野菜の一生と付き合う
野菜の一生と付き合う 平成26年3月17日
解雪の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか。
季節は冬から春へと移り、野菜セットの内容も変わっていく時期です。寒い時期に貯蔵していた大根や白菜も気温が暖かくなると貯蔵が効かなくなり、出荷終了となります。
畑から室内に移して防寒して貯蔵していた白菜も、春を感じて茎を伸ばしてつぼみをつける準備を始めています。みなさんの台所でも、白菜を料理せずにそのまま常温に置いておくと、やがて白菜の頭が割れて、中から太い茎がニョキニョキと伸びてくるでしょう。
作物は人に収穫されて土から離れていっても、なお死なずに生き続けます。みなさんに私がお届けしている野菜は、亡骸ではなくて生き物です。みなさんに料理されて食べられる日が来るまで、みなさんの住まいの中でひっそりと呼吸をしながら生きています。
去年の6月から10月にかけて収穫されたじゃがいもは、小林農場の暗室の中で長期間保存され、今年の4月くらいまで出荷される予定です。
現在、お届けしているじゃがいもの中には、少し中身の煮えにくい固いいもが混じっています。おそらく、去年、収穫時期が遅れてしまったことが一つの原因ではないかと推測しています。今年は収穫時期が遅れないようにすれば改善されると思います。
ただ、じゃがいもは長期間保存されていくうちに水分を失って萎びてゆき、煮てもほくほくとした食感がしなくなるのが自然の摂理です。人間と同じで、年をとれば肌に潤いや張りをなくしてシワが目立っていきます。現在出荷しているじゃがいももシワがはっきりと確認できますが、この先、さらに肌がシワシワになります。
寒くなると、じゃがいもは凍ってしまわぬように、体内のデンプンを糖分に変えて身を守ります。よって、寒い時期を越したシワシワなじゃがいもの味は甘くて濃厚になっていく傾向があります。シワの多いイモにも、若いイモにはない味わいがあります。
スーパーでの店頭では、シワシワで見た目の良くないじゃがいもが並ぶことはありません。3月には、暖かな九州南部で収穫され始めている新じゃがが栃木県に入荷されています。現在はスーパーで、常に若々しいじゃがいもを購入することが可能となりました。
じゃがいもにシワをつけさせないように、収穫されたイモに放射線や除草剤を浴びさせて「若さ」を長く保つ技術があるようで、実際にそのような処理がされたじゃがいもが販売されていることもあるようです。そのようなじゃがいもの安全性には疑問があるし、「老い」を否定する「アンチエイジング」の考え方そのものが、私は好きではありません。
常に若々しい作物ばかりを食べるのではなく、日を追うごとに変化していく作物をいただくこと。それは「作物の一生と付き合う」と言い換えられるかもしれません。地場の食べ物を無駄に捨てることなくできるだけ長く食べ続けていく知恵がここにあります。
6月になれば、小林農場でも若さあふれるホクホクとした食感の初々しいじゃがいもが再び収穫されます。じゃがいものみずみずしい若い頃から味の濃くなる晩年まで、じゃがいもの一生とお付き合いしていただくことに豊かさを感じていただければ、嬉しいです。
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