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2013年12月

2013年12月30日 (月)

迷子の帰れる家

迷子の帰れる家   平成25年12月23日

今年もいよいよ残りわずかとなってしまいました。みなさん、いかがおすごしでしょうか。

  今の時代はインターネットなどが発達して、必要な情報が必要な時にすぐに手に入る便利な世の中になりました。いっぽうであまりに情報があふれすぎて、どれが必要な情報でどれが間違った情報なのか分からなくなってしまいそうになります。

  私たちが暮らしていくには最も必要なものはなんでしょうか?お金でしょう、いいや愛でしょう、いやいや・・・。100人の人がいれば100の答えが出てくるでしょう。

  多様な情報や価値観があふれて複雑化していく現在の中で、それでも進むべき道を自分で選ばなくては前を向いて歩いていくことができません。あまりに世の中が便利になりすぎて、あまりに個人が自由になりすぎて、逆に自分がやりたいことや必要なことを見つけられない人が昔と比べて増えているのではないでしょうか。若い頃の私もそうでした。

  でも、誰もが必ず必要としているものもあります。それは空気と水と食べ物です。この三つがなければ人は生きていけないという事実に異論を唱える者はいないでしょう。

  食べ物を作ることによって大地も空気も水も健全に保っていく仕事、それが農業です。最も人が必要とするものを産みだし、最も命の根源に近い場所にある仕事だと思います。そう思って、農業とは関係のない人生を歩んできた私は農家になる決意をいたしました。

  それから農業研修を始めて十年以上の月日がたちましたが、辛いとか苦しいとか思ったことはあっても、農業をやめたいと思ったことは一度もありませんでした。自分は生きていくのに必要なことをしているという手応えを感じる毎日でした。

  人生を楽しむことはとても大事です。でも、人生を楽しまなくてはいけないと強く思っている人ほど、自分が心から楽しめるものを見つけられずに落ち込んでしまうことが多いです。私はそのような人を今までたくさん見てきたし、私自身もそのような人間です。

  心から楽しめるものを見つけた人は本当に幸せだと思います。でも、人の心は移ろいやすいもの。今まで楽しいと思えていたことが楽しいと思えなくなる日が必ずやって来ます。それでもそれを続けていけるのかどうかが問われます。

  私にとって農業とは、「楽しいからやる。楽しめなくなったらやめる。」という次元の世界ではありません。楽しいか楽しくないか、自分のやりたいことなのかそうでないのか、いちいちそんなことを考えなくても続けていけるのが農業です。そのような仕事を手に入れた今の私は幸せ者だと思っています。迷って迷子になることがないのだから。

  農業は迷った人たちが帰れる家を常に用意しています。どんなに時代が混迷の度合いを増して複雑化していこうとも、農業は人にとって最も大切なものだけを簡単な形にしてわかりやすく私たちに与えてくれます。私はそう信じています。

  小林農場の野菜セットを食べてくださったみなさん、今年も一年間、お世話になりました。みなさんからいただいた支えを胸におさめ、農業を「みんなが帰れる家」と思って大切に守っていきたいと思います。みなさん、良いお年を。

2013年12月29日 (日)

栽培暦 12月23日~12月29日(蚯蚓結)

以下はこの週に行った仕事です。

収穫、出荷  肥料作り  ハウス作成  不織布べたかけ 大掃除

小林の手帳より

年末の大掃除。年末のうちに終わりそうもない。1年間散らかし放題になっていて無法地帯になっている農場を片づけるのは容易ではない。小林農場の大掃除は新年にもち越し。年内には終わらせられなかったけれども、立春までには終わらせたい。畑仕事が忙しくない今の時期を逃したら、この先ずっと、大掃除をする機会を失うだろう。

生き物ざっくり物語  ハクサイざっくり

畑で暮らす生き物たちの奥深き生き様をざっくりと物語ります。今回はハクサイについて。

無数に種類がある植物たちはどれも、いずれかの植物の仲間に属しています。ハクサイはアブラナ科ブラシカ・ラパと呼ばれる仲間たちに属しています。ブラシカ・ラパの仲間たちはどれも十字架の形になる黄色い花をさかせます。種を生み出す時、雄しべで作られた花粉をハチなどの虫によって違う花の雌しべまで運んでもらいながら受粉します。その花で作られた花粉が同じ花の雌しべについても受粉せず、種が作れないようになっています。なぜなら、自分の花粉で受粉しても同じような子孫しか残せませんが、他の花と受粉すれば自分にはなかった新たな能力や性質をもった子孫を残せるからです。こうしてブラシカ・ラパの仲間たちは、どんな自然環境の中でも生き残っていける多様性豊かな子孫を残してきました。

ブラシカ・ラパに属している植物には、ハクサイの他にもカブ、コマツナ、在来ナタネ、パクチョイなど、日本で古くから暮らしていた作物も含まれます。よってハクサイは、同じ仲間のこれらの作物と簡単に受粉して雑種を産みだします。中国で誕生したハクサイの種が日本に持ち込まれたのは明治時代。当時、ハクサイはまわりで栽培されているカブやコマツナなどと受粉して雑種ばかりが生まれたため、日本では上手にハクサイの種を採れずにいました。そこでヒトはハクサイを海に囲まれた島など、他の作物から隔離された環境の中で種とり用のハクサイを栽培して、ようやくすぐれたハクサイの品種を得られるようになりました。ちなみにハクサイは古い時代に中国で、パクチョイとカブが受粉したことにより雑種として誕生したと言われています。

ハクサイは発芽後の生育の速度が他の作物と比べても速く、発芽後20日で本葉が6枚ほどになり、そこからさらに速度を速めて発芽後40日で本葉18枚くらいに達します。ここまで現れた本葉を「外葉」と呼び、地を這うように地表を覆って日を浴びて盛んに光合成をします。この先から、さらに加速してハクサイの中心から新しく生えてきた葉は、ゆったりと水平に葉を伸ばすことはなく、茎の短くて形の丸い葉が圧迫されながら内側を向いて立ち上って生育します。これらは「球葉」と呼ばれ、次から次にハクサイの内側の中心から生長して、中身がたくさんの球葉でつまったしっかりとした球を形作っていきます。最後は本葉が50枚から70枚ほどになり、ヒトに収穫されます。

その速い生育速度を支えるため、ハクサイは土中よりたくさんの量の肥料を吸い上げていきます。ヒトはハクサイを栽培するときは肥料を多く与えますが、肥料の臭いをかぎつけて虫もたくさんやってきて、ハクサイは虫の食害を受けやすい作物でもあります。

普通の葉物野菜は葉が一枚一枚バラバラなので、寒さに当たるとすぐに凍ったりしおれたりしてしまいますが、ハクサイは葉がぎっしりと巻いているので寒い時期でも保存ができ、葉物野菜の保存食としてヒトに喜ばれてきました。植物の葉には葉脈という水分や栄養分が通る管がありますが、ハクサイの葉は特に葉脈の量が多く、煮込むと葉脈にためられていた水分が大量に抜けて、そのぶんだけ加えられた味がしみ込んでいきます。よって、ヒトは鍋の材料としてハクサイを好んで使います。葉に塩をかければ葉脈から大量の水分が抜けるので葉がしなしなとなりやすく、ヒトは漬物にもハクサイを利用します。

