絶え間ない贈り物
去年の冬に、防寒のために、畑から収穫した大根を深い溝に埋めて、その上にたっぷりと土をかぶせておきました。出荷する度に一本一本、土から掘り出してきました。
3月の下旬、春を感じさせる陽気になる頃、冬には葉が枯れてなくなっていた大根から再び地上に新芽が現れ、気温が暖かくなるにつれてぐんぐんと茎と葉を伸ばしていきます。地下の根部にためていた養分は地上の茎と葉に吸い取られていくため、食用部分の根部は筋っぽくなったり傷んだりします。こうなるともう、出荷はできません。
通常は、地上の茎が高く伸びたら、それを合図にしてもう出荷は打ち切ります。ただ、3月下旬から5月下旬までは野菜の端境期(はざかいき)、他に出荷できる野菜が少ないので、できるだけ長く大根を出荷してみることにしました。
茎を伸ばしている大根を、出荷する前に試食してみました。包丁で切って中身を確認すると、肌はなめらかできれい。食べてみると意外にも柔らかくておいしので、茎を伸ばしている大根でも、茎を切り除いて出荷することにしました。
さらに季節が進み、大根の地上部の茎につぼみができました。さすがにこうなってしまうと地下の根部はまずくて食べられないだろうと思って試食してみると、これがまたまた柔らかくておいしい。つぼみがついている大根でも、茎とつぼみを切り除いて出荷することにしました。
出荷できるかどうか確認するため、出荷する前に必ず試食。おいしければ出荷。こんなことを繰り返していたら、去年種を播いて育てた大根、人参、ゴボウなどが、今年の5月まで、かなり長い期間を貯蔵して出荷できました。端境期の貴重な一品となりました。
ただ、舌に敏感で味を見極めることのできる方々は、長い間土の中で貯蔵されていた大根の味よりも、収穫適期を迎えたばかりの新鮮な大根の味がおいしいと感じると思います。あまりに貯蔵限界ギリギリの作物を無理して出荷し続けるのは控えたほうがよいと思います。おいしくて新鮮な野菜をできるだけ端境期にもみなさにお届けできるように、新たに栽培作物の種類を増やすことにしました。
例えば、アスパラガスの種を播いてみました。端境期に収穫できる希少な作物です。アスパラガスは種まきしてから収穫されるまで2年もかかるので、みなさんにお届けできるのはずっと先の話ですが、いずれは春の訪れを告げる使者として、みなさんの食卓に小林農場のアスパラガスが登場することでしょう。
鮮度が落ちずに貯蔵できる落花生もたくさん栽培しておくとよいと思います。今年は小麦も栽培しているので、小麦粉やうどんなどに加工して端境期にセットに入れるのもおもしろいと思います。4月頃から収穫できるシイタケもいずれは栽培してみたいです。
どんな季節でも野菜セットの内容を充実させ、年中絶え間なく、野菜を通してみなさんとお付き合いをしていければと思っています。年々、端境期の野菜セットの内容が少しずつ充実してきています。いずれ、「端境期」と呼ばれる季節は消滅するかもしれません。
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