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2013年3月12日 (火)

回想 3.11

東日本大震災が発生してから2年。同じ頃に小林農場 風家(かざいえ)が設立されてから直後の出来事でした。以下は震災後の混乱の中で私が書いたブログの記事を再公開してみました。この記憶、風化されることがないように。

(平成23年4月5日の記事より)

拝啓

季節は清明、春たけなわの季節となりました。みなさん、いかがおすごしでしょうか。

小林農場のある栃木県芳賀郡は、地元の作物を地元の食材として消費する、地域内の食の自給を大切にしている土地柄があります。地元の小学校や中学校の学校給食に作物を出荷している地元の農家のグループがあり、小林農場も参加させていただくことになりました。

先週、そのグループの集会に初めて出席してきました。高齢ながらも販売意欲の高い農家の方々の元気っぷりに、圧倒されてきました。

会議が一通り終わった後、しばらくみんなで雑談をしながらすごしました。必然的に東日本大震災や福島原発事故が、話のネタとなりました。参加者の中には、被災して自宅の修復のメドがたたない方もいらっしゃいましたが、その表情は明るく、地元の仲間との語らいを存分に楽しんでいるようでした。何度か余震が音を立てて会議場を揺らす中でも、みなさんの笑い声が絶えることがありませんでした。

福島原発事故の放射能漏れにより、栃木県ではホウレンソウなどから規制値を超える放射線が検出され、それらの品目は出荷を規制されることになりました。県は放射線と接触しやすい作物や出荷量の多い作物から優先的に検査を行っているようですが、手が回りきれず、すべての品目を検査しきれていないのが現状のようです。

ホウレンソウは出荷が規制されましたが、同じ葉物野菜で同じように放射線を浴びているであろう小松菜は規制されていません。県の職員の方に問い合わせてみると、小松菜はまだ検査をされていないとのことでした。

厳密に検査するにも限界があります。実際に栃木県産の野菜は放射線を浴びているわけで、消費者にはその事実を伝えて、買うか買わないか、消費者の判断に委ねるべきです。「ホウレンソウ以外の栃木県産の野菜は全て、放射線の問題はない。」と宣伝すれば、消費者に嘘をつくことになります。

農場の畑で収穫時期を間近に控えた小松菜を、腕組みしながら眺め、しばらく考え込みました。この小松菜を出荷して人に食べてもらう上で、安全面において、本当に大丈夫なのだろうか?私のまわりの農家では、同じように悩み、良心に問い、涙を飲んで露地野菜全ての出荷を自粛する方が相次ぎました。

各自治体が大気中や水道水に含まれている放射線量を毎日測定して、公表するようになりました。これらの放射線量の数値が、自分の身の回りや自分が育てている作物が安全かどうかを確かめる指標となります。ただ、これらの数値の解釈はまちまちで、「この数値なら問題ない。」と語る専門家がいれば、その逆を語る専門家もいます。

4月中旬ごろには、県は土壌の放射能汚染の分析結果を公表する見通しです。今は不明なことが多くて悶々とした状態ではありますが、次第にいろんなことが明確になり、対策をたてていけると思います。

今、私ができる大切なことは、浮き足立つことなく、普段通りに畑に種を播いていき、普段通りに畑仕事をこなしていくことだと思います。まずは仕事を進めていかないことには、何も道は見えてきません。

当初は五月より農場の会員を募って野菜セットを販売していこうと考えていましたが、福島原発事故がもう少しおさまるまで、販売を延期したいと思います。農場の会員となってくださった方々とのお付き合いを、できるだけ落ち着いた状態で始めたいと思っています。

一方で、地元の学校や飲食店をまわって、販売先を探している最中です。地元との農作物を通したお付き合い、今後の私の暮らしの中で重要になると思います。大切にしたいです。

農家として独立する前に用意しておいた独立資金が手元に残っているので、独立一年目は収入が多くなくても、自分一人だけの生計をたてていくのに困ることはないでしょう。経済的に余裕を残しているうちに販路を開拓しておきたいと思っていますが、焦らずにやろうと思っています。

楽観も悲観も入り混じった嵐のような天候になりましたが、小林農場 風家(かざいえ)、これより、出航いたします。いざ!

(平成23年4月23日の記事より)

拝啓

季節は穀雨、花便りしきりの今日この頃です。みなさん、いかがおすごしでしょうか。

四月、いろんな種が播かれる時期です。暖かくなるのを待ってから、大根を播種。他にも、小松菜、山東菜、からし菜、二十日大根などの種も三月に引き続き、播き続けています。

種まきは、種の発芽を催してくれる恵みの雨が降る少し前に行うようにしています。ところが、四月半ばに降った激しい雷雨は、短時間ながらも畑の表面を強く叩きながら落ちてきました。後には、粘土質の畑の土の表面は、おせんべいのように固まってしまいました。

雷雨が去ってから数日たっても、播いた種から芽が出てきません。土の表面をそっと掘り返して確かめてみると、土中で種は発芽しているものの、「おせんべい」が上にのっかているため土の表面にまで芽を伸ばせず、日に当たらないまま、もやしのようになっていました。