参照 

農文協、編・渡辺穎悦 絵・峰岸達 「そだててあそぼう67 ハクサイの絵本」

著・藤井平司「図説 野菜の生育 本物の姿を知る」

著・稲垣栄洋 絵・三上修 「身近な野菜のなるほど観察記」

2013年12月27日 (金)

12月22日~12月29日の野菜セット

以下はこの週の野菜セットの内容です。

じゃがいも、玉ねぎ、人参、大根、かぶ、里芋、長ネギ、白かぼちゃ、白菜、ほうれん草、かき菜、みず菜、みぶな

小林の手帳より

秋に虫害のひどかったみず菜とみぶな。この季節までに順調に大きくなってくれたものの、葉に虫に食われた跡が多く、評判は良くない。私のように虫に慣れていればおいしく食べられるが、虫に慣れていない人には抵抗があるよう。

2013年12月26日 (木)

野菜セットを通して一年を振り返る

野菜セットを通して一年を振り返る   平成25年12月16日

寒さがひとしお身に染みるようになりました。みなさん、いかがおすごしでしょうか。

  サツマイモは寒さに弱い作物で、温度が低い場所では低温障害を起こして傷んでしまいます。寒さが厳しくなる12月に入れば、保管していたイモも傷み始めます。

サツマイモは人気のある品目なので、去年までは12月の終盤までギリギリ、サツマイモを出荷し続けてきました。でも、サツマイモの中身が傷んでいるかどうかを見極めるのは外から見ただけでは難しくて出荷する前には神経を使います。野菜セットに傷んだサツマイモが混ざっていないことを祈りながら出荷していましたが、おそらく、いくつか傷んでしまったイモをみなさんにお届けしてしまったこともあったかと思います。

今年は12月に入った時点で、サツマイモの出荷を終了いたしました。今年のサツマイモは不作だったという事情もありますが、傷んでいる可能性のある作物を無理して野菜セットに入れない方針を徹底してみました。

野菜セットの中に入っているたくさんの種類の野菜のうち一種類でも傷んだ野菜が混ざっていれば、野菜セットとしての商品価値は損なわれます。二,三種類も傷んでいれば、野菜セットを受け取ってくださったみなさんもがっくりとするでしょう。

長く野菜セットを食べてくださっている方はお気づきかと思いますが、野菜セットの野菜の種類数も量も、以前と比べて微減しています。傷んでいる可能性のある作物を省き、自信をもって出荷できる作物のみを選んで出荷しているからです。

今までのようにたくさんの種類数や量の野菜をお届けしても、受け取る側は必ずしも喜んでくださるとは限りませんでした。その季節に良い状態で出荷できる作物の種類は限られ、無理して多くの種類の野菜を出荷しようとすると、傷んだ作物が混ざる可能性が高くなります。多すぎる野菜を保存して食べきることに負担を感じる方もいて、むしろお届けする野菜の量を減らしたほうが喜んでいただけるのではないかと思いました。

「本当はもっとたくさんの野菜がほしい」「野菜の量を減らすのであれば野菜セットの値段も下げてほしい」とお感じになる方も中にはいらっしゃるかもしれません。これからはその時期その時期に最良の野菜のみを選び、今まで以上に質の高い野菜セットを今までと同じ値段でみなさんにお届けしていきたいと考えています。どうぞご了承ください。

この一年間、みなさんから直接、野菜セットの感想をいただける機会が何回かありました。みなさんから「本当においしい」という声を笑みと共に私に送ってくださると、自分が今までやってきたことが報われた気がして、幸せな気分でいっぱいになりました。

いっぽうで、私の不注意により誤って傷んだ野菜をお届けしてしまい、みなさんをがっかりさせてしまったこともありました。みなさんからいただいたご指摘の数々、私の記憶にはっきりと刻み込まれています。

みなさんが喜んでお金を支払っていただける価値のある野菜セットになっているのかどうか、常に意識して今後もみなさんにお届けし続けていきたいと思います。

新聞切り抜き ネット版  原発の必要な理由について

私が最近気になった記事をご紹介します。

以下は武田邦彦教授のブログより

ズバリ!なぜ?1・・・原発を動かそうとする電力会社

目の前で無残にも5兆円企業が断末魔を迎えている。それは福島原発事故で重傷を負った東京電力である。それにもかかわらず原発を動かすのに執念を燃やす電力会社はなぜ??

【答】税金で高収益になるから
電力の総売上は約16兆円。そのうち原発は30%だったから約5兆円。それに対して直接的な毎年の税金が5000億円。だから黙っていても売り上げの10%を税金からもらうからぼろもうけである。つまり本来、原発は電力会社にとってうまみのないものだが、国家に10%を支払ってもらえるので、原発は儲かる。
(このほかに再処理費用、地元費用なども税金持ち。およそ1兆円。原発を止めれば消費税も減る。)

なぜ、原発に限って国が5000億円にもの税金をなぜ出すのか、それは次の機会に「ズバリ」で書く予定です。

(平成24710日)

ズバリ!なぜ?!・・・なぜ政府は原発にお金を出すの?

原発が特殊なものだったのはすでに40年ほど前で、今では世界で430基、ごく普通の発電方法になった。それなのに政府は年間5000億円ほど(直接的には4500億円)税金を使っている。

財政が赤字の中、なぜ原発に膨大な税金を出し続けているのだろうか?ズバリ、
「核武装のため」
である。つまり日本政府は原爆を持とうとしているのだ。

電力会社の社会の反撃は受けるし、事故の危険性はあるし、東電ですらつぶれる危険があるのだから原発などやりたくないのが普通である。でも5000億円をもらい、家庭用電力をアメリカの2倍に保ってくれる政府に貸しを作るためには経営のリスクは負うということだ。

消費税増税の隙間を塗って原子力基本法を改定して核兵器を持てるようにしたのも、原発が止まる事を想定したものだ。青森の再処理工場から大量の放射性物質が出ているが、絶対に止めない。再処理工場こそが核武装の施設だからである。

(平成24年7月13日)

以下は「食品と暮らしの安全基金」より

「「原発全廃」の世論を過半数に」 安全基金の活動と考え方(67)

原発推進派が、お金で専門家を釣り上げ、マスコミを支配して、電力会社と原発の悪口を言えないようにした上で、原発が一番安上がりの電力と言い続けて30年。 これだけ長期にわたって世論操作されると、ジャーナリストも、事故さえ起こらなければ、原発は安上がりの電力と思っている人がほとんどです。

