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2013年6月 3日 (月)

みんなが暮らしていける場

  先日、市民団体が主催した映画鑑賞会に足を運びました。美しい水田が広がる農村が舞台。主人公は対人恐怖症のため何年間も家にひきこもった生活を送っている女性。

その女性がひょんなきっかけで農家と手紙で交流することになり、やがて農村に通って農作業を手伝うようになります。豊かな自然の中、農家の優しさに見守られながら、女性が次第に立ち直っていく姿を感動的に描いていました。

  農家が積極的にひきこもりの人々を引き受ける例はよく聞きます。それだけでなく、障害者や研修生なども受け入れる農家も少なくありません。

農家には他所からきた人を宿泊させられる敷地があるし、自分の田畑から作物を収穫してきて人に食事を与える余裕もあります。農地には人手のいる仕事もたくさんあり、草むしりなど、誰にでもできるけれどもとても大事な仕事を人に与えることもできます。

私が農家として独立する前、現在の小林農場の地主さんの農場で農業研修を受けていました。農場には地主さんご夫妻の他に、農場のスタッフや農家として独立を目指す農業研修生たちなど、十数名の農場で働く人々が寝食を共にして暮らしていました。

地主さんはいろんな人々が暮らしていける空間を農場に作っていこうという高い志をお持ちだったようで、知的障害者の人々を受け入れるためのグループホームも農場に設立していました。障害者の人も障害者じゃない人も共に農作業に励んでいました。

私と共に農作業をして何年も前に農場を巣立っていったグループホームの人とは、今もときどき顔を合わせておいしいラーメン屋を食べ歩いたりしています。農場で暮らした思い出話を何度も繰り返します。農場での経験は彼にとって忘れ難いものなのでしょう。

地主さんは、ひきこもりの人を農場に受け入れることもありました。その人は何年も農場で暮らしているうちにすっかり明るくなり、「自分とじっくりと向き合える時間を与えてくださってありがとうございます。」とお礼を述べて、元気に農場を巣立っていきました。私が先日観た映画のような光景を目の当たりにしてきました。

農業では自然と触れ合います。自然は、人の言葉では伝えられない大切なことを教えてくれます。農場で暮らしているうちに、元気がない人が元気を取り戻し、心に傷を負った人が癒されていくことは、不思議なことではありません。

私は若い頃、大学もまともに卒業せず、どこにも就職せず、いったいどうやってこの社会とつきあってよいのか悩みを抱えたまま、農業を研修し始めました。社会経験の乏しい私はどうしようもない失敗を繰り返しましたが、地主さんは何度も私に仕事を与えて経験を積ませてくれました。そして、農場の敷地の一部を私に貸していただき、私は小林農場 風家(かざいえ)を設立して、念願の新規就農を果たしました。

そう、この私こそが農業によって自分の居場所を与えられた人間なのです。みなさんにおいしくて安全な野菜をお届けするだけではなく、あらゆる人を受け入れていく懐の深い農業のすばらしさをお伝えしていければよいと思います。

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