一念発揮して、種を播いた播き溝を全部、手で、表面の「おせんべい」をぱりぱりと取り除いてみました。発芽したばかりの芽を傷つけてしまわないか少し心配しましたが、そんな私の気持ちに応えてくれたのでしょう、表面に現れた時はもやしのように色白だった芽は、数日後には、青々とした双葉に変わり、今は順調に育っています。

東日本大震災や福島原発事故などの歴史的な大災害、大事故に気を奪われてしまう毎日ですが、今の私がなりよりも目を向けなくてはいけないのは、自分が管理している畑です。農業を続けていくには、もっと作物と四つに組んで技術力を上げていく必要があると、痛切に感じています。

福島原発事故による畑への放射能汚染の影響を調べるため、4月の中旬、小林農場のすぐ隣の地主さんの畑の作物が分析センターに送られ、その分析結果を地主さんより教えていただきました。

検体として選ばれた品目は、一番放射能汚染を受けやすいと考えられているホウレンソウです。検体に付着していたり体内に取り込まれている放射線の総量を測定してもらいました。その結果、放射性ヨウ素は17ベクレル/kgととても低い数値で、長期間分解さずに土壌に残ると言われている放射性セシウムにいたっては、全く検出されなかったとのことでした。

3月12日に福島原発事故が発生したとき、地主さんの畑のホウレンソウには防寒用の布がかけられていて、放射性物質がホウレンソウに付着することから避けられていました。また、雨の日には必ずホウレンソウの上にビニールを張って、濃縮された放射能物質を含む雨が当たらないように防いでいました。

現在は福島原発から漏れてきている放射線量は、かなり少なくなってきています。最も放射能が大量に放出された事故発生してからの数日間を、地主さんの適格な対処により作物への被ばくを防いだことが、今回の分析結果に現われたのだと思います。

放射性物質は、大気から地上に積もり、しばらくしてから土壌に染み込んでいき、作物の体内に移行していくと考えられます。ホウレンソウの放射性物質の数値がとても低かった今回の分析結果を見ると、この地域の土壌の汚染度はかなり低いと考えてよいと思います。

この分析結果を受け、これより、小林農場の野菜を買って食べてくださる方々を本格的に募っていこうと思います。このブログの画面の右側の「カテゴリー」の中の「大切なお知らせです」をクリックしていただくと、小林農場の野菜セットの内容を御覧になることができます。

放射性物質があらゆる環境に大量に残留する今の段階では、福島県やその周辺の県の農作物や魚介類を摂取することは安全とは言えないとの意見はあります。それでもこれらの産地の農作物を買ってくれようとしてくれた消費者の方々の気持ちに感謝しています。

ただ、福島周辺の作物が放射能を浴びて放射線が検出されていることは、風評ではなくて事実です。規制値を超えていなくても、できるだけ放射線を浴びた作物を避けようとする消費者の方々の判断もまた、尊重されるべきだと思います。 

私は今まで、安全な食べ物を作ることに誇りを感じてきました。そして今、少しでも放射能が検出されているような作物を出荷してしまっていいのだろうかと迷いました。

ただ、この土地で食を自給していく営みを続けることが一番大切だと考えています。この土地で作物を作り続け、その作物を自分で食べるのはもちろん、この豊かな自給の営みを支えてくれる方々にもお届けしていこうと思っています。

食を自給していける生産の場は、私だけではなくみんなの貴重な財産です。その宝を私は守りたい。そのためには、作物を作って売って、農を営み続けていく事が大切なのです。

法律で定められている規制値を超えるような高い放射線量が畑から検出されるような状況になれば、即、出荷を停止。そうでなければ、出荷。これが小林農場の基本方針です。そして、前述したとおり、小林農場のすぐ隣の地主さんの畑のホウレンソウが規制値より大きく下回った分析結果から、現段階では農場周辺の汚染度は低いとみています。

これから農場の野菜を食べてくださる方々と信頼関係を築いていく上で大切な時期です。多少お金をかけても、定期的に畑の放射能の数値を検査して結果をお知らせしていくことも考えています。

一方で、福島原発周辺の福島県東部では、土壌が高度に汚染されてしばらく作物の作付けができなくなった地域も現れ始めてきてます。これらの地域の農家の方々がどのような想いを抱きながらこの非常時をすごされているのか、私には想像もできません。

福島原発事故は未だ収束せず、これは長期戦になる見通しです。しばらくの間、放射線は私達の生活にまとわりつくことでしょう。この与えられた条件の中で、できうるかぎり安心して食べていける作物を作るように、最善を尽くしていく決意です。

今、多くの人々が、食の安全やエネルギー問題に強い関心を持つようになりました。偶然とはいえ、農場経営を始めるには、とても良い時期と考えることもできます。早く農家として生計を成り立たせるようになり、多くの人々と環境問題について語り自分たちの生活を見直していける場を作れるように、もっとがんばろう、小林農場。

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