 事実は違います。

 アメリカでスリーマイル島の事故が起きたのは1979年。
その前年には、新規発注が激減し、建設予定だった原発のキャンセルが相次いだというニュースが流れていました。 アメリカでは、原発で小さな事故が起こると、同型のすべての原発で改善工事が行われたため、運転中止期間が長くなって、稼働率が下がり、原発は採算が合わなくなっていたのです。 新規の原発も、安全のための投資が増えて、原発は発電コストが合わないと言われるようになっていました。 新規発注がなくなったところで、スリーマイル島の原発事故が起こったのです。 ところが、あたかもスリーマイル島で大事故が起こってから、原発の評判が悪くなり、建設できなくなったかのように日本では言われています。 「スリーマイル」以前にコストが合わなくなって、原発は新規に建てられなくなっていたことは、決して語られません。
 こうして世論は操作されているのです。事故が起きなくても、原発は放射能を環境に出さないために莫大なコストがかかります。 しかも、原発がつくる電力は常に一定で、深夜電力は7割引きで販売。コスト高なのに、ディスカウントで販売しているのですから、原発は採算が合いません。 それを、莫大な補助金で隠して、一番安い電力源として推進してきたのです。
 その理由は、敗戦後に、二度と原爆を落とされないように核武装するため、「原子力の平和利用」という名目で、中曽根康弘元首相が仕組んだからです。 「非核3原則」は、ウラで核開発を進めるためのカムフラージュにすぎません。 そのうちに、莫大な利権を得た政治家や官僚が、カネ目当てで原発を推進するようになり、マスコミも巻き込まれたのです。2011年7月1日発行 No.267より


加えて、国防で最大の弱点になっている原発をすみやかに廃止することです。
 原発は上からの攻撃に弱いので、精密誘導ミサイルで攻撃されたら確実に爆発します。 核燃料再処理施設、ウラン濃縮工場、もんじゅにも同様の弱点があるので、これらを廃止すれば、税金の無駄遣いが消えます。

 中国には、80基を目指して建設中の原発が国防の弱点になることを認識させ、原発建設と核兵器の増加に歯止めをかけながら、友好を模索すべきです。



2013年9月1日発行 No.293より

2013年12月23日 (月)

栽培暦 12月15日~12月21日(荔挺出)

以下はこの週に行ったしごとです。

収穫、出荷  片づけ  米ぬか入手  落ち葉かき  耕運  不織布ベタかけ  大豆、小豆脱穀、風選

小林の手帳より

すっかり木々から落ち葉が落ち、堆肥の材料とするため落ち葉を集めている。ここ数日間、強い風が吹き、せっかくの落ち葉が、どこかに吹き飛んでしまった。落ち葉かきは落ち葉が落ちたらすぐ始めたほうが、効率良く落ち葉を集められる。

2013年12月22日 (日)

いきものざっくり物語  サトイモざっくり

畑で暮らす生き物たちの奥深き生き様をざっくりと物語ります。今回はサトイモについて。

畑に植えられたサトイモの種イモから、数枚のハート型をした、ヒトの顔ほどの大きさのある葉が地上部で生育します。サトイモの先祖は熱帯の大きな木が生い茂っている森の中で暮らしていました。地上に降り注いでくれるわずかな木漏れ日を逃さずに受け止めるために一枚一枚の葉を大きくしたのでしょう。葉の表面が大きいと、雨が降ったときにまともに葉は強い雨を受けて傷んでしまいます。よってサトイモは葉はろう物質を作り出して水をはじいて濡れないようになっています。朝のサトイモ畑には、サトイモの葉の上にたまった美しい朝露がコロコロと転がっています。

土から空に向かって伸びて上端に大きな葉をつける緑色の太い茎。本当はこれは茎ではなく、「葉柄」または「ずいき」と呼ばれるサトイモの葉の一部です。では、サトイモの茎はどこにあるのか?ずいきが生える地下部のイモの部分が、サトイモの茎に相当します。イモからヒゲのような無数の毛を地中に伸ばしますが、これがサトイモの根です。

畑に植えるサトイモの種イモはつまり、茎の部分です。時間が経つと地下部では、種イモから上に新たに大きなイモが生まれます。これを「親イモ」と呼びますが、種イモは親イモに養分を渡した後、しわしわになってしぼんでなくなります。ほとんどの植物は、一本の茎から新しい茎を生やして茎の数を増やしていきますが、サトイモも同じように、親イモから新たにイモの形をした茎が派生し、これを「子イモ」と呼びます。子イモの大きさは親イモよりも小さいです。さらに子イモから派生したより小さいイモを「孫イモ」、孫イモから派生したイモを「ひ孫イモ」と呼びます。サトイモは地下部で、親イモを中心としてたくさんのイモがまるで大家族のように賑やかなイモの塊を形成していきます。

ヒトが種イモを畑に植える時期は春。乾燥を嫌って湿気を好む作物なので、水田にイネの代わりにサトイモを植えるヒトもいます。前の年に収穫されたイモの中から、ヒトが良い形のイモを種イモとして選んで植えられます。大きな親イモには小さな子イモよりもたくさんの養分が貯蔵されているので、種イモとして前の年に収穫した親イモを利用すると、生育の勢いの良いサトイモが育ちます。植え付け後、サトイモの地表を乾燥させないように、ヒトはサトイモの株もとに土を寄せたりワラをしいたりします。

収穫は秋より。冬が来て霜が降りて地上部の葉が枯れる頃、ヒトはサトイモを寒さから守るため畑から掘り出し、貯蔵用に深く掘った穴に埋めます。そのまま暖かくなってイモから新芽が吹き出す4月頃まで、ヒトは冬の間、大事にサトイモを貯蔵穴から掘り出して食べ続けます。塊になっているイモをバラバラにしてしまうとイモは早く傷んでしまうので、食べる直前までイモを塊のまま貯蔵します。

栽培型のサトイモの先祖は遠い昔の熱帯アジアで誕生して、中国大陸、東南アジア、ミクロネシア、ポリネシアで広く主食として用いられています。かなり古い時代、イネが日本に伝わる前は、日本人もサトイモを主食とし、サトイモのねっとりとした食感に親しんできました。やがてイネが登場すると日本人の主食はイネへと移っていきましたが、納豆や餅やとろろなど外国人が苦手とするネバネバとする食感を日本人が好むのは、サトイモを主食としてきた遠い記憶が残っているからかもしれません。

参照

農文協 編・吉野煕道 絵・城芽ハヤト  「そだててあそぼう72 サトイモの絵本」

著・木嶋利男 「伝承農法を活かす マンガでわかる 家庭菜園の裏ワザ」

著・稲垣栄洋 絵・三上修 「身近な野菜のなるほど観察記」 

2013年12月21日 (土)

12月15日~12月21日の野菜セット

以下はこの週の野菜セットの内容です。

じゃがいも、人参、玉ねぎ、大根、かぶ、里芋、長ネギ、白菜、サニーレタス、白かぼちゃ、ほうれん草、かき菜、あぶらな、みず菜、みぶな

小林の手帳より

冬至を迎えるこの時期に、野菜セットに白かぼちゃが登場。前回の冬、みなさんから「おいしい」と好評をいただいてきた作物で、この冬もこの白かぼちゃが野菜セットの中で大活躍してくれるだろう。

