物に肥料を与えてはいけない栽培」のことではないと思います。「肥料を与えてはいけない栽培」はやりたくありませんが、「肥料を与えなくてもよい栽培」を小林農場は目指してゆきたいと思います。
以前に肥料を与えずにカボチャを栽培したことがありますが、ツルが伸びていかず全く収穫できませんでした。カボチャには肥料が必要だと考え直し、去年は肥料を与えて栽培したら、ちゃんと収穫できました。
いっぽうで今までの私の経験では人参はそれほど肥料を与えなくても生育してくれましたので、無肥料でも人参が栽培できると判断しました。数年間放置されていた畑を耕して長く休養していたこの畑にジュース用の人参を無肥料で栽培し、ある程度収穫できました。
農家に必要とされるのは観察力と柔軟性です。自分の頭の中で作り上げられた思い込みやこだわりをできるだけ排除して先入観のない目で作物を観察し、作物が肥料を必要としなければ肥料を与えず、肥料を必要とすれば肥料を与え、その時の状況に合わせて柔軟に対応を変えてゆく。そのようにして作物の気持ちを読み取り、その気持ちに寄り添うように手掛けるやり方こそが、真の意味での「自然な栽培」なのだと思います。
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