いい日 旅立ち
いい日 旅立ち 平成26年5月27日
向暑の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか。
人間も、子供の頃に与えられた経験がその後の人生に大きく影響していくように、作物も幼い苗の頃に順調に生育してくれれば、畑に定植された後は元気に育ってたくさんの実りをもたらしてくれます。「苗半作」という言葉がありますが、作物栽培は苗作りこそが大事と考え、農家は我が子を育てるがごとく、苗の管理に神経を注いでいきます。
苗を種苗店で購入する農家が増えてきているようですが、小林農場では種から苗を育てるようにしています。育苗に手間がかかっても作物の半生に関わりたいと思っています。
3年前の福島第一原発事故以降、福島県と隣接する栃木県の山林も放射能汚染を受け、今でも山林から収集した落ち葉を作物栽培に使用するのには注意が必要です。それまでは苗作りの床土は落ち葉を発酵して自分で作ってきましたが、試しに落ち葉の代わりにもみ殻で床土を作ってみました。今年、初めてもみ殻床土を苗作りに使用してみました。
今までどおりに作った落ち葉床土に種を播いて育てた苗と、もみ殻床土に種を播いて育てた苗の生育具合を比較しながらじっくり観察。最初の頃はどちらも順調に発芽して葉を1枚、2枚とふやしていき、生育に差はなく、安心していました。
ところが次第に、順調に生育していく落ち葉床土の苗と生育が停滞していくもみ殻床土の苗の差がはっきりとしていきました。もみ殻床土の苗は葉色が悪く、茎は細いままひょろりと伸び、いかにも弱々しいのです。
落ち葉床土で育てた苗だけ畑に定植して、もみ殻床土で育てた苗を定植することは見合わせました。近所の農家の方がどんな状態の苗でもかまわないからほしいとおっしゃってくれましたので、その農家の方にもみ殻床土の苗をさしあげることにしました。
自分で育てた苗なのだから当然、自分の畑に植えて自分で育てたかったです。でも、畑仕事が忙しくなり、先の見通しが明るくない苗にまで手間をかけている余裕はありません。苗の数が足りなくなった分、ホームセンターで良い苗を見つけて購入して植えました。
やはり落ち葉に代わる良質な床土の材料はないのでしょう。今後も落ち葉で作った床土を放射能検査して安全性を確かめた上で使用していきたいと思います。
今春の苗作りもいろんなことがありました。今は苗が次々に畑へ巣立っていく時期です。足の踏み場を見つけるのも大変なほどたくさんの苗で埋まっていた育苗ハウスも、苗が畑に定植されるたびに空間ができていき、すっきりするやら、さみしくなるやら。
ナスやピーマンなどの夏野菜は低温に弱いので、一度でも霜が降るような低温に当たってしまえば致命傷を受けます。霜が降りなくなる時期を待ってから、畑に苗を植えます。私は、夏野菜の定植は5月15日以降と決めています。
定植されたばかりの苗が根を張ってうまく畑から水が吸えるようになるまで数日間かかります。土が乾燥していると苗はしおれてしまうので、天気予報を見て雨の降る数日前を狙って苗を畑へ送り出します。苗が旅立つのに良い日を見極めていく今日この頃です。
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