冬になるまでは小松菜を出荷して、寒さが厳しくなると小松菜よりも寒さに強いあぶら菜やかき菜を出荷している。小松菜よりも味が優しくて、個人的には小松菜よりも食べやすいと思っている。

2013年12月20日 (金)

人参と大根のきんぴら炒め

材料  人参、大根、ごま油、しょう油、七味とうがらし

人参と大根を千切りして(スライサーがあると便利)

熱したフライパンにごま油を敷いて人参と大根を炒め

しょう油を加えて味を調える(好みで七味とうがらしを)

千切りして細かく切ると、野菜の味が優しくなるようで、野菜の香りが苦手なお子さんも食べやすくなるかも。また、細かく切ると、食べやすくなるので、たくさんの量の野菜を早く食べきりたいときにきんぴらは良いです。塩を加えたらもっとおいしくなるかと思ったけど、やはりきんぴら料理は塩を加えずしょう油の香りのみで味つけしたほうがおいしいです。

2013年12月19日 (木)

栽培暦 12月8日~14日(鶡鳥不鳴)

以下はこの週に行った仕事です。

収穫、出荷  片づけ  白菜収穫、貯蔵  大根、かぶ土寄せ  葉物野菜不織布べたかけ  切り干し人参作成  鉄柱入手  もみ殻入手

小林の手帳より

冬は住まいの整備、農業のお勉強、販路開拓に時間を費やしたい。これらの仕事ができるのは、畑仕事が忙しくない12月から2月まで、今の時期しかない。他の時期は畑仕事で忙しくなる。

2013年12月18日 (水)

小さき者たち

小さき者たち   平成25年12月9日

師走の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか。

  日本の国土には山がたくさん連なっていることもあり、古くから日本の農家はわずかに広がる平地に創意工夫を加えながら小さな田畑を開拓してきました。農場の規模は小さく、それをさまざまな小さな家族農家が管理してきました。

  日本政府は近年、小規模家族農家が中心だった日本型農業を改め、広い面積の農地を大規模に管理して経営していけるような企業的・大規模農場に農地を集積させようとしています。農地の面積を拡大すれば、農場経営の経済効率が上がります。

大規模化によってお金儲けしやすくなって農家が意欲的に農業に励むようになることが政策の狙いです。ただし、とても人の手だけでは広い面積を管理できなくなるので、機械や資材に頼る機会が多くなり、栽培方法が自然からかけ離れていきます。

小林農場では自分たちが食べる野菜を自給していくことが大切だと考えて、あらゆる種類の旬の野菜を栽培してきました。いつも何種類もの作物の世話をすることは手間がかかりますが、それによって農場内の生物の多様性は保たれ、豊かな生態系が育まれています。お金儲けを一番の目的にして大規模化した企業農家は、売れる作物しか作らなくなるので、広い農地にわずかな種類の売れる作物しか作らず、場内の生態系を貧しくしてゆき、ますます農薬や化学肥料を頼りにしなくてはいけなくなります。

要するに、ものすごく単純に言ってしまえば、農場を大規模化・企業化させればお金儲けはしやすくなるけれど自然環境への負担を増やしてしまいます。豊かな自然環境を保全しながら農業を営んでいきたいと考えたとき、自ずと小さな農家が小さな規模で田畑を管理していくことが良いという結論になります。

もっと言ってしまえば、我が家の食の自給のためだけを目的とした小さな小さな家庭菜園こそが、最も自然に優しい作物栽培の姿だと思います。政治家も医者も教師もサラリーマンも、どの世帯もみんな家庭菜園を持って、ほんのわずかな時間でもいいから仕事の合間に野良仕事をして我が家の食材を自給していければ、ずいぶんと自然に優しくて人の健康にも良い社会が実現することでしょう。

消費者が自分たちの食べ物を自給すれば、もう専業農家は商売できなくなるかもしれませ。でも、自給自足が当たり前のステキな世界がやってくれば、私は喜んで専業農家をやめます。「専業」という型から解放されて、もっと好きなように農を楽しめるでしょう。

農業の大規模化を進めようとする政府の方針を、多くの報道機関も支持しています。どのようにして小さな農家を離農させて大規模な農家に農地を集積させていくかを真剣に論じている記事を目にすると、悲しくなってきます。大規模化を目指す農家がいてもかまわないと思いますが、政府や報道機関が小さな農家の存在を否定するのはいけません。

小林農場も小さな農家です。大規模化・企業化することを拒み、小さいことに誇りを感じる農家は小林農場以外にもまだまだたくさんいます。

2013年12月15日 (日)

12月8日~12月14日の野菜セット

以下はこの週の野菜セットの内容です。

じゃがいも、人参、玉ねぎ、大根、かぶ、長ネギ、里芋、白菜、サニーレタス、かき菜、ほうれん草、チンゲンサイ、みず菜

小林の手帳より

10/7に播種して11月上旬に布をかぶせて保温しておいた油菜は、11月下旬より収穫ができた。現在は10/9播種のかき菜、10/14播種の油菜(どちらも11月上旬に布で保温)を収穫。ほうれん草は現在、9/30播種(保温なし)より収穫。寒さが本格的になる前に葉物野菜が出荷できる大きさに育ってくれて、しばらく冬の間、出荷できる葉物野菜は確保できた。

2013年12月14日 (土)

栽培暦 12月1日~12月7日(閉塞シテ成冬)

以下はこの週に行った仕事です。

収穫、出荷  片づけ  不織布ベタかけ  大根伏せこみ  白菜収穫、貯蔵  人参土寄せ  里芋収穫、貯蔵  人参母体定植

小林の手帳より

冬の貯蔵作物を畑から収穫して防寒、貯蔵した。まだ寒さで傷んだ作物は見られず、無事に貯蔵できたと思う。

定植が遅れた6月定植の里芋もそれなりに太ってくれて、まあままの収量だった。しかし、芽出しをせずにそのまま畑に定植した種イモはさすがに生育が遅れ、収穫時はほとんどが小さかった。

白菜はこの時期になっても結球がゆるいものが多かった。晩生の品種は今年の種まきの時期よりももっと早く種まきしたほうがよい。

大根は9月12日までに播いた大根は普通に太ったが、9月21日以降に種まきした大根は小さいままのものが多かった。かぶは9月下旬に種まきしても収穫が間に合うが、大根は9月下旬の種まきではうまく育たないこともあるようだ。

8月21日に種まきした人参は、小ぶりではあるものの、出荷できるくらいの大きさに育ってくれた。かなり遅い種まきであったが、思っていた以上に人参の播種適期は長いのかも知れない。

2013年12月13日 (金)

12月8日撮影  作物観察日誌

Pc080247 9月28日播種の春キャベツ

Pc080243 9月30日播種のほうれん草

Pc080249 10月14日播種のほうれん草

Pc080238 人参

Pc080240 長ネギ

Pc080250

2013年12月12日 (木)

耕さない畑

耕さない畑   平成25年12月2日

年末の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか?

