卯年小満 その1
読者の方より、私の農場通信はブログの文章としては長すぎるのではないかとのご指摘をいただきました。今回は細かく文章を区切ってみました。少しづつお読みください。
拝啓
季節は小満、衣替えの季節となりました。みなさん、いかがおすごしでしょうか。
新緑まぶしい5月、朝5時から夜7時まで畑仕事。無理してがんばろうと意識しなくても体が自然と動いてくれるすばらしい季節でした。6月を待たずに、関東地方は、例年よりもずっと早い梅雨入りを迎えました。
初夏や真夏に収穫時期を迎える作物の多くが、まだ寒い春先から苗作りが始められ、この五月に畑へと定植されていきます。まだ創立間もない小林農場では苗を育てる床土が用意されていなく、試しに近くの雑木林から地面に堆積している腐葉土をかき集めて運び出し、それを床土として使用してみました。その結果、苗作りは散々でした。
すぐに発想を転換するべきだったのに、なにがなんでもお金をかけて床土を購入せずに雑木林の腐葉土で床土を間に合わせようと意固地になり、確信のないままに我流の床土作りに取り組んでみましたが、作る苗作る苗、みんな不調で、何度も種を播きなおしたり、違う床土に苗を移し替えたりすることになりました。
苗作りの最後のほうは自分で床土を作るのをあきらめ、市販の床土に頼ることにしました。それらの床土で育てられた苗は、私にほとんど神経を使わせることなく勝手に生育して、あっさりと畑へと巣立っていきました。床土の質がどれだけ苗にとって大切なのか、痛感させられました。
落ち葉や鶏糞や米ぬかなどを合して温床を作り発酵させ、その発酵熱を利用して寒い時期に苗を温めてやります。そして、その温床は、そのまま一年間熟成させた後、次の年には苗を育てる床土として使用されます。この循環の美しい営みを利用した伝統的な製法により、農家は床土を自給してきました。
ものづくりには、長い間受け継がれてきた正規のやり方があります。直感や思いつきで導かれた自己流で仕事をすると、たいてい失敗します。
なんとか自分の力だけで床土の問題を切り抜けたいと思いました。しかし、作物をよく観察して作物が発する声に耳をすませること、まわりの農家の仕事もよく観察して学び吸収していくこと、農業は自分の頭の中だけでやるものではないということを、肝に命じたいと思います。