稲穂の香りをかぎたくて 平成27年10月8日
稲穂の香りをかぎたくて 平成27年10月8日
秋の夜長、みなさん、いかがおすごしでしょうか。
9月、田んぼでは稲が収穫の秋を迎えます。小林農場には田んぼがないので、私は毎年、ご近所の農家の方の田んぼで行われる田植えや稲刈りに参加させていただいています。今年の稲刈りは私を含めて30名ほどの人が参加していました。
その前日には雨が降り、田んぼはかなりぬかるんでいて機械を入れることができない状態でした。稲刈りはたいてい機械を使用して行われるものですが、今年の稲刈りは機械をいっさい使わず、人の手のみで行われました。
鎌で刈り取られた稲を麻ヒモで結んで束にします。田んぼの空いた空間には稲架(はざ)が設けられてゆき、そこに束ねられた稲をかけてゆきます。この一連の作業をそれぞれの参加者が自ずと分担し合って、滞ることなくスラスラと行われてゆきました。
まさしく流れるような「人海戦術」。本当は私は午前中だけ稲刈りに参加するつもりでいたのですが、機械を使わず人手のみで稲が次々に稲架にかけられてゆく様子がとても愉快で楽しくなってきて、その日は畑仕事をお休みにして午後も参加させていただきました。
ずっと働いていても、全く体が疲れませんでした。田んぼの中で自分の心身が躍動していることをはっきりと感じられました。他の参加者のみなさんも楽しみながら働き続け、全ての田んぼの稲刈りを人の手のみで1日で終わらせることができました。
機械がなかった頃は、農家がお互いに手を貸し借りし合いながら、「人海戦術」で田植えや稲刈りを行っていました。そんな昔の風景が再現されたような楽しい稲刈りでした。
現在の稲作は、田植えも稲刈りも、農家が機械を操作してあっという間に終わらせます。小林農場でも、私がたった一人でたくさんの野菜を栽培してみなさんにお届けしてきましたが、それは軽トラックやトラクターなどの便利な機械があるおかげです。同時に、機械の登場によって、農家同士がいっしょになって仕事をする機会は少なくなってゆきました。
インターネットを所有すれば、わざわざ外に出かけなくても自分の部屋で情報を入手できるし買い物もできるし、娯楽も楽しめます。最近は人と人との間の絆が薄れてきていると言われていますが、機械やコンピューターが発達して人と人が顔を合わせる必要がなくなってゆけば、必然的にそのようになっていくでしょう。
このような時代でも、各地で田植えや稲刈りが催し物として行われると、多くの一般人が家族連れで参加したりします。自然との触れ合いや多くの人々との交流を求める気持ちは、いつの時代でも人々の心から消えてなくなることはありません。田畑は作物を生産するだけではなく、自然や人々との交流の場にもなり、絆を結い直してゆく力があると思います。
私も自分でお米を栽培したいとずっと思っていますが、野菜作りだけで精一杯で、たった一人で田んぼを管理してゆくことは無理です。でも、私と同じように自分たちでお米を自給したいと思っている人々が集い、みんなでいっしょに田んぼを管理して負担を分かち合い、収穫の恵みも分かち合えるような稲作ができればよいと思っています。
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