  最近の農業界では「不耕起栽培」がひっそりと注目され始めています。一般的な栽培方法ではトラクターで田畑を耕してから作物を育てるのですが、不耕起栽培では田畑を耕さないで作物を育てます。

  もう10年以上前の話になりますが、奈良県の農家の方の田畑を見学させていただいたことがあります。20年以上も土を耕さずに不耕起栽培を実践されている田畑でした。ほろほろとしている土は黒々と光っていて、足を踏み入れると心地よい弾力が体に伝わってきました。その豊かでふくよかな感触は、今でもはっきりと思い出すことができます。

  人が足を踏み入れることのない奥深い山林でも木々が旺盛に育っているのを見れば分かるとおり、本来、植物は土が耕されていなくても生育することができます。耕さなくても、土は無数の生き物にあふれ、自然とフカフカと柔らかくなっていきます。

  耕せば耕すほど土が良くなると一般的に思われがちですが、現在の農業では耕しすぎることによる土への害が指摘されるようになってきています。耕すことにより、土が本来持っていた健全な物理性が破壊され土中の生き物に混乱を生じさせます。土の健康を考えるのであれば、人があまり土に手を加えないほうが良い場合が多いようです。

  多くの農家が田畑を耕す主な理由は、田畑の雑草を抑えこむためです。雑草だらけの田畑では、あらゆる仕事が困難となります。トラクターで雑草を退治してから作物の種を播いたり作物の苗を植えたりすれば、雑草よりも先に作物を生育させることができます。言い換えると、耕しておかないと、作物は雑草と厳しい競争にさらされてしまいます。

不耕起栽培でも鎌を使って作物の周りに生えてくる雑草を刈り取りますが、そのようなゆるい除草方法では手間と時間のかかる上にあまり除草効果が期待できません。このやり方で小林農場に生えるような勢いのある雑草を抑えることは困難でしょう。

我が家の自給自足を目的にした家庭菜園のように狭い畑であれば、除草作業もそんなに大変ではないので、不耕起栽培はとても有効だと思います。いっぽう、小林農場のようにある程度広い面積の田畑を管理している専業農家の多くは、機械を使って耕し雑草を抑えておく必要があります。前述の奈良県の農家の方も、もともとは専業農家でしたが、不耕起栽培を始めてからは専業農家をお辞めになり、現在は食の自給と不耕起栽培の普及に取り組む日々を送っていらっしゃるようです。

私が知っている限りでは、不耕起栽培ほど自然界と調和して自然環境に負担をかけない栽培方法は他にないと思います。私が本当にやりたい農業はこれです。

私も本当に狭い面積ではありますが、農場の中に不耕起畑を作ってみました。これから数年間、この畑は耕さないと決め、アスパラガスやニラを栽培しています。

一歩でも半歩でも四分の一歩でも。私のできる範囲で少しずつ自分の理想としてきた栽培方法を実現し、長い年月をかけて小林農場を桃源郷にしていきたいと思います。

2013年12月 8日 (日)

生き物ざっくり物語  カブざっくり

畑に暮らす生き物たちの奥深き生き様をざっくりと物語ります。今回はカブについて。

その昔、カブの祖先であるツケナが地中海の東の水辺に誕生しました。やがて、地下部を太らせてそこに必要な水分と養分をためこみながら水辺から陸上へと生活の場を移していくツケナの種類が現れました。それがカブです。地下部の根球がヒトに食べられるカブと、葉の部分がヒトに食べられるアブラナやミズナやカラシナなどのツケナ。野菜としての見かけはずいぶん違いますが、カブとツケナは同じ家族に属しています。同じ家族同士の中では植物は交雑して新しい性格を持った植物の種を残すことができます。カブは長い年月をかけていろんなツケナと交雑して、いろんな種類のカブがその土地柄に合わせて生まれてゆきました。

カブは春にも種を播けば生育して収穫することができますが、秋に種を播かれたカブが最も健全に生育します。カブが好んで体を大きく生育させておく時期は秋です。厳しい寒さを迎える冬の頃は生育を止めてじっとしていますが、寒さを感じることにより間もなく春がやってくることを知り、種を作る準備を始めます。春が来て暖かくなり種を作るのに一番良い季節を迎えると、地下部の根球から一気に太い茎をまっすぐに伸ばして、黄色い十字架の形をした花を咲かせて種を作ります。カブと同じ家族のツケナも同じ時期に同じような花を咲かせます。これらの植物はヒトに収穫されなければ、夏の間に種をたくさん地面にこぼし、そして秋になれば種から新たな命が芽吹き、次の一生が始まります。

  カブが発芽すると、まず二枚の小さな子葉が地上部で開きます。地上部の子葉と地下部の根の間の短な茎の部分を「胚軸」と呼びますが、この胚軸が後ほど太ってヒトの食用部分となります。収穫された太ったカブの表面はつるりとしていますが、これはカブの茎の部分です。カブの先っぽのほうの細長い部分がカブの根の部分で、そこからさらにひげのような細かな側根(ひげ根)を数本生やしています。太った胚軸は地下部から地上部へ浮き出ようとして、収穫時期になると根球の上部がはっきりと地上部に盛り上がります。一方でカブの根は土の深くまで伸びず、浅い部分から水分を補います。表面が乾かずに水分を保っている土の中で、根球はふっくらと丸みの帯びた豊かな形に育ちます。

  ヒトはカブの種をすじ状に播き、発芽して大きくなれば、地下部の根球を太らせるため、葉を間引いて間隔を空けます。あまりに葉の間隔を空けすぎてしまわないように、二,三回に分けて間引いていきます。カブはツケナと比べて葉はか弱く、お互いに葉が触れ合わせて支え合いながら立つため、葉がある程度密生した状態を好みます。

  収穫時期を迎えてからしばらく経つと、カブの根球部分の皮は老化して固くなり、一方でその中身は生育を続けて大きくなっていくので、やがて根球の表面が割れてしまいます。また、中身の古い細胞には根から吸い上げられた栄養がいきわたらなくなり、中身がスカスカと空になることもあります。これを「ス入り」と言います。ヒトはカブが収穫時期を迎えたら若いうちに収穫するように心がけます。また、土の水分が不足した時もカブの老化が早まって根球の皮は固くなり、雨など降って土に水分が補給されて根球が生育を早めた時、根球が割れやすくなります。ヒトは土中の水分量が極端に変化することがないように、畑の土を作ります。

2013年12月 7日 (土)

12月1日~12月7日の野菜セット

以下はこの週の野菜セットの内容です。

じゃがいも、人参、玉ねぎ、大根、かぶ、里芋、長ネギ、白菜、サニーレタス、小松菜、ほうれん草、チンゲンサイ、みず菜

小林の手帳より

  寒くなって毎朝、霜が降りるようになったとはいえ、露地の大根もかぶも白菜も里芋も人参も凍って傷んでしまうことなく出荷できている。これらの作物は耐寒性があり、11月中に慌てて防寒しておかなくても大丈夫なようだ。寒さが本格的になるのは12月中旬からだろう。それまでに防寒作業を終わらせたい。

