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2012年3月 6日 (火)

3月11日のあの事故はなんだったのか その3

現在の放射線の研究によると、人体が年間100mSV以上の放射線を受けると人体に障害が生じる可能性が高まることが明らかになっています。一方で、年間100mSV以下の放射線が与える人体への影響は、まだ、はっきりとはわからないようです。

基本的には放射線は人体に有害なので、なるべく浴びないほうがよいです。しかし、文明社会では、普通に暮らしていてもわずかに被ばくを受ける機会があります。もともと自然界に存在している自然放射能やレントゲンなどの医療からの被ばくはしかたがないとして、それ以外の一般人への被ばくは、「年間1mSV」以下におさえるよう、1990年に国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告、世界各国がこれにもとづき、日本でも原子力基本法でこの基準が法定化されました。

年間100mSV以下の放射線の影響についてはまだ研究段階であり、その結果がでるまで待っているわけにもいかず、議論を重ねた結果、とりあえず、100mSVの100分の1の1mSVで規制をかけたようです。「1mSV」という値は、科学的な数値よりも、国際的な取り決めという性格があるようです。今のところ、この基準で問題が生じたとの報告はないようです。

一方で、チェルノブイリ原発事故から数年たった2007年、2008年にICRPは「原発事故のような緊急時は基準を引き上げ、一般人の被ばくを年間20~100mSVまで許容し、その後は年間1~20mSVまでにおさえること」と勧告。

これは、「チェルノブイリの事故後、厳格な避難基準を住民に設けたため、避難した住民が心身にストレスを抱え、そのために住民の平均寿命が目立って下がった。」とのロシア政府からの報告を受け、原発事故後の避難基準を見直したものと思われます。ちなみに、この勧告は、日本では法律に定められていません。

このような情勢の中、2011年3月11日に福島第一原発事故が発生しました。福島県内の多くの市町村や東北・関東地方に点在するホットスポットでは法律内の年間1mSVを超える空間線量が検出され、日本政府はICRPの勧告に従い、今まで法律で定められていた「被ばく限度量1mSV以下」を20mSVまで引き上げる方針をとりました。

「人体の放射線への耐性が20倍強くなったわけでもないのに、基準値だけを1mSVから20mSVまで引き上げるのは危険だ。」という意見や、「放射線の危険を心配しすぎることにより引き起こされる健康被害を考慮して、しばらくは基準をゆるめるべきだ」という意見など、嵐のような意見のぶつかり合いがまきおこりました。そして、国も地域も共同体も、分断されていくのでした。

ちなみに国が定めた食品の暫定基準値は、年間5mSVまでに内部被ばくをおさえるように設定されているようですが、これは、年間1mSVよりも高くて、年間20mSVより低い数値です。

以上、私が講演会やインターネットや本から学んだことを書いてみました。いろんな意見が乱れ飛ぶ中、その中から情報を集め、情報の発言者の人柄をよく見ながら、自分の経験と直感を頼りに情報を選択していく。そのような状況が、この先もつづくでしょう。

東北や関東地方で暮らしている人々はみんな、この先数年間、放射能汚染のリスクとともにくらしていくことになることを知っています。政府や自治体は、住人を安心させるために安易に「安全宣言」をするのではなく、自分たちの地域にはどのような危険があり、それに対してどう対処していけばよいのか、示してほしいとおもいます。そうしてくれたほうが、安心します。

安全かどうかはっきりしていない農作物を「安全」と言い切り、それを不安視する意見を「風評」と言い切る。そのような態度では、人々の不信感を増大させるだけです。

私も「まだ栃木県産の農産物への放射能汚染の不安は完全に払拭されたわけではないけれど、良い情報も悪い情報もすべてお知らせすると約束するので、小林農場を支えてください。」と切々と多くの人々にうったえていこうと思っています。

現在、福島周辺地域に飛散されたままになっている放射性物質が本当に危険なのか、それとも、本当は危険じゃないのか。はっきし言って、よくわかりません。でも、この物質が得体の知れぬがゆえに、私たちはさんざん振り回されました。

私たちには放射性物質は手に負えないもの。それが今回の事故の結論ではないのでしょうか。

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