最近、私が気になった記事をご紹介いたします。今回も原発問題について。
エネルギーは電気だけでまかなわれるものではない。むしろエネルギーをすべて電気に頼るような生活こそが原発抜きではいられない状況をつくってきた元凶ではないか。
それはこういうことだ。オール電化住宅では照明や家電だけでなく、風呂などの給湯、暖房、コンロ(厨房施設)までも電化し、家庭で使うすべてのエネルギーを電力会社から購入するように仕向けられる。給湯、暖房、コンロ……これらはすべて熱エネルギーだ。
じつは家庭で消費するエネルギーのうち、熱エネルギーが占める割合は照明や家電などに使うエネルギーよりはるかに大きい。そのため、オール電化住宅では通常の住宅の約3倍の電気を消費する。暖房費のかさむ、東北電力管内では4倍にもなるという。
石油やガスといった燃料を直接暖房や給油に使うとその効率は80%を超える。しかし火力発電所の発電効率は40%程度。本来給湯や暖房を電気でまかなうのは非常に効率が悪いことだ。オール電化住宅は快適なようで、エネルギー効率からすれば非常にロスが多いのだ。
ではなぜそんなばかばかしいことをすすめるかと言えば、電気の需要を伸ばしたいからである。日本では人口の減少や省エネの進展によって電気需要が構造的に減少することが見込まれている。そのなかでオール電化住宅による熱の電化は、電力の大きな新規需要を生み出してくれる期待の星なのである。大きな電力需要を生み出すことができれば、まだまだ電気が足りないから原発を推進する、という論理にもつながる。
そのオール電化住宅がこのたびの東日本大震災でたちまち機能不全に陥ったことは記憶に新しい。
脱原発を目指すなら、この逆を行けばいい。熱と電気を分けて考え、もっとも無駄な熱の電化をまずやめ、ついで熱源として石油やガスに頼る度合いを減らして再生可能エネルギーに置き換えていく。次に、いまのところ電力でしかまかなえない照明や家電などを再生可能な電源から供給する。
熱源となる再生可能エネルギーとしてもっとも有望なのが、備蓄型の自然エネルギーであり、太陽エネルギーをため込んだともいえる木であり、薪なのである。
日本では木とか薪のエネルギー利用と言えば、なにか昔の話のように思われている。しかしヨーロッパでは再生可能エネルギーのうち森林(木質)バイオマスが約半分を占める。
ヨーロッパの再生可能エネルギーの中心は森林バイオマスであり、そのベースはいまでも薪なのだ。森林バイオマスについて言えば、日本は非常に条件に恵まれた国といえる。国土の3分の2を森林に覆われているような国は、先進国では日本のほか、フィンランドとスウェーデンぐらいしか見当たらない。しかし薪の生産量をみると日本はフィンランドのわずか1000分の1なのである。
ヨーロッパでは薪をベースとしながら、大きな薪ボイラーやチップやペレットの利用、地域熱供給システムも含めて森林バイオマス活用の仕組みが日々進化している。日本もせっかくの恵まれた資源をもっと生かしたい。
それではいったいどれだけの資源があれば、コミュニティのエネルギー自給が可能になるのだろうか。
小林氏(茨城大学教授)によって、まず熱から見ていこう。一世帯が暖房に使う熱量は年間約9500MJ。これをすべて薪でまかなうとすれば必要な薪の量約500kg(約100束)、仮に効率を50%としても1000kgあれば間に合う(もちろん木質チップやペレットでも構わない。太陽熱なら、5~10m2の集熱施設があれば足りる)。給湯もほぼ同じくらいの薪でまかなえる。
薪1000kg/年はおおむね0.2haの森林の1年当たりの木材蓄積量に相当するという。暖房と給湯を合わせれば2000kg/年、0.4ha分だ。平均的な30戸の集落であれば12haの森林があれば、その毎年の蓄積量でまかなうことができるというわけだ。
一方、30戸の集落で必要な電力は、15~20kW程度の小水力発電でまかなうことができる。これに農作業や輸送に必要なエネルギーを電力換算して加えても、その2倍くらいの施設容量があれば十分だという。
この程度の条件はどのむらにもありそうではないか。
(現代農業 2013年3月号)