  貯蔵用の玉ねぎ(品種はキーパー)が芽を出し始めて品質が低下し始めている。果たして、いつまで出荷できるか。

新聞切り抜き ネット版 「農業改革」について  武田邦彦教授 現代農業 

私が最近気になった記事をご紹介いたします。

以下は武田邦彦教授のブログより

まず農業の従事者の平均年齢を見てみると、フランスは35歳から54歳ぐらいまでまんべんなく人が従事し、イギリスもほぼ同じだ。それに対して日本は65歳以上が半分という極端な状態で、2012年の平均年齢は68歳といわれている。

日本のほとんどの産業が65歳で定年を迎えることを考えると、すでに「農業」という職業は「無い」ということになる。それに米を作るには1年に1か月働けばよいし、会社組織の農業は実質的にできない。だから農業という産業は日本にないといってもよい。

Bandicam_20131105_152916756さらに、日本の農業は関税が高い。この表でわかるように、コメは778%という効率だし、そのほかの食料も軒並み高い関税をかけられている。もし日本が食料は輸入すると決めれば、食費はとても安くなるだろう。

もし仮に「必要な時にはすぐ食料が収穫できる」という技術ができ、「半年分の食料は備蓄してある」ということになると、日本は多くの農産物を輸入して安くておいしい食事をすることができるかもしれない。そのほうが平均年齢68歳の農業を保持するより良いかもしれない。

しかし、この問題は長く議論されても煮詰まらない。というのは農業を行っている人が現におられるということ、それが政治的な力にもなるし、日本人の希望はできれば日本で取れた食材を使いたいという希望もあるからだ。

私の個人的感じでは、従来の農業が年配者になっていることが好機だから、この機会に一気に「会社組織」だけにして、65歳以上の人は「農業定年」で半分にして平成の農業革命をするとよいと思う。そうすると農作物の値段は関税がいらないぐらいに下がると考えられる。(平成25114日)

以下は「現代農業」より

家族農業の大義
「和食の世界文化遺産」登録と「国際家族農業年」の意味を読む

各地域で、数人のおばあさんに集まってもらい、昔の食を思い出してもらい、実際につくってもらいながら聞き書きはすすめられた。当時の主婦たちの「食事つくり」とは、田畑で育てられた農作物、山や川や沼が恵んでくれる山菜や川魚など、そして海岸から運ばれてくる海産物、それらのすべてを頭に入れて、一年中家族全員に不足なく、楽しみながら食べ続けられるようにすることであった。

 人間が自然に働きかけ、自然が人間に働きかけ返す(自然に学ぶ)、その数千年に及ぶ積み重ねで日本の食文化は生まれた。「食」が農を育み、「農」が食を育むという日本の伝統的な家族農業がもつ「生産と生活の循環・一体性」のなかに、和食の文化は、その成立の根拠を見なければならない。さらに、その「食」と「農」は日本の「むら」(コミュニティ)の特徴である「自給」と「相互扶助(お裾分け)」の農村社会のなかで育まれてきたものである。

 この「和食」を、海外で知名度を上げ、和食に使う日本の農水産物や加工食品を海外へ輸出できるという浅はかなソロバン勘定に貶めてしまってはならない。ましてや、「攻めの農林水産業」で国内農水産物の輸出を増やすというTPP戦略の一環に利用されては、本末転倒である。

 山と田畑、川・海の循環、里山里海など、国民一人ひとりが美しいと感じるふるさとが伝統的な食文化の源泉である。それを育んできた家族農業を守ることなしに、「和食」の誇りを次世代に継承していくことはできない。「和食」を国民的財産として保全していく運動は、地域ごとに家族農業が立ち行くように新しい仕組みをつくること、これによって、そこに住むみんなが豊かになる地域再生をすすめる運動なのである。TPPとは真逆の世界なのだ。

「スモール イズ ビューティフル」で有名なイギリスの経済学者シューマッハは、そもそも、農業生産における人間と自然の関係は、最大利益を求めて世界を移動する自由をもつ企業とは根本的に異なるとして、農業の国際分業論を批判し、農業の目的を次の三つに整理した。

 (1)人間と生きた自然との結びつきを保つこと。人間は自然界のごく脆い一部である。(2)人間を取り巻く生存環境に人間味を与え、これを気高いものにすること。(3)まっとうな生活を営むのに必要な食糧や原料を自らつくり出すこと、の3点である。

 シューマッハは、現代の危機の打開にむけ、「人間の身の丈にあった技術」を生かした「大衆による生産」こそが、労働と自然の破壊をもたらす現代文明の危機を打開する唯一の道だとした。「世界中の貧しい人たち、農家を救うのは、大量生産ではなく、大衆による生産である」として、農村と小都市に何百万という数の仕事場をどのようにして作り出すかが、現代文明の危機を克服する核心であると主張したのである。この土台にあるのが自給を基礎におく家族農業であり、家族農業を基礎とする農村である。

 家族の次に社会の真の基礎をなすのは、仕事とそれを通じた人間関係である。その基礎が健全でなくて、どうして社会は健全でありえよう。そして、社会が病んでいるとすれば、平和が脅かされるのは理の当然だ。大衆をもっぱら消費する存在として拡大再生産していく現代社会を、「大衆による生産」に基づく社会に変革していかなければ人類に希望はない…これがシューマッハのメッセージである。

 今、急浮上している農政改革の直接的なはしりは、2007年、第一次安倍政権の時に実施に移され、戦後農政の総決算ともいわれた「品目横断的経営安定対策」である。担い手への施策の集中化・重点化をはかる観点から面積要件のみによって担い手を絞り込み、10年で40万の担い手を育成し、そこに生産の7~8割を集積することを想定したものである。この担い手絞り込み路線、小さい農家の離農促進政策は、民主党時代の「人・農地プラン」にもひきつがれた。

 しかし、この「人・農地プラン」のビジョンづくりは、政府の意図を超え、農村現場の努力によって家族農業とむらを守る共同活動としてすすめられている。

こうした地域による土地利用調整力の発揮、その広がりに業を煮やしたかのように、政府は「むらの話し合い」を促す「人・農地プラン」の法制化は見送って、「農地中間管理機構」法案を閣議決定した。農地利用調整の主体を市町村から「機構」に移し、「公募」による農外企業の参入も含め、農地の八割をTPPに対応する「強い農業」の「担い手」に集積することをねらったものである。

 しかし、こんな当事者抜きのやり方は農村をおかしくする。耕地は、非移転性、有機的連鎖性、非市場的性格をもつ地域資源の根源であり、その利用は、農家とむら、これをサポートする市町村や農業委員会、地域のJAが担ってこそ、その持続性が保たれる。

 自然とともに生きる農家は自然がそうであるように、個性的かつ自給的な存在であり、それゆえに共同が生まれる。

石油高騰、米価下落など、困難な状況だが、困難な時ほどこの「農家力」は発揮される。そして、これまでもこれからも、農家力が農耕文化、食文化を育み、「多面的機能」をもたらす。個的にして全的な存在―そこに「家族農業の大義」がある。

2013年12月 4日 (水)

自然・不自然

自然・不自然   平成25年11月25日

霜寒の候、みなさん、いかがおすごしでしょうか?

