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2013年12月29日 (日)

生き物ざっくり物語  ハクサイざっくり

畑で暮らす生き物たちの奥深き生き様をざっくりと物語ります。今回はハクサイについて。

無数に種類がある植物たちはどれも、いずれかの植物の仲間に属しています。ハクサイはアブラナ科ブラシカ・ラパと呼ばれる仲間たちに属しています。ブラシカ・ラパの仲間たちはどれも十字架の形になる黄色い花をさかせます。種を生み出す時、雄しべで作られた花粉をハチなどの虫によって違う花の雌しべまで運んでもらいながら受粉します。その花で作られた花粉が同じ花の雌しべについても受粉せず、種が作れないようになっています。なぜなら、自分の花粉で受粉しても同じような子孫しか残せませんが、他の花と受粉すれば自分にはなかった新たな能力や性質をもった子孫を残せるからです。こうしてブラシカ・ラパの仲間たちは、どんな自然環境の中でも生き残っていける多様性豊かな子孫を残してきました。

ブラシカ・ラパに属している植物には、ハクサイの他にもカブ、コマツナ、在来ナタネ、パクチョイなど、日本で古くから暮らしていた作物も含まれます。よってハクサイは、同じ仲間のこれらの作物と簡単に受粉して雑種を産みだします。中国で誕生したハクサイの種が日本に持ち込まれたのは明治時代。当時、ハクサイはまわりで栽培されているカブやコマツナなどと受粉して雑種ばかりが生まれたため、日本では上手にハクサイの種を採れずにいました。そこでヒトはハクサイを海に囲まれた島など、他の作物から隔離された環境の中で種とり用のハクサイを栽培して、ようやくすぐれたハクサイの品種を得られるようになりました。ちなみにハクサイは古い時代に中国で、パクチョイとカブが受粉したことにより雑種として誕生したと言われています。

ハクサイは発芽後の生育の速度が他の作物と比べても速く、発芽後20日で本葉が6枚ほどになり、そこからさらに速度を速めて発芽後40日で本葉18枚くらいに達します。ここまで現れた本葉を「外葉」と呼び、地を這うように地表を覆って日を浴びて盛んに光合成をします。この先から、さらに加速してハクサイの中心から新しく生えてきた葉は、ゆったりと水平に葉を伸ばすことはなく、茎の短くて形の丸い葉が圧迫されながら内側を向いて立ち上って生育します。これらは「球葉」と呼ばれ、次から次にハクサイの内側の中心から生長して、中身がたくさんの球葉でつまったしっかりとした球を形作っていきます。最後は本葉が50枚から70枚ほどになり、ヒトに収穫されます。

その速い生育速度を支えるため、ハクサイは土中よりたくさんの量の肥料を吸い上げていきます。ヒトはハクサイを栽培するときは肥料を多く与えますが、肥料の臭いをかぎつけて虫もたくさんやってきて、ハクサイは虫の食害を受けやすい作物でもあります。

普通の葉物野菜は葉が一枚一枚バラバラなので、寒さに当たるとすぐに凍ったりしおれたりしてしまいますが、ハクサイは葉がぎっしりと巻いているので寒い時期でも保存ができ、葉物野菜の保存食としてヒトに喜ばれてきました。植物の葉には葉脈という水分や栄養分が通る管がありますが、ハクサイの葉は特に葉脈の量が多く、煮込むと葉脈にためられていた水分が大量に抜けて、そのぶんだけ加えられた味がしみ込んでいきます。よって、ヒトは鍋の材料としてハクサイを好んで使います。葉に塩をかければ葉脈から大量の水分が抜けるので葉がしなしなとなりやすく、ヒトは漬物にもハクサイを利用します。

参照 

農文協、編・渡辺穎悦 絵・峰岸達 「そだててあそぼう67 ハクサイの絵本」

著・藤井平司「図説 野菜の生育 本物の姿を知る」

著・稲垣栄洋 絵・三上修 「身近な野菜のなるほど観察記」

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