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2013年4月22日 (月)

小さな種の大きな話

(4月9日の農場通信より。一部改訂)

奥深き植物の種の世界。前回の農場通信で作物の種の話をいたしましたが、今回はその続きです。

「種を支配すれば世界の食糧を支配し、世界経済を支配できる」。今、世界中の大手の種苗会社の間ではすさまじい経営戦略が繰り広げられています。

最近、大手種苗会社でターミネーター・テクノロジーという遺伝子組み換え技術が開発されたようです。普通は植物は種を作り次の年にその種が新たに発芽しますが、遺伝子操作されたこの作物は種は作るものの、その種は発芽せずに毒素を出して「自殺」します。

これにより、農家はその作物から自分で採種することが不可能となり、毎年、種を種苗会社から購入しなくてはいけなくなります。それが大手種苗会社の狙いです。

営利目的のために遺伝子という「神の領域」をいじくりすぎてしまったことにより、それが地球上でどのような結果をもたらすか、まったくわかりません。もし何かのきっかけでこの遺伝子組み換え作物が野生の植物と交配して自然界に広がれば、植物の種がみんな「自殺」するようになり、地球上から植物がなくなってしまう・・・。そんなSF小説みたいな話が現実に起こるかもしれません。

食の自給のためにも、生物多様性のためにも、そして大手種苗会社の支配を受けずに農家が独立を守るためにも、農家が自分で作物の種を採種することは大切だと思います。

現在、農家が扱っている種はほとんどがF1種です。小林農場の作物もほとんどがF1種です。前回の農場通信でお伝えしたとおり、F1種からはなかなか良質な種を採りにくく、自家採種には不向きです。小林農場でも、今まで自家採種をしてきませんでした。

自家採種をするには、何世代も栽培され採種され続けてきた固定種の種が必要です。しかし、F1種が広く支持されている現在、固定種を見つけて入手するのは困難になっています。埼玉県や静岡県で固定種の種を専門に扱っている個人が運営している希少な種苗店があるので、そちらから何度か固定種の種を取り寄せています。

今まで長く親しんできたF1種から新たに固定種に切り替えることは、農場経営上、度胸のいることです。現在、小林農場では、F1種と固定種の作物をどちらとも栽培するようにしています。F1種の生育の様子と比べながら、固定種との付き合い方を探っています。そして、できるところから、自家採種を始めてみたいと思っています。

「まだ地方に細々と残っている固定種の種を日本中にばらまきたい。そして種のもつ多様性の花を開かせ、地域地域に合った新品種に変化させたい。」前述の固定種専門の種苗店の方はこのように語り、農家に自家採種をするように呼びかけています。農家が種を購入せずに自家採種をしたら種苗店の収入は増えなくなってしまうのではないかと余計な心配をしてしまいましたが、このような種苗店は、営利目的以外にもっと大切な価値観をお持ちなのだと思います。前述した一部の大手種苗会社とは、対極の立場です。

農家として、このような種苗店を大切にしていきたいと思っています。

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