  日に日に季節は冬へと向かっていきます。畑は毎朝、霜で真っ白に染まります。朝は作物も凍りついているので、収穫作業は出荷日の前日の夕方までに終わらせるようにしています。

  ほうれん草や油菜などの露地作物の防寒対策として、小林農場では不織布を使用しています。不織布(ふしょうふ)とは、多数の繊維を結合させて加工された資材です。薄い布のようなもので、身近なところでは、紙オムツや使い捨てカイロの袋やマスクなどにも、不織布と同じ素材が使用されています。

  使用方法は簡単で、シート状に加工された不織布をそのまま畑で生育している露地作物の上にかぶせるだけ。それでずいぶんと霜から作物を守ってあげることができます。いくらか保温されるので、作物の生育も調子が良くなります。

  不織布は軽くて、持ち運びが楽です。この資材を入手するのにお金がかかりますが、一度買えば何度でも使いまわすことができます。すぐにはゴミになることはありません。

  前回の冬は記録的に寒い気温が続きましたが、この不織布で露地作物を防寒したので、小林農場は冬の間もずっと、野菜セットに露地野菜を入れていくことができました。冬でも豊富な種類の野菜を出荷し続けることができるという手応えを得ました。

  栃木県の冬は寒さが厳しく、毎日、最低温度が氷点下を下回ります。なんの資材も使わずに露地野菜を出荷するのは難しいです。小林農場は、一年を通して豊富な種類の野菜をみなさんにお届けしていくことが大事だと考え、冬は資材を積極的に活用しています。

  いっぽうで、できるだけ作物を自然に育てたいという想いから資材をできるだけ使用しない農家の方々もいます。資材に頼れば頼るほど自然から離れた人工的な栽培となっていきます。冬は思い切って野菜の出荷をお休みにする農家の方々も少なくありません。

  私は冬でも豊富に野菜を食べたいと思うのは自然な感情だと思うし、資材を使えば冬でも作物を栽培できるのにそれを使わないことは不自然だと感じます。ただ、不織布で真っ白に覆われていく小林農場の畑の光景を不自然に感じる人もいると思います。

  現在はビニールハウスの中で暖房機器を使って暖房しながら作物を栽培するハウス栽培が広く普及されています。このため本来は夏が旬のトマトやイチゴなども冬でも収穫できるようになりました。

  小林農場ではハウスで加温しながら作物を作ることはしていません。お金とエネルギーを大量に消費してしまうし、夏に生育すべき夏野菜を人工的に冬に作っても作物は健全に育たないだろし、それを食べる人の健康にも良いことはあまりないと思います。つまり、ハウス栽培は不自然だと私は感じます。

  何を自然と感じ、不自然と感じるのか。それぞれの農家の栽培方法の中に、その農家の自然観なり価値観なりがにじみ出てきます。

一人勉強会  くん炭の作り方

くん炭の使い方、その効用

  ・アルカリ性なので酸性の畑に播けば酸性が矯正される。

  ・カリが多く育苗土に混ぜると苗の根張りが良くなる。イモ類の生育にも良い。

  ・他にもカルシウムとケイ酸が多い。

  ・播けば有用微生物が繁殖する。

  ・マルチに使えば地温を上げる。

必要なもの(もみ殻をくん炭にする場合)(現代農業2009年11月号p82)

  落ち葉や木くずなど、燃えるもの

  煙突がついたくん炭器 2000円くらいで買える

  もみ殻

  熱いもみ殻をかき混ぜられるスコップ

  ドラム缶とそのフタ(資料袋など)

  くん炭を保存する袋

作り方(現代農業2009年11月号p82)

  1.点火してくん炭器を設置

  2.周りにもみ殻を置く

  3.こまめにもみ殻をまんべんなくかき混ぜる

  4.ドラム缶に移し密封、消火

  5.袋につめる

注意 火事に注意。火の始末を誤って火事を起こした農家の例は多い。

せん定した枝など、堆肥の材料にしにくいものは炭にすれば肥料として使える。「60歳からの小力野菜作り」p42参照。

2013年12月 1日 (日)

新聞切り抜き ネット版  地球温暖化について  産経新聞、食品と暮らしの安全基金、武田邦彦教授

私が最近気になった記事をご紹介いたします。

以下は産経新聞より

地球温暖化防止 排出削減へエネ計画急げ

2013.11.26 03:13 (2/2ページ)主張

 一方、日本はCOP19で3・8%という低めの削減値表明を原発停止のために余儀なくされた。これは短期目標だったが、原発の再稼働が見えにくい現状では、15年中に国連に提出する新枠組み用の削減目標値をこれ以上、向上させることは困難だろう。

 福島事故を受けて見直し中のエネルギー基本計画は、年内策定に向けて議論されている。計画では、温暖化対策の観点からも原子力に重要電源としての明確な位置づけを与えることが不可欠だ。

 日本のエネルギー自給率は先進国中、際立つ低さである。原発に背を向ければ、火力発電所の化石燃料使用で二酸化炭素の排出は増加に向かう。15年提出の削減目標値は、日本の国際的な立場にも直接、影響を与えるものである。

 日本の環境技術を途上国で生かす方策も重要だ。政府は途上国を対象とした2国間クレジット制度(JCM)の普及に力を入れている。海外での二酸化炭素の排出削減分を日本の削減量としてカウントできれば、日本と相手国と地球に効果がもたらされる。

 原発とJCMを環境戦略に生かしたい。それが技術国・日本の進むべき道である

以下は「食品と暮らしの安全基金」より

心配な寒冷化


元・理化学研究所研究員、元名城大学教授
槌田敦氏にインタビュー

●数十年、数百年での気温変化

槌田 しかし、気温は、数十年単位で温暖化したり、寒冷化したりしています。 【図1】を見てください。屋久杉の研究で、1900年間の気候を復元した図です。これで、数十年単位で気候が変動していることがわかります。
この数十年は温暖化してきたのですから、そのうちに寒冷化がまた始まります。

【図1】屋久杉に刻まれた歴史時代の気候変動・(北側浩之)
屋久杉に刻まれた歴史時代の気候変動

- 槌田先生は、昔から寒冷化を心配されていましたね。

槌田 600年代の飛鳥期から900年代の平安期まで、 そして1700年代の江戸期から現在までは、細かく変動しながら、どちらも300年間で4℃ぐらい温暖化しました。 温暖化なら食糧が採れるので、どちらもいい時代なのです。 寒冷化すると食糧が不足します。すると、世界は大混乱しますから、 寒冷化の方がずっと大変で、それに備えようと警告しているのです。

