農という芸術
料理用油の自給を目指して、約1反(1000㎡)の広さの畑でナタネを栽培してみました。ナタネの種には油が含まれていて、ナタネ油の原料となります。6月には熟した種を採種して、搾油所で種をしぼってもらい、自家製ナタネ油に加工してもらう予定です。
4月の中旬あたりには、つぼみのついたナタネの茎がニョキニョキと伸びてきたので、それらのつぼみを摘んで、食用の「菜の花」としてみなさんにお届けしました。数えきれないほどたくさんのナタネがみんな違う時期につぼみをつけるので、けっこう長い間、「菜の花」の収穫を楽しめました。
「つぼみを摘んでしまったら花が咲かなくなって種がとれなくなってしまうのではないか?」などと心配する必要はありません。多くのつぼみが小林に摘まれてしまう前に、さっさと黄色い花を咲かせていました。花は固くて食用にむかないので、収穫いたしません。私が収穫したつぼみは、広いナタネ畑のほんの一部分です。
4月下旬頃から、ナタネは十字状の黄色の花をいっせいに咲かせました。1反の広さもある畑が黄色に染まっていく風景は、とてもきれいでした。
昔は多くの農家がナタネを栽培していたので、「菜の花畑」はどこでも見られた風景だったようです。効率を求める現代の農業では、収益性の低いナタネ栽培は激減してしまい、ナタネを農家の畑で見ることがなくなりました。昔の「菜の花畑」を小林農場で再現できたこと、誇りに思います。
近所の方々が、私と顔を合わせる度に、「菜の花、きれいだね」とほほ笑んでくれます。菜の花畑は、通りがかった人達の目を楽しませてくれています。ナタネは、近所の方々と私の間に共有できる風景を与えてくれました。
ちなみに、私の父と母も、「菜の花畑を見てみたい」と、何年かぶりに東京の実家から農場まで足を運んでくれました。
6月は、ナタネだけではなく、麦の収穫の時期でもあります。麦の刈り取りの季節は、梅雨の時期なのですけれども、「麦秋」と呼ばれています。麦が金色に熟した畑がまるで秋の風景のように見えるからです。春の菜の花畑と並んで美しい光景です。
現在、農業を継ぐ人が減っているため、いくつかの田畑は耕作を放棄され、草がぼうぼうと生い茂ってジャングルのようになってしまっています。痛々しい風景です。人が管理しなくなれば、その土地は自然本来の姿に戻っていくのでしょうが、それは人が足を踏み入れることのできない荒々しい野生の世界です。
田や畑は、この自然界で自分たちが暮らしていくために農家がせっせと築いてきた空間です。その汗が結晶となり、田畑の風景は人の心に残る芸術と化していきます。
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