端境期
毎年、この時期は、野菜は端境期(はざかいき)を迎えます。3月下旬から5月にかけて、1年で最も収穫できる野菜の種類が少なくなる時期です。
1年で最も寒くて畑全体が眠ったように静まりかえる真冬でも、今の時期よりも多くの野菜を出荷できます。冬は低温なので、白菜やかぼちゃなど長期間、室内で貯蔵しておくのに都合が良いのです。春になって暖かくなると、貯蔵が効かなくなり傷み始めて、出荷ができなくなります。今年はサトイモも同じ理由で、保存が保てなくなってきています。
油菜、みず菜、ターサイなどの冬の葉物野菜は耐寒性があり、寒さに耐えます。しかし、春になると待ちかまえていたように、茎をにょきにょきと高く伸ばしてつぼみをつけ、花を咲かせ始めます。こうなると、葉は固くなり、出荷はできなくなります。
冬の間、畑の地中に保存していた大根、人参、ゴボウからは新芽が地上に伸びてきています。根から新芽のほうへ養分が吸い上げられてしまうので、食用部の根が筋っぽくなりやすく、良い状態で出荷をするのが難しくなっていきます。
一方で、冬から春先にかけては気温が低く、露地に作物の種を播いても発芽はしないし生育もしません。露地に種をまけるのは早くて春分(3月中旬)の頃。それらが育って収穫されるまでは、5月に入る頃まで待たなくてはいけません。
このように、作物の新旧交替期となることから、この時期は品薄となります。昔の人々は、冬から5月くらいまでほとんど青物野菜が食べられず、ウドやタラの芽などの山菜、ツクシやタンポポなどの野草を山野から大切に摘んで食べていたようです。
今の時代はビニール資材を活用して保温しながら、どの時期でも何かしらの作物を畑で栽培できるようになりました。小林農場では、立春(2月上旬)を過ぎた頃に数種類の作物の種をまき、その上にトンネル型にビニールを張って保温しました。このようなとても簡単な資材だけで、真冬でも種を発芽させて栽培することができます。4月上旬頃から収穫できます。
旬の季節での栽培を心がけている小林農場としては、ビニール資材を使って作物の生育を通常よりも早めるのは、本来のやり方ではありません。しかし、この季節だけはビニール資材を使わないと本当に何も出荷できなくなってしまいますので、この季節のみ、ビニール資材を積極的に使用しています。
他にもいろいろと「端境期対策」を練らないと、野菜セットに入れる野菜が足りなくなります。いざ、畑から出荷できるものがなくなったら、温存しているラッカセイ、小豆、赤唐辛子などの乾物、切干大根、干しいもなどの加工品も野菜セットに入れていきます。
端境期はどうしても野菜セットの内容が落ちます。いかにしてその落ち方を最小限にくいとめ、みなさんが納得してくださる野菜セットをお届けできるか。プロの農家の腕のみせどころです。
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