●8000年で見ると寒冷化

- では、変動しながらも、300年ぐらい温暖化してきたのが現在ということですね。

槌田 それだけではありません。もう少し長期的なスパンで見ると寒冷化しています。 【図2】を見てください。8000年前から現在までの気温曲線で、縄文時代前期は今より暖かかったのです。 それが3300年前の寒冷化で縄文文化は大きな打撃を受け、2600年前に温暖化したころ、弥生時代が始まりました。 最近の3000年間では3回の寒冷期があり、その度に、激しい戦争と、民族の大移動がありました。 気温は変動を繰り返していますが、8000年にわたる流れを図で見ると、寒冷化に向かっていることは明らかです。 私は、この長期的な寒冷化傾向も重視すべきだと主張しています。

【図2】尾瀬ヶ原ハイマツ花粉分析による古気温曲線
     8%基準線は±3℃に相当する

尾瀬ヶ原ハイマツ花粉分析による古気温曲線
(坂口豊論文、専修人文論集51巻1993)

- さまざまな波があるわけですね。

槌田 そうですが、温暖化の後は寒冷化に決まっているのです。 数十年という短期の変動に注目するのであれば、次は寒冷化ですが、「ミニ氷河期」と言われるほどになるのかどうかはわかりません。

●資源浪費を防ぐのが優先

- CO2は温暖化ガスではないのですか。

槌田 温暖化ガスの代表格は水蒸気です。 寒い冬でも、夜中に雲があるとあまり冷えないでしょう。 このようなことを少し考えれば、水蒸気が最大の温暖化ガスであることは明らかです。 それに比べれば、CO2は本当に温暖化に関与しているのかわからない程度の存在です。 それを最大の温暖化ガスとしているところからして、CO2温暖化説はおかしいのです。

- 槌田理論を基に、私たちが「CO2を出してもかまわない」と言うと、「浪費を進めるのか」と、誤解されることもありますね。

槌田 われわれは「石油や石炭を減らして、資源の浪費を防ごうと」と言っているのです。 ところが「石油や石炭を使った後に出てくるCO2を減らそう」とすりかえられ、多くの人はわけがわからなくなったのです。それで、 どうでもいいCO2を「減らそう」と言っているのです。

- どうして「CO2を減らそう」となってしまったのですか。

槌田 1986年のチェルノブイリ原発事故で、原発の建設が世界中でストップしました。 そこで、原子力業界は各国政府に働きかけ、CO2温暖化説を唱える研究者に莫大な研究費を出させたのです。 つまり原発業界が仕掛けたワナなのです。

- 多くの人は「ワナ説」を認めないと思いますが、1999年に私たちが開いた公開討論会で、原子力 委員会専門委員の中村政雄氏が「原子力の人は乗っかっただけ」と、働きかけたことを認めたことがありましたね。

槌田 大気中のCO2濃度を正確に測定するには、工場や火力発電所の排ガスが直接影響を与えないように、 南極やハワイの山の上で測定しなければなりません。そうしたことも含めて、研究には莫大なお金がかかるのです。

●「CO2地球温暖化説」は間違い

- CO2の増加による地球温暖化説は間違っていると、槌田先生は学会で論争されていますね。それは、どういう内容ですか。

槌田 気象学者のキーリングが、CO2濃度を長期にわたって計測したのです。 するとCO2増加と気温上昇が一致したので、CO2の増加が地球を温暖化させていると警告しました。 これがCO2温暖化説の原点です。その後、キーリングは、より詳しく気温とCO2濃度の前後関係を比べました。 その結果は、気温の変化がCO2濃度の変化よりも1年ずつ早く生じていることを見つけて、発表しました。 気温が原因でCO2濃度は結果なのです。これは、根本順吉氏の『超異常気象』(中公新書)に引用されています。

- それからどうなったのですか。

槌田 このキーリングの研究は、CO2濃度について長期的傾向を除いて整理するという欠点がありました。 これでは短期的には気温が原因でCO2が増えることになっても、長期的には気温が原因といえるかどうか、わからないことになります。 そこで、共同研究者の近藤邦明さんと私は、長期的傾向を除くことなく、 気温そのものとCO2濃度の変化率の関係を示すデータ【図3】を得ることに成功しました。

【図3】世界平均気温偏差(℃)と大気中CO2濃度の変化率・(ppm/年)
世界平均気温偏差(℃)と大気中CO2濃度の変化率
この図では、1969年から2003年まで34年間にわたって気温とCO2の変化率が見事に対応しています。 変化率とは年間増加量と同じですから、気温によりCO2濃度の年間増加量が決まることになります。 つまり、気温の上昇が原因で、CO2濃度が増えることが実測データで証明されたのです。 これに対して、人為的なCO2が原因で温暖化したという通説では、この【図3】を合理的に説明できません。

●始まったCO2温暖化裁判

- 今回は、決定的にCO2による地球温暖化説を否定できたわけですね。

槌田 そうです。そこで、気象学会の会員でもある私は、近藤さんと共著論文を書き、気象学会誌に投稿しました。 すると、気象学会は【図3】を事実と認めながら、この論文の掲載を拒否し、私の口頭発表も拒否したのです。 人為的CO2による地球温暖化を唱える気象学会にとって、【図3】の事実は都合が悪いので、ないことにしようとしているのです。 これが科学者のすることでしょうか。

- 政治と同じですね。

槌田 それで、気象学会を相手に東京地裁に提訴しました(5月27日)。 ガリレイ裁判は、天動説に対する地動説の「宗教裁判」でした。 私の場合は、CO2で温暖化するのか、それとも、温暖化したからCO2が増えたのか、という「科学裁判」になります。 人為的CO2温暖化説を利用して、放射能を大量に残す原子力発電が世界に拡大しているので、 これに少しでも歯止めをかけるためにも、裁判に勝ちたいと思います。 そして、「CO2による温暖化」というバカ騒ぎを止め、【図1】や【図2】から予想される寒冷化に備えて、できるだけ早く準備を始めねばなりません。

月刊誌「食品と暮らしの安全」2009年9月1日発行 No.245

>>ミニ氷河期前兆?(月刊誌「食品と暮らしの安全」2009年9月号No245)

以下は武田邦彦教授より

もともと温暖化は、
1)500年ごとの寒暖の変化で、今は温かい気候のピークだ、
2)今年は日本は暑いが、日本より暑いはずの東南アジアは普通の気温、
3)21世紀に入って12年になるが、気温は僅かに低下している、
4)IPCC(国連の温暖化機関)が大がかりなデータ偽造があった、
5)NHKや日経新聞を中心としてこれまで温暖化の誤報が相次いだ、
(ツバル報道、NHKの児童向けホッキョクグマの歌などの大規模誤報)
などで動きが取れないのだ。

今年の猛暑は、第一に都市化、第二に高気圧の配置、第三に地球全体の温暖化(太陽活動など)によるもので・・・お知り合いの先生から次のデータをお送り頂きました。今年はペルー沖の温度が低く、太平洋全体では日本の周辺の海水温が高いようです。(この部分を追加しました)

Bandicam_20130816_115803684 

数年前からハッキリと予想されていたのだから、政府や自治体は猛暑対策を準備しておかなければならなかった。そのころ、CO2を減らそう、エアコンを控えようなどと言っていたのだから、まったくダメな政府だ。

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