自分で種を採るということ
自分で種を採るということ 平成26年2月17日
春とは名ばかり、余寒の厳しい毎日です。みなさん、いかがおすごしでしょうか。
先日、栃木県内の農家を集めて行われた研修会に参加してきたのですが、そこで「種苗交換会」もあわせて行われました。栃木県の各地域からやってきた農家たちが、自分たちの栽培している作物から採った種を持ちより、お互いに交換します。
ここで他の農家から入手した種を持ち帰り、自分たちの畑に播きます。種から発芽した作物を育てます。収穫時期を迎えた時に、生育が良くて素晴らしい質の食材を生産してくれた個体を選んで、それは収穫せずに残しておきます。そして、その個体がやがて実をならして種をつけたとき、その種を採種します。その種を次の年に播き、また同じことを繰り返します。数年間たつと、その作物は自分の畑の風土に馴染んでいき、その土地でますます生育旺盛で質の良い作物を生産してくれるようになります。
こうして長い間採種されてきた昔からの品種を「固定種」といいます。人類は今まで自分たちで種を採り、多様な風土の中で多様な作物、多様な固定種を生み出してきました。
しかし、現在は自分で種を採る農家は稀で、たいていは種苗会社が新たに開発した「交配種」の種を購入して種を入手しています。私も滅多に自分で種採りすることがないので、「種苗交換会」では他の農家にお分けできる種を持参できませんでした。
「交配種」の作物は見栄えが良く市場で売りやすいので、大部分の農家は交配種の種を購入して栽培し、多くの固定種は姿を消そうとしています。この地球上で栽培されているのはほんの数種類の「売れる品種」だけになり、生物多様性は貧しくなっていきます。
多くの種苗会社は、遺伝子組み換え技術によって改良された種子の開発に力を入れています。これらの種子は種苗会社にはたくさんの利益を与えますが、それらがもたらす自然環境への影響、または、それで育った作物を食べた人の人体への影響などわからないことが多く、安全性に疑問があります。種苗会社に種の生産を任せていたら、いつの間にか遺伝子組み換えされた種しか手に入らなくなる時代が来るかもしれません。
農家が自分の気に入った種を自分で採る必要があると思います。しかし、交配種の種は品質が悪く、自分で種採りしても良い作物を栽培できません。埼玉県や静岡県に固定種ばかりを扱っている希少な種苗店を見つけましたので、さっそくそちらから今年度の春作の種の分を注文して購入し、自分でできるだけ種を採る準備をしています。
交配種の作物と比べ、昔ながらの固定種は味が良い傾向があります。小林農場に固定種の種が導入されていくことにより、農場の野菜がさらにおいしくなるかもしれません。
見栄えが良くない傾向のある固定種の作物は、スーパーの店頭に並べても誰も買ってくれないかもしれません。でも、野菜セットに入れてみなさんにお届けしたら、最初はみなさんもその見栄えにとまどうかもしれませんが、もしその味がおいしければ、次回からは外見を気にせずに受け取ってくださると思います。野菜セットの中にこそ、固定種の作物が生き残れる場所があると思います。
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