卯年夏至 その3
地元の学校の給食に使われる食材を出荷している生産者グループに参加させていただいてから、3か月がたちました。
学校給食の調理師の方々は、限られた時間内で大人数の園児、児童、学生の給食を作り上げることが要求されます。また、食中毒対策など、衛生管理には、特に神経を使っているようです。
学校に農作物を出荷している生産者グループの農家達は、そのような事情を考慮しながら、できるだけ学校側が受け取りやすい形で出荷できるように、気を配ります。
先日、私が学校に出荷したホウレンソウや小松菜が、葉の虫食われ穴が目立ち、根の部分の泥も落とし切れてなく、おまけに雑草も混じっていて、給食の食材として扱うのはむずかしいと、学校側からも生産者グループの他の農家の方々からも、厳しいご指摘をいただきました。
他の農家の方の出荷されている小松菜を拝見させていただきました。根はきれいに切り落とされ、ひとつひとつの株が大きく、虫食われ穴は見当たりませんでした。確かにすごく調理のしやすそうな小松菜で、それと比べると、私の小松菜を扱った調理師の方は、ずいぶん悪戦苦闘したことかと思います。
例え無農薬の安全で栄養たっぷりな野菜だからといっても、それだけで学校側が喜んで受け取ってくれるわけではありません。衛生管理の厳しい調理場では、虫や異物が野菜といっしょにはこばれてくることを、とても嫌います。
郷に入ったら、郷に従え。まずは、他の生産者の方々が出荷した作物を拝見させていただきながら、出荷の仕方を学ばせてもらおうと思います。また、何度か学校側と生産者グループの意見交換会や生産者同士の定例会があるので、欠かさずに出席していこうと思っています。
6月中旬、生産者が各学校の給食に招待されて、交流会が行われました。私も小学校の児童たちといしょに、給食をいただいてきました。
給食をいただく前の数分間、児童全員、配膳された給食を前にして、手を合わせてじっとしています。その間、児童の代表がその日の献立を読み上げ、そして、その食材を作ってくれた生産者の名前を読み上げていきます。それから、「いただきます。」
この学校では給食を食べる前に毎日当たり前に行われている習慣です。先生方も児童たちも、とても食事をとるという行為を大切にしている様子が伺えました。
「他の地域と比べて、ここの地域の学校給食の残飯は非常に少ない」と校長先生が胸を張るように、男の子も女の子も、見事な食べっぷりでした。
子供を持たない私も、学校給食へ出荷を始めたのをきっかけにして、少なからずも、子どもたちと関わる機会を得ました。
3月12日に発生した福島原発事故による放射能汚染では、食の安全が脅かされる事態となり、大人以上に放射線の影響を受けやすい子どもたちの健康に暗い影を落としています。
子どもたちは、大人が与えた給食をそのまま食べます。その食材が安全だと信じて疑うことなく。そのことを自覚し、子どもたちに与える食材は常に安全なものであるように、生産者として心していきたいと思います。
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