戦争と平和と農業と
戦争と平和と農業と 平成26年12月30日
大晦日を明日に控え、みなさん、いかがおすごしでしょうか。
先日、栃木県宇都宮市で、農業関連の話題を取り扱った映画を上映する「農業映画祭」が行われ、私も足を運んできました。今回上映された映画は、東ティモールの独立戦争について描かれたドキュメンタリーでした。
東南アジアの南海に浮かぶ島国・東ティモール。1970年代にインドネシアからの独立を宣言するものの、インドネシア政府はそれを認めず、あまりにも酷い弾圧を東ティモールの住人に加えていきました。住人たちはそれに抵抗して、戦争となりました。
虐殺、略奪、暴行、強姦、あらゆる財産の破壊。独立を勝ち取るまでの数十年間に及ぶ長い年月、東ティモールの人々は言葉では言い尽せぬ苦しみに耐え抜いてきました。
戦争によって多くのものをなくした東ティモールの人々が希求したのは平和でした。彼らは平和を築いていくために、憎悪を増大させていくような報復の連鎖を断ち切り、自分たちの家族を殺した相手を許していく決意をしました。インドネシアへの恨みを口にしようとしない彼ら彼女らの必至な生き様に触れて、私の心は震えました。
この農業映画祭の主催者は、私と同じように、新規に就農した農家のみなさんです。農業と全く関係ないように思える東ティモールの独立戦争を描いた映画をあえて上映作品として選んだあたりに、主催者の農家のみなさんの農業に対する姿勢が現れていました。
悪化していく自然環境、広まる貧富の差から生じる不平等と貧困層、世界中で絶えることのない戦争、お金ばかりが優先されて軽んじられていく心と命・・・。やり切れぬほど深刻な問題を抱えてしまっているこの世の中で、自分はいったい何ができるだろうか?そう真剣に考えた時に農業に解決の糸口を求めて農業を始める人は少なくありません。
現在、世界人口は爆発的に増加して、今も「人口爆発」は収まりません。地球上の限られた食糧と資源で増大していく人口を賄っていくために、人類は選択を迫られています。
限られた食糧と資源をめぐって世界中の人々が争奪戦を繰り広げ、弱い者を淘汰して、強い者だけが生き残る世の中にするのか。それとも人々は自分たちの足元の大地で食糧と資源を自給自足していく技術を高めて、各々各地で自ら必要な物を産み出していくのか。
もし後者を選ぶのであれば、私たちは大地を敬い、大地が与えてくれる恵みに礼を尽くしていくことが大切となります。東ティモールでは大地に神々が宿ると信じられ、大地との絆を大切にされてきました。激しい弾圧の中でも平和への希望を見失うことのなかった人々の強さは、ティモールの大地が人々に与えてくれたものだったのでしょう。
大地の恵みに生かされながら歩んできた農業は、今までずっと、地域内の自給自足を可能にしていける知恵を蓄えてきました。それは他から奪わなくてもよい知恵でもあり、争いを回避していける知恵でもあります。
農業をすることは平和を築いていくこと。農業とは、平和への祈りのようなもの。来年こそは世界中が平和でありますように。みなさん、よいお年を。