辰年芒種 その一
関東地方も梅雨にはいりました。人間にはうっとうしい季節であっても、畑の作物の中には、たっぷりと雨の恵みを受けて生き生きと生育していくものもいることでしょう。
春に育てた作物の苗もだいたいは畑に定植し終え、一年間の前半戦の山場は越えました。今年の春作をじっくり振り返っても良い頃です。
三月から五月の中旬頃までは野菜の端境期(はざかいき)と呼ばれ、収穫、出荷できる野菜の種類数が極端に少なくなる時期です。
二月の厳寒期には、小松菜やかぶなどの作物を播いた畝の上にビニールを張って小型のトンネルを作りました。とても簡単な保温方法なのですが、効果は大きく、端境期でも数種類の作物の収穫を可能にしてくれます。
ただ、やはり作物には少し無理のかかる栽培方法ではあるので、良質な作物を収穫できるかどうかは未知数。また、使い終わったビニールはゴミとなります。自然環境に調和した栽培方法から、少し外れます。
私と同じように野菜セットを販売している農家の方々の中には、自然の旬に従って、端境期は野菜セットの出荷をお休みする場合が多いようです。
ただ、私は一年間を通じて種類数が豊富な野菜セットをお届けすることにこだわりたかったので、積極的にビニールを使用しました。管理に手落ちがあり、大根やかぶはうまく収穫できませんでしたが、かろうじて、端境期の出荷を乗り越えられたと思います。
今年初めて、人参の種を二月に早播きしてみました。厳寒期の中、他の作物が寒さに身を縮めている横で、人参だけは平気な顔をしていつも通りに生育していました。
そして、例年よりも一カ月早く、無事に収穫までこぎつけることができました。例年通りに三月に種まきした人参を合わせて、この春から夏にかけて、いつもの年よりも一カ月長く、人参の収穫が楽しめそうです。
人参は各家庭でよく使われる食材です。特に、地元の小学校の給食には需要が高いです。人参の早播き、早穫りの意義は小さくないと思います。
キャベツの苗を600個ほど育てて畑に3月から4月にかけて畑に定植しました。とっくに収穫時期を迎えてもよい時期なのですが、未だに1個も結球してくれません。この春はこのまま、キャベツを1個も食べられないまま終わっていくのかもしれません。今まで経験したことのない異常事態です。
キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス・・・。今春はこれらの作物の栽培は惨敗でした。まだまだ、土作りについて分らないことがたくさんあります。自分の経験や直感のみに頼る栽培方法を見直して、本を読んだり人に聞いたりしながら、自分なりの理論を確立したいと思います。
しかし、キャベツの存在を忘れさせるくらいに、今の野菜セットの内容は充実しています。これが多品目栽培の畑の強み。一つの作物がつぶれても、他の作物がその穴を埋めていき、野菜セット全体の内容は維持されていきます。
畑に植えたナスやピーマンの与えた肥料の量が少なく、うまく育ってくれるか心配です。ゴロゴロの土の中に植えた里芋がすっかり乾いてしまい生育が悪く、心配です。これからもみなさんに内容の豊富な野菜セットをお届けできるかどうか、そんな心配ばかりしています。
緑豊かなのんびりとした自然環境に身を置きながら、もっとゆったりとした気持ちでくらしていけぬものか。苦笑してしまいます。
そんな中でも作物が実を結んで収穫まで行き着いた時の、報われたような救われたような気分。この感動は、何度味わっても色あせることはありません。心配して、感動して、生きている実感をかみしめる日々です。
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