折り合いのつく位置を探して 平成27年2月27日
折り合いのつく位置を探して 平成27年2月27日
木々の芽もすっかり春支度を整えたようです。みなさん、いかがおすごしでしょうか。
3月も間近に控え、気候は少しずつ春めいてきました。先日、葉物野菜を収穫してみると、残念ながら多くの葉の株元が傷んでいました。寒くて枯れたのではなく、温度が上がって蒸れてしまったのだと思います。冬の間ずっと葉物野菜に掛けていた防寒用の不織布を外して、回復してくれるかどうか、様子を見ています。
冬を越して気温が上がれば、今まで低温下で貯蔵されてきた作物も、貯蔵が効かなくなって傷んでいきます。春先の数か月、気候が春らしくなればなるほど、出荷できる作物の種類は増えるのではなくて、減っていきます。
昨年の秋に種がまかれて冬を越してきた葉物野菜が寿命を迎える3月下旬頃から新たに葉物野菜を収穫していけるように、2月上旬に新たな葉物野菜の種をまきました。まだ寒さの厳しい時期で、露地に種をまいても寒くて発芽はしません。そこで、種をまいた畝の上にビニールをトンネル状にかけて、畝を保温しました。
ビニールなどの資材を使えば、やがてそれらはゴミとなります。小林農場一軒だけのゴミはたいした量ではなくても、どの農家もビニールを使えば、そのゴミの総量はかなりの量になると思います。ゴミの処理の問題が深刻している現在、本当は農作業に資材を使うことはできるだけ控えるべきでしょう。
資材のなかった昔の時代は、収穫できる新鮮な野菜が不足する時期が当たり前にありました。今のように一年中、新鮮な野菜が不足せずに手に入る状況は、本当は不自然です。
でも、小林農場は一年中、種類数をそろえて野菜を出荷していくことに力を注いできました。小林農場の野菜を食べてくださってくれる方々との間に信頼関係を築いていくには、野菜を休まずに出荷し続けていくことが重要だと考えています。春先にも出荷していくには、トンネル栽培が不可欠だと考えています。
地球環境問題を少しでも改善してゆきたくて自然と調和する農業を目指す私としては、トンネル栽培で作物を育てることにモヤモヤとした感情は残ります。でも、トンネル栽培で育った作物が収穫時期を迎えて、春先に種類数豊かな野菜セットを作ってみなさんに喜んでいただければ、やっぱりトンネル栽培をして良かったと思えます。
ハウスで暖房を使って栽培すればもっと楽に多くの作物を作れるかもしれません。しかしトンネル栽培とは比べものにならないほどの大量の石油資源を消費しなくてはいけません。それにハウスであまりに旬から外れた不自然な作物を栽培しても、それを食べる人の健康に良いことはないと思います。小林農場はハウス栽培に力を注ぐつもりはないです。
「自然環境と調和した農業をしたい」という想いと、「多くの人達に年中絶え間なくたくさんの野菜をお届けしていきたい。」という想いは、時々、相反します。農業はバランス棒を握りしめながら綱渡りをしているようなもので、どちらかの想いに偏りすぎると、バランスを崩して落ちてしまいます。そんな緊張感が、常に私の姿勢を正してくれます。
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