生き物ざっくり物語 カブざっくり
畑に暮らす生き物たちの奥深き生き様をざっくりと物語ります。今回はカブについて。
その昔、カブの祖先であるツケナが地中海の東の水辺に誕生しました。やがて、地下部を太らせてそこに必要な水分と養分をためこみながら水辺から陸上へと生活の場を移していくツケナの種類が現れました。それがカブです。地下部の根球がヒトに食べられるカブと、葉の部分がヒトに食べられるアブラナやミズナやカラシナなどのツケナ。野菜としての見かけはずいぶん違いますが、カブとツケナは同じ家族に属しています。同じ家族同士の中では植物は交雑して新しい性格を持った植物の種を残すことができます。カブは長い年月をかけていろんなツケナと交雑して、いろんな種類のカブがその土地柄に合わせて生まれてゆきました。
カブは春にも種を播けば生育して収穫することができますが、秋に種を播かれたカブが最も健全に生育します。カブが好んで体を大きく生育させておく時期は秋です。厳しい寒さを迎える冬の頃は生育を止めてじっとしていますが、寒さを感じることにより間もなく春がやってくることを知り、種を作る準備を始めます。春が来て暖かくなり種を作るのに一番良い季節を迎えると、地下部の根球から一気に太い茎をまっすぐに伸ばして、黄色い十字架の形をした花を咲かせて種を作ります。カブと同じ家族のツケナも同じ時期に同じような花を咲かせます。これらの植物はヒトに収穫されなければ、夏の間に種をたくさん地面にこぼし、そして秋になれば種から新たな命が芽吹き、次の一生が始まります。
カブが発芽すると、まず二枚の小さな子葉が地上部で開きます。地上部の子葉と地下部の根の間の短な茎の部分を「胚軸」と呼びますが、この胚軸が後ほど太ってヒトの食用部分となります。収穫された太ったカブの表面はつるりとしていますが、これはカブの茎の部分です。カブの先っぽのほうの細長い部分がカブの根の部分で、そこからさらにひげのような細かな側根(ひげ根)を数本生やしています。太った胚軸は地下部から地上部へ浮き出ようとして、収穫時期になると根球の上部がはっきりと地上部に盛り上がります。一方でカブの根は土の深くまで伸びず、浅い部分から水分を補います。表面が乾かずに水分を保っている土の中で、根球はふっくらと丸みの帯びた豊かな形に育ちます。
ヒトはカブの種をすじ状に播き、発芽して大きくなれば、地下部の根球を太らせるため、葉を間引いて間隔を空けます。あまりに葉の間隔を空けすぎてしまわないように、二,三回に分けて間引いていきます。カブはツケナと比べて葉はか弱く、お互いに葉が触れ合わせて支え合いながら立つため、葉がある程度密生した状態を好みます。
収穫時期を迎えてからしばらく経つと、カブの根球部分の皮は老化して固くなり、一方でその中身は生育を続けて大きくなっていくので、やがて根球の表面が割れてしまいます。また、中身の古い細胞には根から吸い上げられた栄養がいきわたらなくなり、中身がスカスカと空になることもあります。これを「ス入り」と言います。ヒトはカブが収穫時期を迎えたら若いうちに収穫するように心がけます。また、土の水分が不足した時もカブの老化が早まって根球の皮は固くなり、雨など降って土に水分が補給されて根球が生育を早めた時、根球が割れやすくなります。ヒトは土中の水分量が極端に変化することがないように、畑の土を作ります。
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