生きものざっくり物語 ネギざっくり
畑で暮らす生き物たちの奥深い生き様をざっくりと物語ります。今回はネギについて。
植物によって姿形は違いますが、ネギの姿はとても変わっています。ネギの下の部分は淡い緑色、または白色の太い筒のような形をしていますが、この部分は「葉鞘(ようしょう)」と呼ばれています。茎のようにも見えるのですが、実は葉鞘は茎ではなくてネギの葉の部分にあたります。葉鞘の上から先のとがった濃い緑色をした葉が数本伸びていて、この部分は「葉身(ようしん)」と呼ばれています。やはり葉身も葉の一部で、ネギの葉は下部の葉鞘と上部の葉身からできています。葉鞘も葉身も、中身は筒のように空洞になっています。葉鞘では、外側の葉の葉鞘がすぐ内側の若い葉鞘を包み、その葉鞘もさらにすぐ内側の若い葉鞘を包み、葉鞘が何枚も重なってできています。葉身では、内側に丸まりながら生えてきた葉の先がつながって円筒のような形を作ります。そのため、見えている葉身の外側の部分は葉の裏側で、裏側が見えにくい他の植物の葉とはこれまた違います。
葉鞘の一番下から生えている細かなヒゲのように見えるのがネギの根です。では、ネギの茎はどこにあるのか?ネギの茎はとても短く、葉鞘と根の間のわずか1~2cmの固い部分が茎です。ヒトがネギを料理するときに、根といっしょに切り落とされて捨てられる目立たない部分です。しかし、春になってネギが花を咲かせる頃、茎は勢いよくぐんぐんと伸び始め、やがてその先につぼみをつけます。伸びた茎は「花茎」と呼ばれますが、その姿は葉身に似ていて中身も空洞になっていますが、葉身と比べて厚くて固く、しっかりと先に咲かせたつぼみを支えようとしています。
ネギのつぼみには花全体がまとまっておさめられ、丸くて薄い膜に覆われています。この姿が僧侶の頭に似ていることから、ヒトはネギのつぼみを「ねぎ坊主」と名付けました。やがて薄皮が破れて、いよいよ花が姿を現します。花はどれも小さく、その花の集団は子供のいがくり頭に似ていて、あまり華やかではありません。それにもかかわらず、この花にはハチやアブやチョウチョなど、ありとあらゆる虫が蜜を吸いに集まってきて、ネギの受粉を助けます。不思議な魅力を放つ花なのです。
根深ネギは種が播かれてから収穫されるまで9カ月以上もかかります。ネギの栽培中、ヒトはこまめに除草します。ネギの葉は地面を覆わずに上へ上へと生育していくため、ネギとネギの間で雑草が日の光を浴びてどんどん大きくなっていきます。その上、ネギは生育が遅いので、除草されぬまま雑草と競争をすればネギは負けてしまい、その場で消えてなくなってしまいます。
ネギが大きくなるにつれて、ヒトはネギの株もとに土を寄せていきます。土に埋められたネギの葉鞘は、太陽の光を浴びなくなるので、緑色にならずに白いままです。その部分は柔らかくておいしくなるのですが、これを「軟白」と呼びます。また、土を株もとに寄せられることにより、ネギはもっと背を高く伸ばそうとする性質があります。ただし、あまりにたくさんの土を一度に寄せてしまうと、ネギは背ばかりが高くなり、しっかりと太りません。ひょろ長くなったネギは風を受けると折れやすくなってしまいます。よってヒトは、ネギの太り具合を確認しながら、何回にも分けて土寄せをして、葉身の生え際よりも上には土をかぶせないように気をつけます。
参照
農文協 編・小島昭夫、安藤利夫 絵・峰岸達 「そだててあそぼう57 ネギの絵本」
著・稲垣栄洋 絵・三上修 「身近な野菜のなるほど観察記」
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