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2014年2月27日 (木)

生きものざっくり物語  ムギざっくり

畑に暮らす生きものたちの奥深き生き様をざっくりと物語ります。今回はムギについて。

  今からおよそ1万年前、西南アジアの肥沃な地域でヒトの手によりムギの栽培が始まりました。ムギは腐りにくくて飢饉にそなえて長期間保存ができ、穂にたくさんの実をならして多くの人口の分の食糧を生み出してくれます。それまで狩りなどで食糧を入手してきたヒトは、ムギの栽培の開始によってより容易に、そして安定的に食糧を供給できるようになりました。暮らしに余裕が生まれてくると同時に、ヒトはいろんな道具や神殿を作ったり都市を築きあげたりして、ムギは人類の文明が急激に発展していく礎となりました。

  いろんな種類のムギがありますが、日本に伝わってきたのは主にオオムギとコムギの2種類です。オオムギの実は外側の皮が柔らかくて水を吸いやすく、ヒトはお米と同じようにオオムギの実を蒸したりして食べてきました。お米といっしょに炊いた「ムギメシ」などが一般的に食べられてきました。一方で、コムギの実は外側の皮が固くて水を吸いにくく、粒のままでは料理しにくいです。外皮を取り除くと中の実がばらけて粉になるので、ヒトはまずコムギの粒をすったりついたりして粉にしてから食品に加工していきました。

  コムギを粉にした小麦粉に水を加えて練ると、粉はくっつきあってゴムのような弾力を持った粘りのあるかたまりになります。この時、粉同士が手を結びあって、「グルテン」と呼ばれる、ヒトの目には見えないような小さな物質を形成していきます。このグルテンを多く含む小麦粉を「強力粉」と呼ばれ、水を加えて練ったときに粘り気が強くなります。逆にグルテンの少ない小麦粉を「薄力粉」と呼び、粘り気が少ない性質があります。強力粉と薄力粉の中間くらいの量のグルテンを含んでいる小麦粉を「中力粉」と呼びます。

  小麦粉に含まれているグルテンの量によって違う性質を持つ小麦粉をうまく使い分けることにより、ヒトはさまざまな食糧を小麦粉から生み出してきました。粘り気の強い生地が作れる強力粉を使って生地の形を整え、それを発酵させて焼けば、ふっくらとふくらんだパンができます。粘り気の少ない薄力粉でころもを作って食材にくっつけて火に揚げれば、サクリとした歯ごたえのてんぷらを楽しめます。中力粉を水で練って作った生地をそのまましばらく置いておくと、生地はなめらかになってよく伸びるようになり、おいしいうどんを打つことができます。他にもヒトは小麦粉からラーメン、スパッゲッチ、クッキー、ケーキ、おまんじゅう、お好み焼きなども小麦粉から作りだしてきました。

  ムギは秋に種がまかれ、次の年の6月に収穫されます。冬の間は小さなままほとんど生育しません。しかし、この時に受ける寒さを合図にして、ムギは穂を作り実をならせる準備をします。春なって種を播いてもムギは発芽して生育しますが、寒さを経験していないムギは葉を茂らせるばかりで、穂をつけることはありません。冬の間、まだ小さなムギの根は、霜柱によって地表へと持ち上げられて傷んでしまいます。ムギの根を地中に戻すため、ヒトは愛情を注ぎながらムギを足で踏みつけていきます。冬を越して6月、大きく育って穂を黄金色に輝かせたムギの畑の見事な光景は秋のようで、ヒトは「麦秋」と称しました。ヒトはムギを刈り取った後、穂を棒で叩いたりして粒を取り出し、粒を何日も日に干して十分に乾燥させ、粒に風を送って混ざっているゴミや虫を吹き飛ばし、それから食糧として利用します。

参照  農文協  編/吉田 久  絵/めぐろ みよ  「そだててあそぼう7 ムギの絵本」

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