生き物ざっくり物語 ツケナざっくり
畑で暮らす生き物の奥深き生き様を、ざっくりと物語ります。今回はツケナについて。
ヒトが食べる作物には無数の種類がありますが、それらの作物を祖先を同じとする家族に分類することができます。「アブラナ科アブラナ属」はとても大きな家族で、この中に含まれている作物はみんな、開花時期を迎えると十字の形をした黄色い菜の花を咲かせます。コマツナ、ミズナ、ミブナ、チンゲンサイ、サントウサイ、ノザワナ、ターサイ、カラシナ、タカナ、ナタネ。葉の部分が食べられる葉物作物の多くがアブラナ科アブラナ属に含まれます。昔からヒトはこれらの葉物作物を漬物として利用することが多かったため、これらの作物をまとめて「ツケナ」と呼ぶこともあります。ちなみに同じ葉物作物でも、ホウレンソウは開花時期に黄緑色の小花を咲かせるアカザ科の作物で、シュンギクは開花時期にキクのような花を咲かせるキク科の作物で、それぞれツケナとは違う家族です。
ツケナの祖先は地中海周辺で誕生して東アジアへ渡り、中国で野菜として食べられるようになり、いくどこかの時代に日本に伝えられて各地でツケナとして独自に発達していきました。ツケナが黄色い菜の花を咲かせる頃、蜜を求めてハチなどの虫が花の周りを飛び交います。虫の体に花の花粉がくっつき、虫によって他の花に花粉が運ばれ、それで作物は受粉して種を作ります。違う形をした違う性格のツケナどうしでも簡単に受粉できます。それで作られた種からは、両方の親の性質を合わせながらも新しい性質も持ったツケナが生まれます。このようなツケナの性質を「雑然性」と呼びます。
もともとはツケナの祖先は川で生まれ、葉がなるべく水に浸からないように葉柄の上のほうに葉を広げていました。やがて川から離れて陸でも生育するようになると、直射日光による地温の急上昇や夜の地温の冷え込みから自分の身を守るため、袴をはいたような葉柄の下から上まで葉を広げた形をしたツケナが誕生しました。風が強い場所では風による衝撃を和らげるため、葉先を剣のように細くとがらせた形をしたツケナが誕生しました。このように、その雑然性を利用して、その環境に合わせてツケナは新しく葉の形を変えていき、各地で多彩な種類のツケナが登場しました。ツケナは常に均一であることを嫌い、変化して雑然とすることを好みます。そして、あらゆる環境に対応してゆきます。
ツケナは収穫した後の保存が効かなく、毎日少しずつ食べる野菜なので、ヒトは収穫時期がずれるように、一度にいっぱいツケナの種をまかず、時期をずらしながら少しずつ種を播きます。真冬と真夏でなければ、種を播けば発芽します。秋に種をまくと、生育するにつれて気温が下がっていくため、葉の厚いしっかりとした株に育ち、寒さにあたって糖分が増えて味の良いツケナが収穫されます。
コマツナなどの生育は早く、適温であれば種まきしてから1カ月ほどで収穫時期を迎えます。コマツナの食べ頃は25センチくらいの大きさになったとき。柔らかくて、ヒトはおひたしやお吸い物に利用します。これ以上大きく成長すると葉は固くなりますが、ヒトは大きなコマツナを煮ものや浅漬けに利用します。
春になって暖かくなれば、ツケナは茎を伸ばしてつぼみをつけます。ヒトはその花茎をかきとって、春の食材として利用します。また、ツケナの一種、ナタネは、花が開花して種をつけた後、ヒトはその種を集めてしぼって、油をとります。
参照 農文協 編・野呂孝史 絵・岡田慶隆 「そだててあそぼう90 菜っ葉の絵本」
藤井平司著 「図説 野菜の生育 本物の姿を知る」
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