良いも悪いもない万象
(1月21日に作成した農場通信より。一部改正)
人は誰しも、まわりの人の支えなしでは生きてはいけないように、畑に育つ作物もまた、まわりの生き物たちの助けを借りながら生育していきます。
土壌の中には数えきれないほどの、人の目には見えない小さな微生物が暮らしているといわれています。土の中の有機物を微生物が細かく分解してくれるおかげで、歯を持たない作物の根も、有機物からの栄養を吸収することができるようになります。
ミミズのような小動物も、たくさんの糞尿を土に残し、土に栄養を与えていきます。ミミズが掘った穴によって土の中には空気や水がいきわたり、のびのびと作物が根を伸ばせるようになります。
そのほか、田畑に暮らすあらゆる虫も草も、多様性に満ちた生態系を築きながら、作物のまわりの環境を豊かにしていきます。
日本の多くの田畑では、作物に害を及ぼす害虫や雑草を撲滅させるために農薬や除草剤をまくことが一般的に行われています。しかし、その殺傷力は、害虫や雑草にとどまらず、田畑に暮らしているすべての生き物に影響を与えてしまうのではないでしょうか。小林農場が農薬や除草剤を使用しないのは、これらの薬物が畑の生態系を壊してしまう危険性があるからです。
現在「害虫」とされている虫も、状況が変われば、他の害虫を食べてくれる「益虫」に変わるかもしれません。その逆もあり、「益虫」が「害虫」に変わったりします。どれが「害虫」でどれが「益虫」か、その線引きははっきりとできません。
「良いもの」と「悪いもの」とに単純に分類をして、「悪いもの」を排除していき、「良いもの」だけで満たしていく。このようなやり方ではうまくいかず、さまざまな不幸を招くように思います。善悪どちらも、その環境を築いている重要な一員なのです。
害虫が畑にいたとしても、作物に際立った害を与えなければ、放っておいても問題はありません。害虫を繁殖させなければよいのであって、そのためには他にもいろんな生き物がいる多様性のある生態系を保つことが大事です。害虫を狙って農薬を散布すれば害虫を食べてくれる益虫にも被害を及ぼし、むしろ害虫を増やしてしまいかねません。
「良いもの」にも「悪いもの」にも居場所を与え、お互いのバランスをとることによってその環境を安定させてくことが大事だと思います。無農薬栽培では、そのような考え方が基盤にあるのではないのでしょうか。
虫害がひどくなりどうしても害虫を退治しなくてはいけない場合は、小林農場では、害虫を手で一匹ずつつぶします。農薬を使う栽培と比べると手間のかかるやり方に見えますが、生態系への影響を最小限に抑えながら防虫するにはもっとも効率的なやり方だと考えています。
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